【アブダビWAM】
アラブ首長国連邦の日刊紙は、先週逝去したチェコ共和国のヴァーツラフ・ハヴェル元大統領と朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の金正日総書記を比較した興味深い考察を掲載した。
UAEの英字日刊紙「ナショナル」は、「2人とも国家を率いた指導者だったが、ステイツマン(Statesman:立派な政治家)と呼ぶにふさわしいのはその内の1人のみだった。」と報じた。
「両者とも世界が東西に分裂して対峙していた冷戦期に、(鉄のカーテン)の東側(共産圏側)で育った。また、両者とも著名で裕福な家庭の出身で、闘争に依ることなく政治権力を掌握した点や、小さな国のリーダーにも関わらず、世界的に大変な名声を得た点でも共通している。」と同紙は論説の中で述べている。
「しかしヴァーツラフ・ハヴェル氏と金正日氏の共通点は、ともに先週逝去したという点を除いては、これ以上見出すことはできない。ハヴェル元大統領は、世界から多くの名誉と賛辞を贈られながら75歳の生涯を閉じたが、69歳か70歳(この年齢すら詐称の疑いがある)で亡くなった金正日総書記に対する世界の反応は対照的なものであった。」と同紙は報じた。
金正日氏は1945年に新たに誕生した北朝鮮を治めるべくソ連のヨシフ・スターリン書記長が擁立した金日成氏の長男として生まれた。金日成氏は国民を世界から隔離し、類稀にみる個人崇拝体制を築き上げた。そして金正日氏は1994年に北朝鮮の権力を継承するにあたり、父に対する個人崇拝の成果も自らに移行させた。」と同紙は報じた。
また同紙は、金正日総書記指導下の常軌を逸した経済政策、執拗な軍事優先政策、破滅的な外交政策を、数百万人もの北朝鮮国民を飢えの淵に追いやった原因と指摘した。「夜の朝鮮半島を撮影した衛星写真には、あかたも光が豊かさを象徴しているかのように韓国領土は眩いほど明るく照らされている。一方、北朝鮮は大半が漆黒の闇の中にある。」一方同紙は、ハヴェル大統領については、数十年に亘るソ連によるチェコスロヴァキア支配に民衆が立ち上がった1968年の「プラハの春」で頭角を現した知識人・劇作家として言及し、「国民と自らの良心に耳を傾けた人物」として称賛した。
「ハヴェル氏は、時期尚早だった民主化運動がワルシャワ条約機構軍の戦車によって蹂躙された際、良心的に共産主義を拒絶するチェコ人、スロヴァキア人の心情を巧みに表現した劇作品を発表し、世界的に大きな注目を浴びた。そしてハヴェル氏が記したその民衆の意志が、ついにはソ連の支配を駆逐するに至った(ビロード革命)のである。」とナショナル紙は結論付けた。
翻訳=IPS Japan
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