【メキシコシティIPS=ディエゴ・セバージョス】
1月1日、北米自由貿易協定(NAFTA)に従って、メイズ(トウモロコシ)、大豆、砂糖、粉ミルクなどの農産品に対する全ての輸入規制が撤廃された。1994年に発効したNAFTAは、少しずつ輸入規制を取り除いてきており、その最終段階に突入したことになる(NAFTA全体としては、来年1月の中古車貿易規制撤廃をもって全ての措置を完了する)。
農民たちの中には、NAFTAによってメキシコの農業が破壊されてしまったとの思いがある。
1月1日には、約200人のNAFTA反対派が、米国に通ずる15の国境地帯のうち1つを封鎖した。翌日には、やはり200人近くがメキシコシティの米国大使館の前で抗議デモを行った。
「食糧主権擁護・農村再活性化全国キャンペーン」のミグエル・コルンガ氏は、同キャンペーンに加わる300の農民・社会団体は、NAFTAの再交渉が行われるまで活動をやめないと語った。
しかし、フェリペ・カルデロン大統領は再交渉はしないと明言し、その代わり、海外からの商品に対する競争力強化策で乗り切るとしている。
NAFTAが発効した当時のカルロス・サリナス大統領(在1988~94)は、2008年の農業市場完全開放までには十分な準備時間があると主張していた。しかし、それは間違いであった。コルンガ氏は、「実際には、政府は小農の自己努力に頼り、あらゆる支援策の削減を行った。そのため、米国や都市への移住が増えたのだ」と話す。
経済協力開発機構(OECD)によると、メキシコ政府による農家支援は、対GDP比で1991~93年の3%から2003~05年の0.9%まで縮小しているという。
そのため、メキシコ産の農作物は国際競争力を完全に失っている。全国小農連合(CNC)によると、メキシコ産メイズの生産コストは米国産のそれに比べてなんと300倍も高く、産出量は3.5倍低い。米国の農家は平均して年間2万ドルの補助金を受け取っているが、メキシコの農家はわずか770ドルだ。
前出のコルンガ氏は、他の活動家とは違って、NAFTAのみが悪だとは考えていない。なぜなら、メキシコの農村問題はすでに1980年代に発生していたからだ。コルンガ氏は、この時期からメキシコ政府が農村に背を向け始めたと回顧する。
NAFTAによる農業市場完全開放の時代に突入したメキシコから伝える。
INPS Japan
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