【カラチIPS=ゾフィーン・イブラヒム】
パキスタン北西辺境州(NWFP)政府とタリバンが、2月16日、停戦協定を結び、シャリーア法(イスラム法)を実施することを決めた。しかし、これによって女性の人権が侵害されるのではないかとの懸念が出ている。停戦協定においては、タリバンがイスラム司法制度をNWFPのスワット、ディル、チトラルの各地区において実行するとされている。
タリバンがアフガニスタンを支配していた1996年から2001年にかけては、ブルカで顔を覆うか、家族の男性に付き添われない限り、女性が働きに行ったり外出したりすることは許されていなかった。
今回イスラム法施行の対象となるスワット地区などでは、すでに女性教育が禁止され、100以上の女子校が閉鎖となっていた。
また、タリバンが、タリバンに対抗した女性地方議員を射殺したり、地元の踊り子の首を切り落としたりしている。タリバン学生運動(Tehreek-e-Talibanの広報担当ムスリム・カーンは、これらの事件について「女性に模範を示す必要があった」と釈明した。
同氏は「女性はシャリーア法の適用によって利益を得ることになろう」と話す一方で、「女性はイスラムにおいて適切な場所を与えられる必要がある……女性は工場で働くことや、畑で働くことすら許されない。それは男性の仕事であり、男性がその責任から逃れることは許さない」と述べている。
タリバンによる女性の権利擁護については、疑問視する声が強い。ディル地区で女性のエンパワメントのために活動する団体「Khwendo Kor」のイブラシュ・パシャさんは、シャリーア法に定められた女性の資産への権利をイスラム法廷が本当に守るとは考えられない、と話す。
女性活動家であるフェイヤル・アリ-ガウハルさんは、シャリーア法が適用されようがされまいが、司法の利用に関して女性の意見は聞かれていない、と話す。「亡くなった夫の兄弟と結婚するという慣習を女性が拒否することができるのだろうか?」と彼女は疑問を呈する。
女性による道徳違反があったときにその女性を殺してもよいという「トル」(tor)、紛争解決のために若い女性を男性に差し出す「スワラ」(swara)といった慣習も、はたしてなくなることになるのだろうか。
パキスタンの与党「アワミ国民党」は和平協定を支持している。あとはザルダリ大統領の承認を待つばかりだが、大統領はタリバンがまず武装解除することが先だと主張している。
逆に、タリバン学生運動側は、パキスタンの治安部隊がスワット地区から撤退すること、タリバン関係者に恩赦を与えることを要求している。
タリバンによるパキスタン北西辺境州の支配と女性の人権の問題を考える。(原文へ)
翻訳/サマリ=山口響/IPS Japan浅霧勝浩
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