SDGsGoal16(平和と公正を全ての人に)核被害者の経験を支援と環境回復の国際的取り組みの中心に据えるべきだ

核被害者の経験を支援と環境回復の国際的取り組みの中心に据えるべきだ

【国連IPS=ナウリーン・ホセイン】

核兵器の使用や核実験がもたらす人道的・環境的影響は、近年、国際的な軍縮議論においてますます重視されるようになっている。核兵器が残す負の遺産は、一世代にとどまらず、複数の世代にわたって影響を及ぼし続けることが、改めて明らかになってきたためである。

こうした認識を背景に、9月1日、国連本部で「被害者援助と環境修復(Victims Assistance and Environmental Remediation)」に関する国際会議が開催された。核兵器の使用や核実験の影響を受けた国々に焦点を当てたこの会議には、加盟国、研究者、市民社会団体に加え、その影響を直接受けた地域社会の代表者らが参加した。|英語版|

この会議は、国連総会決議第79/60号および第80/56号に基づき、2026年までに開催するよう求められていた国際会議であり、核兵器の影響を受けた地域社会の「生きた経験(lived experiences)」を共有するとともに、加盟国と国際社会が講じるべき支援策や対応について議論することを目的として開催された。

議長国を務めたのは、20世紀に核実験場となったカザフスタンとキリバスである。両国は核実験による甚大な被害を経験した国として、現在では核軍縮を強く訴える国際的なリーダーとなっている。

An International Meeting on Victim Assistance and Environmental Remediation was held at United Nations Headquarters under the co-chairmanship of Kazakhstan and Kiribati. Credit: Government of Kazakhstan.
An International Meeting on Victim Assistance and Environmental Remediation was held at United Nations Headquarters under the co-chairmanship of Kazakhstan and Kiribati. Credit: Government of Kazakhstan.

会議では、核兵器の使用と核実験がもたらした人道的・環境的影響が幅広く議論された。多くの発言者は、放射線被ばくの影響が長期にわたり続くことを指摘した。核兵器による身体的、社会的、経済的、そして心理的影響は世代を超えて受け継がれ、被災地域では深刻な健康問題が今なお日常となっている。放射線にさらされた人々は、がんや白血病などの非感染性疾患や、生涯にわたる健康障害を抱えるリスクが高い。

Izumi Nakamitsu, Under-Secretary-General and High Representative for Disarmament Affairs. Credit: Gov of Kazakhstan

国連軍縮担当上級代表(軍縮担当事務次長)の中満泉氏は次のように述べた。

「核兵器の影響は、爆発が終わった時点で終わるものではありません。広島・長崎の被爆者の苦しみや、世界各地で実施された2,000回を超える核実験が残した負の遺産が示しているように、その影響は数十年にわたり、さらには世代を超えて続いていくのです。」

中満氏はまた、環境回復や被害者支援は持続可能な仕組みとして行われるべきであり、「個別のプロジェクトや一時的な取り組み」に依存してはならないと強調した。長期にわたり知識や技術を継承できる国家・国際レベルの協力体制が不可欠であり、「地域社会は、一つの事業や資金提供期間が終われば支援も終わってしまうという不安を抱かずに済むようでなければなりません」と訴えた。

環境回復について、グアテマラ代表は、国際社会にとって「不可欠な責任」であると指摘した。核兵器の使用や核実験の影響を受けた地域では、環境への被害によって農地が利用できなくなり、水系が変化し、放射線の影響で居住できなくなった場所もある。

アルジェリア代表は、同国のサハラ砂漠に今なお残る核実験の目に見える痕跡について言及した。レガン(Reggane)やイン・エッケル(In-Ekker)周辺では核実験が行われ、その影響の一例として、山から流れ出した放射性物質を含む溶岩状の物質が冷えて固まり、現在も残されているという。

アルジェリア政府は被災地域の監視や環境影響評価を実施してきたが、こうした取り組みを一国だけで進めることはできないと強調した。

さらに代表は、核実験の影響は地域社会と無関係に生じたものではなく、実験場周辺で暮らしていた遊牧民を含む住民が移住を余儀なくされたり、その後も核実験がもたらした影響とともに暮らすことを強いられたりしてきたと指摘した。

「これらの実験場周辺の地域社会は、核実験が物理的にもたらした重い負担を背負っています。病気、耕作できない土地、そして先行きが見通せないことによる苦しみです。」

また各国には、核実験場に関する環境記録をはじめ、被害への対応に用いてきた手法について、知識や専門的知見を共有することが求められた。

Oemwa Johnston, a fourth-generation nuclear survivor from Kiribati Island. Credit: Naureen Hossain/IPS

太平洋島嶼国にとって、環境回復はとりわけ重要である。自然環境が人々の文化遺産と深く結びついているだけに、核実験の影響によってそのつながりが失われるおそれがあることは、いっそう深刻な問題となっている。

