ニュースオバマ大統領、日本・カザフスタンとともにCTBT発効促進へ

オバマ大統領、日本・カザフスタンとともにCTBT発効促進へ

【ベルリン/ウィーンIDN=キャサリン・バウマン】

「世界の安全保障は、米国を含めた諸国による包括的核実験禁止条約の批准と、核兵器用の核分裂性物質の生産を完全に禁止する新条約の締結を必要としている。」これは、米国のバラク・オバマ大統領が、ワシントンで開催された第4回核セキュリティーサミット開催直前の3月30日付『ワシントン・ポスト』に寄せた文章である。

オバマ大統領の呼びかけに呼応して、包括的核実験禁止条約機構CTBTO、本部ウィーン)のラッシーナ・ゼルボ事務局長は、「核実験禁止を法制化し、北朝鮮のような国による核兵器開発を阻止するためのCTBTサミットの開催が必要」とツイートした。

任期終了まであと9カ月のオバマ大統領が、いかなる場所においても核実験を禁止するCTBTの批准を明確に呼び掛けたことは、きわめて重要な意味を持つ。

President Barak Obama
President Barak Obama

条約が署名開放されてから20年、核技術を持つ特定44カ国が、CTBT発効のために条約に署名・批准しなくてはならない。このうち、中国・エジプト・インド・イラン・イスラエル・北朝鮮・パキスタン・米国の8カ国が未締約国である。インド・北朝鮮・パキスタンについては、署名すらしていない。

3月24日に開催されたウィーン軍縮不拡散センター(VCDNP)主催のパネルディスカッション「CTBT20周年:世界的な議論の再活性化」で演説したゼルボ事務局長は、44カ国の発効要件国(「附属書Ⅱ」諸国)に対して、「(CTBT)批准に向けて『何をなすべきか』明確にすべきだ。」と訴えた。このイベントは、若い外交官らに対して提供された不拡散・軍縮に関する短期集中コースに合わせて、在ウィーン国際機関日本政府代表部において開催されたものである。

「附属書Ⅱ」諸国とは、1994~96年のCTBT交渉に加わり、その当時原子炉あるいは研究炉を保有していた国々である。

ゼルボ事務局長は、若い外交官らを前に、「CTBTOは、条約を実施するための技術的なツールを提供してきました。皆さんには是非(CTBTが発効に至らない)問題の核心を指摘してほしい。」と要請するとともに、問題を克服するための新たな解決法を見出すよう訴えた。

ゼルボ事務局長はまた、「若い外交官や学生と話していると大いに勇気づけられます。なぜなら、若い人々は、(CTBT)発効に向けた私たちの取組みに新しい息吹をもたらしてくれるからです。」「若い外交官や学生は、いかに条約交渉を前進させるかについて素晴らしい考えを持っています。将来的に、今ここにいる皆さんの中からCTBTOの次のリーダーが出てきてくれればと期待しています。」と語った。

Ambassador Mitsuru Kitano/ Permanent Mission of Japan to the International Organizations in Vienna

このパネルディスカッションには、ゼルボ事務局長の他に、2015年の第9回CTBT発効促進会議(14条会議)の最終宣言の協議と調整を務めた北野充在ウィーン国際機関日本政府代表部大使と同カザフスタン政府代表部のカイラート・サリベイ大使がパネリストとして参加した。両大使は、14条会議をいかにしてCTBTへの支持強化につなげるかについて見解を披露した。

その他、メラブ・ザファリ=オディス(イスラエル政府代表部大使)、モハメド・フセイン・H・ザロウグ(スーダン政府代表部大使)、アンドリュー・ショファー(米国政府代表部臨時代理大使)、モハマド・オマリ(ヨルダン政府代表部科学参事官)、アンゲラ・ケイン(VCDNP上級研究員、CTBTO賢人グループメンバー)がパネリストとして参加し、ローラ・ロックウッドVCDNP事務局長がモデレーターをつとめた。

