【ニューヨークINPS Japan/ATN=アハメド・ファティ】
ドナルド・トランプ米大統領が今週予定している北京訪問は、貿易、関税、そして何らかの経済的成果をめぐるものとして語られている。だが、それはこの訪問を最も分かりやすく説明した場合にすぎない。より複雑で本質的なのは、世界の2大国が、公然たる対立に陥ることなく競争を管理し続けられるのかを試されている局面で、トランプ氏が中国を訪れるという点である。|ENGLISH|
トランプ氏は5月14日から15日にかけて、北京で習近平国家主席と会談する見通しである。専門家らは今回の会談について、世界で最も重要な2国間関係を安定させるための、限定的ながらも意味のある試みとみている。戦略国際問題研究所(CSIS)によると、米国は経済とイラン問題に焦点を当てる一方、中国は米中関係の安定と台湾問題での進展を求める構えだ。

この違いは重要である。2017年のトランプ氏の初訪中は、儀礼や称賛、個人的な相性を強調する言葉に彩られていた。だが今回、北京で行われる2度目のトランプ・習会談を取り巻く環境は、はるかに厳しい。貿易摩擦、台湾をめぐる不安、技術規制、レアアースをめぐる中国の交渉力、イラン戦争、世界のエネルギー市場への圧力、そしてワシントンと北京の間で深まる不信が重くのしかかっている。
この首脳会談で問われているのは、トランプ氏がより有利な取引をまとめられるかどうかだけではない。得るもの以上の譲歩を迫られる事態を避けられるかどうかである。
ワシントン側の当面の狙いは明確だ。トランプ氏は目に見える成果を求めている。経済面での譲歩、中国による米国産品の購入拡大、フェンタニル問題での進展、重要鉱物へのアクセス、そして場合によってはイランをめぐる協力である。ホワイトハウスは今回の訪問を、トランプ氏の個人外交が中国政府を交渉のテーブルに引き戻した証しとして打ち出すだろう。
しかし、習政権も手ぶらで臨むわけではない。中国は、重要鉱物の供給網に対する支配、イランとの経済関係、そして台湾周辺の緊張を沈静化させることも高めることもできる能力を含め、独自の交渉力を持って首脳会談に臨む。米外交問題評議会(CFR)は、中国が会談を前に優位に立っている可能性があると指摘する。その一因は、イラン戦争が世界の不安定化を招く一方で、中国が重要鉱物とエネルギー外交を通じて交渉力を保っていることにある。
習氏の目的はトランプ氏とは異なる。劇的な発表は必要としていない。習氏が必要としているのは、中国が封じ込めるべき問題ではなく、対等な大国として扱われなければならないという認識である。北京はワシントンとの安定を望んでいるが、それは中国が「核心的利益」と呼ぶものを守る条件の下での安定である。

その核心的利益の中心にあるのが台湾である。
中国当局者は首脳会談を前に、この点を繰り返し強調してきた。北京は、米国は自らの約束を守り、台湾問題を慎重に扱うべきだと述べている。中国国営メディアもまた、台湾が米中関係の中核に位置し続けていると強調している。
この点に、今回の会談で最も危うい外交上の駆け引きが潜んでいる。懸念されるのは、トランプ氏が台湾を正式に見捨てることではない。むしろ問題は、同氏の取引重視の姿勢が、米国の台湾関連の表現を弱めることや、台湾への武器売却を遅らせること、あるいは他分野での協力と引き換えに対中圧力を下げる暗黙の了解を中国に求めさせる可能性がある点である。
購入合意や関税の一時停止、あるいはイランに関する声明は、ワシントンでは勝利と受け止められるかもしれない。だが、その代償がアジアにおける抑止力の低下や同盟国の信頼低下、台湾問題をめぐる曖昧さであるなら、戦略的損失は経済的利益を上回りかねない。
アジアにおいて、言葉は単なる飾りではない。一つの表現が同盟国を安心させ、市場を動揺させ、あるいは軍事的な試みを誘発することがある。
イランは、さらに別の層を加える。戦争はトランプ氏の立場を複雑にしている。中国はテヘランと重要な関係を維持する一方で、湾岸地域のエネルギー供給の安定にも依存しているからである。北京には紛争の拡大を防ぐ利益がある。しかし、ワシントンの下請けのように振る舞う理由はない。
中国は、ホルムズ海峡の安定を回復する取り決めにトランプ氏が至るよう促す可能性が高い。しかし、米国のためにイランへ圧力をかけているように見えることは避けるだろう。そこに習氏の交渉余地が生まれる。米国がイランの抑制、石油輸送の維持、あるいは外交経路の再開に向けて中国の協力を望むなら、北京は見返りを求めることになる。

