【アブダビWAM】
「南スーダンでは、反政府勢力が先月中旬に北部の油田地帯ユニティ州の州都ベンティウを制圧した際、数百人を虐殺したという知らせを契機に、住民の間で大量虐殺が起こるのではないかとの恐怖心が広がっている。現地で平和維持活動(PKO)にあたっている国連南スーダン派遣団(UNMISS)など国連関係者も、南スーダンは大惨事の瀬戸際にあると警告している。今日の状況を改善するには、早急な是正措置が求められている。」とアラブ首長国連邦(UAE)の英字日刊紙が報じた。
サルバ・キール・マヤルディ大統領とエリック・マシャール前副大統領(昨年7月に解任)の政治対立に起因する両者の支持部隊による戦闘が昨年12月に発生して以来、この数か月で既に数千人が殺害され、100万人以上が家を追われたとみられている。
その後この政治対立は、大統領派のディンカ族と前副大統領派のヌエル族間の民族対立の様相を呈しており、暴力の連鎖は、産油地帯が多い北部を巻き込みながら各地に広がりをみせている。その結果、この国の経済の生命線ともいえる原油生産量は、紛争が勃発して以来、従来の約3分の1にあたる16万バレルにまで落ち込んでいる。
「調停努力もなされているが、その結果が明らかになるまでには、なお暫く時間が必要だ。現在キール大統領は、既に4か月に及ぶ内戦に終止符を打つため、暫定政府の設立も視野に入れた反政府側との和平協議を行うために、エチオピアに赴くことに同意している。」と『ガルフ・トゥディ』紙は5月3日付の論説の中で報じた。
また同紙は、ジョン・ケリー国務長官が、キール大統領が早ければ翌週にもマシャール前副大統領と面談し、今回の紛争を収拾することに期待を表明していることについても報じた。ケリー長官は、暫定政府構想の内容やキール大統領の続投の可能性について説明しなかったが、このままでは民族対立が大量殺戮へと発展しかねないと警告した。
エチオピアにおいて両派間の交渉は持たれているが、1月23日の停戦合意以来、なんら進展はなく、停戦も守られていない。
また、南北スーダン政府がいずれも領有権を主張しているアビエイ地区(現在はスーダンが実質的に支配している)に、難を逃れた南スーダンの人々が流入し続けている事態も、大きな火種となっている。ここ数日だけでも新たに3000人近くの南スーダン人がアビエイ地区に流入しており、これまでの流入人口は約6000人に膨れ上がっている。
南スーダンは数十年に亘った内戦を経て、分離独立を問う住民投票が実施された結果、2011年に国連で193番目の加盟国として独立した。南スーダンの独立に際して中心的な役割を果たした米国政府と南スーダンの近隣諸国は、最近多発してきた暴力を抑え込むため躍起となっている。
長期に亘る武力衝突、汚職の横行、政治制度構築の失敗が重なった結果、南スーダンは独立当初に国際社会から獲得した信用の多くを喪失した。「南スーダンが先に進んでいくには、国内の指導者らが個人的な権力闘争に終止符を打つとともに、国を安定軌道に進むよう舵を切るほか方法がないだろう。」と『ガルフ・トゥディ』紙は報じた。(原文へ)
翻訳=IPS Japan
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