パネルディスカッションでは、条約発効に向けた前進を促進するために既存のハードルを乗り越える信頼醸成措置の必要性が指摘された。さらに、登壇者のうち「附属書Ⅱ」諸国のイスラエルと米国からの参加者は、なぜCTBTを未だに批准していないかについての見解を述べた。

パネルディスカッションには、ミドルベリー国際大学院モントレー校(CNS)の創設時の所長であり、同研究所の「サム・ナン、リチャード・ルーガー不拡散研究」教授でもあるウィリアム・ポッター氏も加わり、不拡散の目的を促進するために若い才能を育成する利点について、自身の信念を表明した。

ポッター氏は、「CNSとVCDNPは、不拡散・軍縮に関する『次の世代の専門家を訓練する』という使命を共有しています。」「この点において、私たちの任務と、軍縮・不拡散問題で世界中の若者を巻き込んでいくというCTBTOの取組みには密接な関係があるのです。」と語った。

ポッター氏はまた、「とりわけ若い人々と関与していくメリットは、彼らが、理想を高く持ち、エネルギーに満ち溢れ、どんなことでも可能であると信じている点です。つまりこれらは、経験豊かな外交官や政府関係者には大抵失われてしまっている特性なのです。」と語った。

CTBTOは市民社会や教育機関と協力して、明日の政策決定者に関与し情報を提供しようとしている。2016年1月、CTBTOはCTBT20周年イベントの第一弾として開催した平和と安全のための科学と外交に関するシンポジウム:CTBTの20年」において、CTBTO青年グループを立ち上げた。

CTBTOによれば、本青年グループへの参加資格は、世界の平和と安全に貢献するキャリアをめざし、CTBTとその検証体制の推進に積極的に関与しようとするすべての学生と若い卒業生に開かれているという。

The CTBTO Youth Group/ CTBTO
The CTBTO Youth Group/ CTBTO

ゼルボ事務局長はまた、3月21日に訪問したモロッコでも、政府関係者との面談に続いて「モロッコ外交研究アカデミー」において若い外交官らと面談し、CTBT発効に向けた取り組みへの支持を訴えた。

ゼルボ事務局長は、35人の若い外交官らに対して、「より安全な世界の実現を目指す動きと見合った政治プロセスを作り出す機会を求めていってください。」と強く要請するとともに、「外交に奉仕するために科学を援用するという意味において、CTBTOの活動に並び立つものはありません。」と語った。

「科学と技術の新境地を開拓することで、私は、科学者として個人的に、将来世代のために世界をより安全な場所にするCTBTO国際監視制度(IMS)の寄与を評価しています。」とゼルボ事務局長は付け加えた。

ゼルボ事務局長はまた、エジプト・イラン・イスラエルによるCTBT批准を前提として、非核実験地帯の創設を通じた対話と信頼醸成のためのあらたな道筋を中東は見つけることができるとの信念も表明した。

核実験の禁止は、諸国による核兵器開発をまずもって防ぎ、すでに核兵器を保有している国に対してはさらに強力な核兵器の開発を妨げるカギを握っている。1996年の包括的核兵器禁止条約はすべての核実験を禁止している。

CTBTO検証体制の一環として、モロッコのミデルトにはCTBTO国際監視制度の地震監視局が設置されている。国際の平和と安全への貢献に加えて、IMSの民生上、科学上の利益が世界中で実現されている。たとえば、アフリカの科学者らは、CTBTOのデータを用いて、地震や火山の害を研究し、ダイナマイトを使った違法漁業の探知すら行っている。

ゼルボ事務局長は、モロッコのナセル・ボーリタ外務・協力副大臣とも会談して、CTBTや不拡散、CTBT20周年関連イベントについて意見交換を行った。さらに、ラーセン・ドウディ高等教育・科学研究・訓練大臣や、国営科学技術研究センターのドリス・アボウタディーン所長とも会談して、協力、キャパシティビルディング、科学、教育について議論した。

IMSのデータは気候変動の分析や台風の予測能力向上のためにも使うことができる。CTBTOとモロッコの間の緊密な協力で、モロッコの科学者によるIMSデータ利用が進むように能力を構築することが可能だろう。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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