ニュース米国と中国はウクライナ和平のパートナーとなり得るか?

米国と中国はウクライナ和平のパートナーとなり得るか?

この記事は、戸田記念国際平和研究所が配信したもので、同研究所の許可を得て転載しています。

【Global Outlook=ジョン・マークス 

アントニー・ブリンケン国務長官は5月3日、ウクライナの平和を回復するために米国が中国と肩を並べて取り組むことに「何の問題もない」と述べ、称賛すべき一歩を踏み出した。彼は、「原則として、国家、特に中国のような大きな影響力を持った国が平和をもたらすために積極的な役割を果たすことに意欲的であるなら、それは良いことだ」と付け加えた。

国際問題に関するひときわ鋭いコメンテーターであるハーバード大学のスティーブン・ウォルト教授は、さらに踏み込んで、米国と中国が何らかの形で協力して紛争の調停に当たることがもしできれば、ウクライナに平和への道筋ができるかもしれないとForeign Policy 誌に書いた。(

米中協力は、どちらの政府にとっても遠すぎる橋のように思えるかもしれない。どちらも、それぞれの思惑でこの戦争に関与しているが、互いに相手と直接的に関与することは紛れもなく好まないだろう。しかし、両国が国家のエゴを脇に置いて、パワーポリティクスをやめるなら、何万人もの命を救い、ウクライナのさらなる破壊を防ぐために、大きな一歩をともに踏み出すことができるだろう。

米国にとっては、中国と外交レベルで協力するためにウクライナへの武器や情報の供与をやめる必要はないだろう。戦争の道と平和の道は、必ずしも相互に排他的であるとは限らない。二面政策を採用することによって、バイデン政権は、ロシアの侵攻に引き続き立ち向かうと同時に、人命を救うことも優先度の高い事項であることをはっきり示すことができる。また、ウクライナは、米国が参加するのであれば外部調停者の支援を受ける可能性が高くなることはほぼ間違いない。

米国の政策立案者の第一希望はウクライナがロシアの侵攻軍を国から駆逐することであり、それを認識しないのはナイーブというものだ。しかし、Discord漏洩事件で明らかになったように、ペンタゴンの情報分析官らはウクライナが今後1年間に優勢になる見込みはないと結論付けている。このことから、いつであれ近い将来の完全勝利はまずあり得えないという印象を受ける。したがって、米国の選択肢は、武器供給を続けて血みどろの膠着状態を長引かせるか、ウクライナが戦闘停止をもたらす妥協に合意する余地を作るかどちらかのようである。

紛れもなく、妥協をするということはウクライナ人にとって、またロシア人にとって、極めて難しいことであろう。しかし、両国が戦闘を続けて引き分けになるよりは、交渉による和解の方が望ましい結果であることはほぼ間違いない。米国政府が武器提供者と調停者という二つの役割を果たすのであれば、ウクライナは、注意深く耳を傾ける以外の選択肢はほとんどないだろう。

ウクライナ紛争に関する独自の和平計画をすでに提案している中国は3月、サウジアラビアとイランの和解を仲介し、調停者としての有用性を証明した。中国がウクライナにおいても同様の成果を達成できるのであれば、たとえ米国と手を組んだ結果であっても、調停者としての評判は決定的に高まるだろう。そして、中国が成功を収める確率は、米国と協力すればはるかに高くなると思われる。

ロシアは、主たる敵国と目する米国による和平の働きかけを受け入れる可能性はまずないだろう。だからこそ、中国の関与が非常に重要なのである。ロシアが経済面でも政治面でも中国の支援への依存を深め、ウラジーミル・プーチンと習近平が「限界のない友情」に合意したことを考えると、ロシア側は中国の働きかけを真剣に受け止める必要があるだろう。

大国が、たとえ敵国同士であっても、共通の利害があるときには平和を促進するために力を合わせて行動するという冷戦時代の前例があると、ウォルトは述べている。例えば、イスラエルと周辺国との戦争を終結させるため、かつて米国とソ連が共同で努力した例を彼は挙げる。こういった事例では、「二つの超大国の両方が戦闘の停止を望み、それぞれの従属国に圧力をかけて同意させた」と彼は書いている。

戦争が1年以上続いている今、明らかに新たなアプローチが求められている。世界は間違いなく、無駄な紛争を許すような余地も回復能力も使い果たしつつある。ウクライナに平和をもたらすこと、米国と中国にとってはそれを達成するために最善を尽くすことが、実際的にも倫理的にも必須の責務である。

ジョン・マークスは、平和構築に関する国際的NGO団体Search for Common Groundの創設者であり、長年、会長を務めた。現在は、アムステルダムに拠点を置く平和構築グループConfluence Internationalの責任者である。

INPS Japan

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