キリバス出身で4世代目の核被害者であるオエムワ・ジョンストン氏は、自らを含む若い世代が今なお核実験の影響を背負い続けている現実を語った。

「私は若い女性であり、核被害者の子孫です。私たちの世代は核兵器をつくったわけでも、過去の核実験を行ったわけでもありません。それでも、その負の遺産を受け継いでいるのです。」

会議では、核兵器の影響を受けた人々や地域社会を、軍縮をめぐる議論や支援の取り組みの中心に据えるべきだとの声が一致して上がった。被害を受けた人々の「生きた経験」を、そのニーズに応えるための政策に反映させるべきだとの訴えである。

創価学会インタナショナル(SGI)国連事務所のモハメド・アンブロジニ氏は、「被爆者や被爆地域の住民は、単なる支援の受け手や研究対象ではなく、被爆の実相を後世に伝える知識の担い手なのです。」と語った。

アンブロジニ氏は、被爆者や被爆地域の住民、そして若い世代の間で対話や世代間交流を進めることによって、被爆の実相について人々が考える場をつくることができると指摘した。また、広島・長崎の被爆者の高齢化が進む中、その証言を保存し、そこから学ぶことはますます急務になっていると警鐘を鳴らした。

Mohamed Ambrosini, Soka Gakkai International’s (SGI) UN Representative for Disarmament. Credit: Naureen Hossain/IPS

アンブロジニ氏をはじめとする市民社会の代表者らはまた、被害を受けた人々の経験を中心に据え、その尊厳を認めることが、「核の正義(nuclear justice)」と被害に対する償いへの道を開くと強調した。こうした取り組みは被害者の尊厳を尊重するとともに、意思決定の過程に被害者自身が実質的に参加できる場を確保するものでなければならないと訴えた。

会議では、各国が被害を受けた地域社会への支援に責任を負うべきだとの声も上がった。その責任は二つの形で果たされるべきだとされた。一つは、国や連邦政府による支援制度を通じた補償であり、もう一つは、核実験を行った核保有国による公式な事実認定、さらには謝罪である。

日本については、被爆者やその他の被害者は政府から援護を受けているものの、「国家補償」は行われていないとの指摘があった。被爆者は医療費助成などの支援を受けられるが、その認定基準は依然として限定的である。

日本の市民社会団体「ピースボート」のエミリー・マクグローン氏は、現行制度では外国籍の被爆者や海外在住被爆者、さらには爆心地から一定範囲外にいた被害者が支援対象から排除されていると指摘した。

マクグローン氏は次のように述べた。「被害者支援の出発点は、誰を被害者として認定するかです。日本の経験は、公的な定義が狭くても、被害者自身や地域の市民社会がより広い権利の実現を求め続けてきたことを示しています。だからこそ、市民社会と多様な被害当事者の声を、被害者支援政策の設計段階から反映させる必要があります。」

会議では、包括的核実験禁止条約(CTBT)や核兵器不拡散条約(NPT)など、核兵器の使用や核実験を制限・禁止する既存の国際的枠組みも改めて確認された。また、核兵器禁止条約(TPNW)が、被害者支援と環境回復に関する規定を第6条および第7条に盛り込んでいることも取り上げられた。

バングラデシュ代表は、TPNWについて、「核兵器の使用によってもたらされた被害への対応は、将来の核兵器使用を防止する取り組みと一体で進めなければならない。」ことを認識した条約であると指摘した。

現在、100カ国がTPNWに署名または批准している。同条約は核兵器の全面的廃絶を目指しているが、現在の核保有国は含まれていない。

The Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons, signed 20 September 2017 by 50 United Nations member states. Credit: UN Photo / Paulo Filgueiras
The Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons, signed 20 September 2017 by 50 United Nations member states. Credit: UN Photo / Paulo Filgueiras

Note: This article is brought to you by IPS Noram in collaboration with INPS Japan and Soka Gakkai International in consultative status with ECOSOC.

Toward a Nuclear Free World Banner
Toward a Nuclear Free World Banner

INPS Japan

関連記事

国連、カザフ核実験被害者の証言に注目し、「核の正義」を求める呼びかけ

|核兵器禁止条約締約国会議|核兵器の被害者めぐる関連行事が開かれる

|アルジェリア|フランスによる核実験: 植民地主義を続ける核兵器

最新情報

中央アジア地域会議(カザフスタン)

アジア太平洋女性連盟(FAWA)日本大会

2026年NPT運用検討会議第1回準備委員会 

パートナー

client-image
client-image
client-image
client-image
Toda Peace Institute
IPS Logo
The Nepali Times
London Post News
ATN

書籍紹介

client-image
client-image
seijikanojoken