SDGsGoal7(エネルギーを皆にそしてクリーンに)再生可能エネルギーは「新興アジア諸国」で成長を持続させる

再生可能エネルギーは「新興アジア諸国」で成長を持続させる

【クアラルンプールIDN=クリシャン・ダット】

アジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議(11月18日~19日)で21加盟国の首脳らがマニラ宣言の中で強調していた点―複数の経済的・環境的優先事項を組み合わせた持続可能な開発の必要性―が、新たに発表された報告書においても繰り返し指摘されている。同報告書は、2015年および今後の5年間で「新興アジア諸国」経済の力強い成長を予想している。

経済協力開発機構(加盟34か国)の開発センター(本部:パリ)が、国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)、アジア開発銀行研究所と共同で作成した報告書『東南アジア、中国、インドの経済概況』は、「新興アジア諸国」と命名された東南アジア諸国、中国、インドの将来の発展にとって再生可能エネルギーが「大きな役割を果たしそうだ」としている。

報告書によると、新興アジア諸国の実質成長率は、2015年に6.5%、2016~20年の平均で6.2%になると予想されている。世界経済の平均成長率は、2016年に3.3%、2017年に3.6%と予想されている。

OECD Development Center

報告書は、中国では経済成長の鈍化が続くが、インドではこの地域で最も高いレベルとなる高い成長率を維持するものと予想している。東南アジア諸国連合(ASEAN)の成長率は、2015年に4.6%、2016年から20年の平均年率は5.2%になると見られている。ASEAN5カ国の中ではフィリピンとベトナム及びCLM諸国(カンボジア、ラオス、ミャンマー)が、ASEAN地域の成長を牽引すると予想している。概して個人消費が成長全体への最大の寄与要因になると報告書は見ている。

この力強い勢いを維持するために、アジア地域は中国の鈍化する成長の問題に対処する必要がある。報告書は、「中国の状況が、地域全体の成長の見通しや、米国の金融政策正常化の影響、新興アジア諸国の生産性の伸びの鈍化といった課題に影響を与え続けるであろう。」と警告している。

報告書はまた、特別テーマとして、地域統合の強化が、堅調な成長を維持するうえでいかに重要であるかについて、取り上げている。

Rintaro Tamaki Deputy Secretary-General of OECD

11月20日にマレーシアで開催された「ASEANビジネス・投資サミット」でこの報告書を発表した経済協力開発機構(OECD)の玉木林太郎事務次長は、「この地域は、依然として国内および国外のリスクに晒されています。成長を堅調に維持するには、地域統合を強化することが不可欠です。また、地域統合に関するより適切な指標の改善とピア・ラーニング・政策対話を強化することによって、地域の課題により効果的に取組むことが可能になり、ASEAN統合の流れを加速していくことが可能となるでしょう。」と語った。

報告書は、2016年から20年の課題における重要な政策領域として、「グリーン成長」と「持続可能なエネルギー」、「民間部門の成長」を指摘している。

OECD開発センターのマリオ・ペッジーニ所長は、「地域統合においてグリーン成長および民間企業の成長といった点は重要で、地域統合の深化により大きな便宜が得られる領域である。」と指摘した。

報告書は、「新興アジア諸国はこの数十年で顕著な経済成長を達成したが、一方で深刻な環境問題も伴っていた。また、地域統合のさまざまな側面の中で、市場の統合の問題が他の問題を犠牲にする形であまりに大きな注目を集めてきた。」と指摘したうえで、「生態系の限界を上回ることなく、共通のよりよい生活とさらなる平等を達成すべく、現在の開発パターンの方向を変えるには、持続可能性目標のバランスをシフトすることが必要だ。」と述べている。また、「発電分野における地域協力の強化を通じたものなど、再生可能エネルギー源の利用を増やすことが、複数の経済的・環境的優先事項を統合したグリーン成長戦略の中核的な要素にならなければならない。」と指摘している。

報告書は、拡大する需要を満たすために、再生可能エネルギーが有する高いポテンシャルを利用するようアジア諸国に促している。そしてそれは、「関税や非経済障壁が統合を鈍化させ、効率性向上の機会を阻害することを考慮に入れなくてはならない。」と述べている。

"Beijing smog comparison August 2005" by Bobak - Own work. Licensed under CC BY-SA 2.5 via Wikimedia Commons
“Beijing smog comparison August 2005” by Bobak – Own work. Licensed under CC BY-SA 2.5 via Wikimedia Commons

報告書は、「メコン川における水力発電は進展しており、地域全体に対して輸出できる発電能力を備えた将来性のある電源である。」としている。しかし、「環境問題に対処する必要があり、国境を越えた懸念に対応するために共同の解決策を見出す必要がある。」と指摘している。

報告書の著者らは、膨大な再生可能エネルギー源を、責任をもって利用することにより、アジアは経済成長の加速を経験することが可能だと述べている。

同時に報告書は、カンボジアやラオス、ミャンマー、インドネシア、フィリピンのような一部のASEAN諸国では、電力供給の少なさが発展上の大きな壁になっているという事実を強調している。アジア地域のほとんどの国において、電気を利用できる人口の間ですら、単位人口当たりの消費はOECD加盟国の平均を大きく下回っている。

報告書は、ASEAN全体で、2009年から30年の間に電力需要は毎時2300テラワット増加すると予測している。毎時1テラワットは、年間を通じて約114メガワットを持続的に供給することに相当する。環境への破壊的な影響を引きおこさずにこうした巨大な電力需要を満たすには、発電のための再生可能エネルギーの大規模な利用が必要になるだろうと報告書は論じている。

ASEAN5カ国にシンガポールを加えた諸国の再生可能エネルギーの発電能力のポテンシャルは、2009年当時のASEAN地域の全電力需要を1.8倍上回ると推定されていると報告書は続ける。この膨大な再生可能エネルギーのポテンシャルは未開発のままである。

水力と地熱は比較的よく開発されているが、風力や太陽光、バイオマスなどその他のエネルギー源はほぼ手つかずのままだと報告書は述べている。

地域の障壁が、再生可能エネルギー源の開発を進める上で重要な阻害要因になっている。再生可能技術の取引における自由化や、イノベーション・技術移転の地域協力など、地域の経済統合を進めることが解決策となる。これらは、アジア地域で再生可能エネルギーを促進するうえで重要な役割を果たすことができる、と報告書は述べている。(原文へ

翻訳=INPS Japan

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