SDGsGoal16(平和と公正を全ての人に)「力こそ正義」の新世界秩序

「力こそ正義」の新世界秩序

国連IPS=タリフ・ディーン】

提唱される「新たな世界秩序」づくりが進むなか、なお重い問いが残る。最も強大な軍事力を持つ国が、結局は世界を支配するのか、という問いである。国連は政治的に無力なままである。国連憲章は踏みにじられ、国家主権と領土保全は政治的嘲弄の対象にまで貶められている。支配しているのは「法の支配」ではなく、弱肉強食の論理である。パレスチナでも、ウクライナでも、ベネズエラでも、イランでも、その現実がむき出しになっている。

次はどこか。コロンビアか。キューバか。グリーンランドか。北朝鮮か。

現在進行中の紛争をめぐっては、戦争犯罪やジェノサイド(集団殺害)に当たるとの非難を含め、国際社会から広範な批判が上がっている。だが、そうした声の多くは聞き流されたままである。

アントニオ・グテーレス国連事務総長は安全保障理事会で、国連憲章第2条に触れ、すべての加盟国は「いかなる国の領土保全または政治的独立に対しても、武力による威嚇又は武力の行使を控えなければならない。」と訴えた。

Donald Trump, President of the United States of America, addresses the general debate of the General Assembly’s eightieth session in 2025. Credit: UN Photo/Evan Schneider.
Donald Trump, President of the United States of America, addresses the general debate of the General Assembly’s eightieth session in 2025. Credit: UN Photo/Evan Schneider.

だが、その声を本当に聞いている者はいるのか。

米シンクタンク「公共性のための研究所(Institute for Public Accuracy)」の事務局長で、市民運動団体RootsAction.orgの全国ディレクターを務めるノーマン・ソロモン氏はIPSの取材に対して、空から人を殺すことは、地上戦では得られない種類の「距離」―相手の苦痛から切り離された感覚―を長くもたらしてきたと語った。

「空からの攻撃は、犠牲者から遠く離れた場所で行われるため、現代戦の究極の形として機能してきた。圧倒的な航空戦力への依存は、米国がイスラエルと連携して進めている行動の核心にある」と同氏は指摘する。

地上部隊を投入せず、空爆によって相手を殺傷することは、自軍の死傷者をほとんど出さずに相手に甚大な被害を与える究極のやり方である。その結果、国内での政治的反発も抑えやすくなる。米国の政治とメディアの文化は、米国人の命には価値を置く一方で、「他者」の命はたやすく犠牲にしてよいものとして扱いがちだからだ、とソロモン氏は指摘した。

同氏はさらに、「米国とイスラエルが始めたこの露骨で恥知らずな侵略戦争は、紋切り型の外交的婉曲表現や慎重論で封じ込められるものではなく、まして押し戻すことなどできない。」と批判した。

ソロモン氏によれば、米国政府とイスラエル政府は、「力こそ正義」という原理にしか従わない、常軌を逸した指導者たちによって完全に動かされている。

「もし、いわゆる『国際社会』が、無謀で無法な政府の同盟に正面から対峙すべき時があるとすれば、それはまさに今である。」

そのうえで同氏は、米国の欧州同盟国に対し、曖昧で臆病な態度をやめ、米国とイスラエルによるこの侵略を止めるよう明確に求めるべきだと訴えた。さもなければ、中東という火薬庫にさらに火を注ぐことになるからだ。

さらに同氏は、ロンドン、パリ、ベルリンなどの欧州各国の指導者は、米国とイスラエルが直ちにイランへの攻撃を停止しない限り、重大な対抗措置を取ると警告すべきだと主張した。

「ワシントンに対して曖昧で逃げ腰な対応を続けることは、ロンドン、パリ、ベルリンをはじめとする欧州の指導者たちを、継続的かつ組織的な戦争犯罪の共犯者にする」とソロモン氏は語った。
同氏は『War Made Invisible: How America Hides the Human Toll of Its Military Machine(見えなくされた戦争――アメリカはいかに自国の軍事機構がもたらす人的犠牲を隠してきたか)』の著者でもある。

一方、「保護する責任(Responsibility to Protect)」の推進を掲げる国際団体グローバル・センター・フォー・ザ・レスポンシビリティ・トゥ・プロテクトは、米国とイスラエルによる対イラン攻撃は、国際法と国連憲章に違反して行われた侵略行為だと指摘した。

同団体によれば、今回の武力行使は、国連安全保障理事会の承認を得ないまま行われたうえ、国連憲章第51条が認める自衛権―すなわち、現実かつ差し迫った脅威に対する防衛措置―を発動できるだけの明確な根拠も示されていない。

さらに同団体は、「この攻撃は、米国とイランの核交渉が続いていたさなかに行われた。しかも、仲介役を務めるオマーンの外相が、交渉の進展を明らかにし、打開が近いと発表してから、わずか数時間後のことだった。」と指摘した。

また、この攻撃は、1月3日に米国がベネズエラで行った最近の違法行為―国家元首の拉致に至り、その地域と国際秩序に深刻な不確実性をもたらした一連の行動―とも軌を一にしているという。