その答えは、関税、制裁、技術規制、あるいは台湾に関する表現に及ぶ可能性がある。
だからこそ、今回の訪問は2国間関係を超えるリスクを伴う。日本、韓国、台湾、欧州、中東諸国はいずれも、トランプ氏と習氏が大国間の秘密取引を作り出していないかを注視するだろう。小国や中堅国が恐れるのは、ワシントンと北京の対立だけではない。自分たちの知らないところで取り決めがなされることも恐れている。

技術もまた戦場である。半導体、人工知能、輸出規制、レアアースをめぐる争いは、もはや国家安全保障と切り離せない。記者会見では関税が前面に出るかもしれない。しかし、半導体と鉱物こそが将来の権力の構造を形づくる。技術競争の方向性が明確にならないまま貿易休戦が成立しても、市場を一時的に落ち着かせるだけで、対立の核心は手つかずのまま残る。
ブルッキングス研究所は、この首脳会談で注視すべき論点として、会談が緊張緩和につながるのか、どのような実務レベルの協議枠組みが立ち上がるのか、そして双方が台湾、貿易、レアアース、世界的危機管理といったより深い問題にどう向き合うのかを挙げている。
それこそが、最も現実的な成功の尺度である。この首脳会談が米中競争を解決することはない。決めるのは、その競争がより予測可能なものになるかどうかにすぎないかもしれない。
中国にとって、予測可能性は有用である。それは北京に、経済を強化し、世界各地の連携を深め、外交的影響力を拡大し続ける時間を与える。トランプ氏にとって、予測可能性が政治的に有用となるのは、それが目に見える成果を伴う場合に限られる。この不一致は重要である。習氏は雰囲気だけで首脳会談を終えることができる。トランプ氏には成果物が必要である。
危険なのは、その成果物そのものが罠となることである。
購入合意、一時的な関税停止、あるいはイランに関する声明は、ワシントンでは勝利に見えるかもしれない。しかし、その代償がアジアにおける抑止力の低下、同盟国の信頼の弱体化、台湾をめぐる曖昧さであるなら、戦略的な損失は経済的利益を上回りかねない。
北京訪問の核心的な問いはここにある。トランプ氏は対立を安定させようとしているのか。それとも、それを取引材料として換金しようとしているのか。
両者は異なる。
対立を安定させるには、規律、明確なレッドライン、同盟国への安心供与、そして危機管理と核心的な安全保障上の約束を切り離す意思が必要である。対立を換金するとは、あらゆる問題を一つの取引に混ぜ込むことを意味する。台湾と貿易、イランとレアアース、関税と沈黙、安定と服従である。
習氏は、トランプ氏が北京に何を持ち込んだのかを試すだろう。
首脳会談は、丁寧な言葉、限定的な合意、そして世界で最も重要な2国間関係を掌握していると主張する2人の強力な指導者の映像を生み出すかもしれない。しかし、本当の結果は細則の中に、あるいは語られずに残されたことの中にあるのかもしれない。
台湾が曖昧に扱われれば、同盟国はそれに気づくだろう。イランが交渉に組み込まれれば、湾岸諸国はそれに気づくだろう。技術規制が緩めば、市場と安全保障機関はそれに気づくだろう。声明が難題を完全に避けるなら、その沈黙にも意味が宿る。
本稿は、トランプ氏の中国訪問が持つ世界的な意味を検証するATNの連載第1回である。次回以降の記事では、日本と韓国が台湾、北朝鮮、同盟の信頼性という観点からこの首脳会談をどう読んでいるのか、中東・北アフリカがイラン、石油、海洋安全保障、戦略的ヘッジの限界を通じて何を見ているのか、そして欧州がウクライナ、貿易、NATO、中国との不安定な関係におけるリスクをどう評価しているのかを取り上げる。
トランプ氏は取引を求めて北京に到着するかもしれない。習氏が求めるのは、より大きなものである。米国の圧力政策には限界があるという証明である。
そしてその駆け引きにおいて、写真撮影の機会は最も重要でない部分かもしれない。
アハメド・ファティは、国際的に配信されるジャーナリストであり、国連担当記者、国際情勢アナリスト、人権問題のコメンテーターである。外交、多国間主義、権力、公共の自由、そして世界の未来を形づくる政治について執筆している。INPS Japanは提携メディアとしてATN記事の一部を日本語に翻訳して配信している。
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