INPS Japan/ IPS UN Bureau Report|国連|子ども自爆兵を懸念

|国連|子ども自爆兵を懸念

【国連IPS=タリフ・ディーン】

国連はアフガニスタンやイラクで増加の一途をたどる子どもを巻き込んだ自爆攻撃について『大いなる懸念』だとしている。 

30日(水曜日)国連が発表した45ページにわたる報告書『Children and Armed Conflict(子どもと武力紛争)』には、「これは比較的最近の傾向である。国連は紛争に巻き込まれた子どもに関する極めて憂慮すべき数件の事例を記録した」としている。 

さらに、イラクのアルカイダやその民兵、アフガニスタンのタリバンを名指しした上で「国連はこのような組織と問題解決のためのいかなる取引も行うことはできない」と述べている。 

国連人権委員会特別報告者ラディカ・クマラスワミ氏はIPSとの取材に応じて「子どもを巻き込んだ自爆テロは多くの新たな問題をもたらしている」と指摘した。

 「我々はこの問題にどう対処すべきか、今現在、取り組んでいるところだ」 

 クマラスワミ氏は、次の3点について疑問を投げかけた。「第一に、(戦争捕虜に関する扱いを規定した)『ジュネーブ条約』において、自爆テロ犯は『戦闘員』と見なされるのか?自爆テロを起こす可能性のある人間を『兵士』と見なすことができるのか?あるいは、これらの自爆テロ犯を『子ども兵士』と判断していいのか?」 

「第二に、『安保理決議1612』の目的は軍司令官と行動計画を締結し、子ども兵士を解放することである。しかし、自爆テロ犯やテロを起こす可能性のある人物に関して、これをどのように進めていくべきなのか?」 

「最後に、子ども兵士を徴用している政府や他の武装組織などと同様に、自爆テロを実施する(アルカイダなどの)武装グループが、子どもの解放を巡り我々国連との話し合いに応じる可能性はかなり低いだろう。この問題は、国連と武装組織との協議によって解決できる問題なのか?また各国政府はこれを許可するだろうか?」 

「政府の許可を得ることができさえすれば、我々は話し合いができるのだ」 

しかし、アフガニスタンのカルザイ政権は現在、国連など国際組織に対してタリバンとの一切の協議を許可していない。 

先月、EUの職員(英国人)と国連職員(アイルランド人)の2名が激しい戦闘の続く南部ヘルマンド州のタリバン側との協議を行おうとしたことを理由に、アフガニスタンから退去させられた。 

(来月12日の国連安保理の議題に上る予定の)同報告書によると、現在世界の約13カ国(ブルンジ、チャド、コロンビア、コンゴ民主共和国、ビルマ、ネパール、フィリピン、ソマリア、スリランカ、スーダン、ウガンダ、アフガニスタン、中央アフリカ共和国)で政府や武装グループが子ども兵士を利用しているという。 

一方、コートジボワールでは現在子ども兵士の事例は報告されておらず、シエラレオネでも武装解除により子ども兵士が解放されたため、国連のリストにも上がっていない。 

国連は、ウガンダ、スリランカ、スーダン、ビルマで現在も子ども兵士の解放に向けた取り組みを行っているところだ。 

クマラスワミ氏は30日の記者会見で、「世界中で今もなお約25万から30万人の子供兵士がいる。そして、我々は子ども兵士を取り巻く戦闘の形態が変化してきていることを心配している」と語った。 

同報告書は、最近多くの子どもが『テロの実行犯』になっていることや、時には子どもが敵からの攻撃を防ぐための『人間の盾』にされる場合もあると伝えている。 

自爆攻撃などの激しい戦闘で子どもを徴用し、利用するケースも目立ってきている。 

アフガニスタンのホースト州で昨年2月、12歳と15歳の少年が自爆テロを行い警備員1名が死亡、市民4名が負傷した。さらに、14歳の少年が州知事を暗殺するため、自爆攻撃用ベストを着用して歩いているところを逮捕された。 

昨年5月には、自転車に乗った14歳の少年がイラクのハディーサで自爆攻撃用ベストを爆発させ、巡回中の警察官3名が死亡した。 

また、武装組織の新たな作戦として、車による自爆攻撃で子どもを囮にする事例も報告されている。 

同報告書はイラクでは戦闘により犠牲になる子どもの数は増え続けていると伝え、さらに、現在報告されている自爆攻撃の一覧表を掲載。子どもの死傷者数はほぼ毎日伝えられているとしているが、まだ今のところ信頼性のある統計値ではないとしている。 

「住宅街を狙った迫撃砲による無差別攻撃や、自爆攻撃(特に殺傷能力の高い自動車爆弾)の犠牲者には多数の子どもが含まれている」と説明している。 

クマラスワミ氏は、記者に対して「アフガニスタン、イラク、タイで増加している宗教とは無関係の『学校』をターゲットにした攻撃にも懸念している」と述べた。 

 このような学校への攻撃は『教育の推進』に反対する一部の武装組織が行っている。2006年8月から2007年7月の間に、学校を狙った攻撃は少なくとも133件あったという(死亡者10名)。 

さらに、学校の中でも女子高が特に狙われており、女子生徒や女性教員への計画的な攻撃が多発している。 

アフガニスタンでも学校機関、特に女子教育の促進を妨害するため女子高をターゲットにした(武装グループによる)攻撃が相次いでいる。 

ユニセフ(国連児童基金)はイラクでは現在子どもの就学率は30%であると予測している。 

同報告書では特に痛ましい事例として昨年起きた以下の事件を挙げている。 

昨年1月、バグダッド西部のal-Khuludの女子中等学校で迫撃砲が打ち込まれ生徒5人が死亡、21人が負傷した。 

5月と6月には、バクバで女子の学校機関を狙った3件の攻撃が発生。 

タイでは、73名の教師が死亡し、100を超える学校が焼き払われた(昨年6月だけでも11校が全焼)。このような卑劣な行為は全て『武装分子』によるものだ。(原文へ) 

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩 


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