Map of Middle East
Map of Middle East

その一方で、ジュネーブに本部を置く国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、中東における紛争激化と、それが民間人や新たな避難民の発生に与える影響に深い懸念を表明した。

UNHCRは、「影響を受ける国の多くは、すでに何百万人もの難民や国内避難民を抱えている。これ以上の暴力は、人道支援の対応能力を超え、受け入れ地域社会への負担をさらに強めるおそれがある」と警告した。

そのうえでUNHCRは、国連事務総長による緊急の呼びかけを支持し、対話と緊張緩和、人権の尊重、民間人の保護、そして国際法の完全な順守を求めた。

人道支援団体Conscience Internationalのジェームズ・ジェニングス会長はIPSの取材に対し、米国とイスラエルによる共同攻撃は、誤った判断に基づく違法なものであり、しかも虚偽に基づくものだと語った。

「今回の攻撃は、将来の核合意を前進させるどころか、その可能性を何十年も遠ざけかねない。」と同氏は述べた。

違法だという理由について同氏は、米国憲法にも、国連憲章に基づく国際法にも反しているからだと説明する。さらに「虚偽に基づく」とする理由については、核問題を監視する機関が実質的に『ここには差し迫った脅威はない』と示してきたにもかかわらず、それを無視しているからだと指摘した。

ジェニングス氏は、トランプ氏が6月の米・イスラエル共同作戦「オペレーション・ミッドナイト・ハンマー」によってイランの核能力を壊滅させたと繰り返し主張してきたことに触れつつ、今回の「オペレーション・エピック・フューリー」という戦争の正当化は、「将来いつかイランが核爆弾を持つかもしれない」という推測に依拠した脆弱な論理にすぎないと批判した。

「歴代の米政権は、外交によってそれを防ごうとしてきた。だが、トランプ氏はその合意を自ら破棄した。」と同氏は言う。さらにジェニングス氏は、トランプ氏がいかなる法律にも、憲法にも、国連憲章にも縛られないかのように振る舞っていると批判した。

最近の彼自身の言葉を借りれば、彼を導くのは自らの道徳だけだという。そのトランプ氏が、人口9200万人の国が眠りについているところへ大規模な戦争を仕掛けるにあたり、イスラエルに唯々諾々と追随した」と述べた。

しかもその間、米国の外交担当者たちは、妥協を模索しているかのように装いながら交渉を続けていた。ジェニングス氏はそれを、第二次世界大戦開戦前、日本が真珠湾攻撃に至るまでに行った外交になぞらえた。

そして同氏は、共同空爆が始まった最初の日、イランのミナジで100人以上の女子生徒が命を落としたとされることに触れ、「その親たちに聞いてみれば分かる。彼らはトランプ氏を、とても『道徳的』な人物とは見ないだろう」と語った。

ジェニングス氏はまた、ジョージ・W・ブッシュ元大統領が自らを「決断者(The Decider)」と呼び、結果として米国を、ワシントンの多くの政治家やトランプ氏自身ですら今や重大な誤りとみなす、二つの勝ち目のない戦争に導いたと指摘した。

「トランプ氏は、米国を中東の誤った戦争、いわゆる『終わりなき戦争』に巻き込まないと強く訴えて選挙戦を戦った。にもかかわらず、いまや彼はネタニヤフ氏に鼻面を引き回されている」と同氏は述べた。

さらに同氏は、戦争を始める際の古典的な原則として「変えられないものが二つある。歴史と地理である」と指摘したうえで、「米国の指導者が、そのことを理解せず、作戦の目的も、いかに終結させるのかという出口戦略も明確に示さないまま戦争に踏み切っていること自体、驚くべきことだ。」と批判した。

Collage: Thalif Deen
Collage: Thalif Deen

評論家やテレビ報道は、今回のイラン攻撃を「選択した戦争(war of choice)」と呼んでいる。だがジェニングス氏は、「その呼び方では不十分だ。」と語った。

「なぜ本当の名前で呼ばないのか。これは露骨な侵略戦争ではないか。いつ終わるのか、誰にも分からない。トランプ氏は数日で終わると主張しているが、それは残酷な冗談にすぎない。戦争は相手にも意思があるからだ。」

最後に同氏は、イランが1971年に建国2500年を祝った歴史を引き合いに出し、これほど長い歴史を持つ国の人々は、生き残る術をいくつか知っているのかもしれない。」と語った。(原文へ

INPS Japan/IPS UN Bureau Report

関連記事:

力の論理が支配する世界を拒まねばならない

モンロー・ドクトリンの復活?

第2期トランプ政権:多国間主義と国連への試練(アハメドファティATN国連特派員・編集長)

最新情報

中央アジア地域会議(カザフスタン)

アジア太平洋女性連盟(FAWA)日本大会

2026年NPT運用検討会議第1回準備委員会 

パートナー

client-image
client-image
client-image
client-image
Toda Peace Institute
IPS Logo
The Nepali Times
London Post News
ATN

書籍紹介

client-image
client-image
seijikanojoken