【ロンドンLondon Post=サクライン・イマーム】
現在の国際政治情勢では、右派ポピュリズムの台頭が見られ、その影響が安全保障政策にも及んでいる。国粋主義や防衛能力の強化を国家安全保障の必要性として強調するポピュリスト指導者たちが台頭する中、核不拡散条約(NPT)や核兵器禁止条約(TPNW)といった条約の重要性は一層高まっている。
ロシアの核政策の見直し
世界最大の核兵器を保有するロシアの核プログラムは、ウラジーミル・プーチン率いる右派の権威主義的リーダーシップを反映している。予防措置が軍事教義の中心となり、核軍縮の取り組みを複雑にしている。
2024年9月、プーチン大統領は高官とのテレビ会議で、ロシアに対する「大規模な空爆」に対して核兵器を使用する可能性を示唆した。その後、核保有国の支援を受けた非核保有国による攻撃を核保有国による攻撃とみなす新たなルールを提案。2024年11月、米国がウクライナによる長距離ミサイル使用禁止を解除すると、プーチン大統領は核ドクトリンの改正案に署名した。これにより、ロシアは核兵器の使用を合法的に認めることになった。
防衛情報ウェブサイト「Janes」は、2023~24年にロシアがベラルーシへの核兵器配備、新たな配備手段の公開、戦術核兵器の訓練、条約義務からの脱退を行ったと報告している。
インド太平洋研究センターのリサーチアナリスト、ムリチュンジャイ・ゴスワミ氏は、「右派政府が戦時に核兵器使用を主張する傾向が強まっている。」と指摘し、特にロシアがウクライナ戦争における戦術核使用の選択肢を模索していると述べている。
インド:隣国との核競争
3期目を務めるナレンドラ・モディ首相は、インドの核能力を誇示している。2024年の選挙では、与党インド人民党(BJP)が小型モジュール型原子炉の開発や原子力発電への投資拡大を掲げた。モディ首相は、野党が核兵器を廃止すると批判し、隣国が核兵器を保有している中でインドを「無力化」する計画だと述べている。
さらにモディ氏は、中国の軍事・核能力の強化を警戒しており、特に中国が米国との戦略的均衡を目指していることを指摘した。一方、ポーランドやドイツの右派勢力は、ウクライナ侵攻を受けて独自の核抑止力を求める声を強めている。
イラン対イスラエル:核緊張の高まり
核兵器を保有していないイランは、西側諸国やイスラエルから核兵器開発の疑いをかけられている。2024年12月、国際原子力機関(IAEA)のラファエル・グロッシ事務局長は、イランがウラン濃縮を最大60%に加速していると発表した。イランは核兵器を目指していないと主張しているが、国際社会の懸念は依然として高いままである。
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、2024年11月にイランの核研究施設を攻撃し、これに対してイランは報復を誓った。この行動は核軍縮の取り組みに大きな打撃を与えた。
核軍縮を取り巻く議論は、米国とロシアの関与の欠如、中国の非協力的態度により危機的状況にある。ゴスワミ氏は、「主要核保有国間の戦略的コミュニケーションチャネルの再構築が必要だが、近い将来に進展が見られる可能性は低い。」と指摘している。(原文へ)
This article is produced to you by London Post, in collaboration with INPS Japan and Soka Gakkai International, in consultative status with UN ECOSOC.
INPS Japan
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