【ナイロビIDN=ジャスタス・ワンザラ】
東アフリカ地域では、高まるエネルギー需要、政策の変化、実行可能な起業家精神に溢れた革新の登場を背景に、持続可能なエネルギーへの移行が進んでいる。
このことは、ケニアのストラスモア大学エネルギー研究センター(SERC)が「アフリカのための再生可能エネルギー解決策」(RES4Africa)と共催した2日間の会議で発表された見解である。RES4Africaは、アフリカのサブサハラ諸国で大規模かつ分散的な再生可能エネルギーの発展促進をめざす組織である。
アフリカ・EUエネルギーパートナーシップ(AEEP)の後援を得てナイロビで1月23・24両日に開かれた会議は、この地域における再生可能エネルギーの効果的な展開に向けた実践例を議論するものであり、関係者らがこの部門が直面している諸問題と可能な解決策について話し合った。
再生可能エネルギーを推進する機運は、エネルギー部門開発における連携を強化するいくつかの地域機関によって、活気づいている。例えば、エネルギー資源の最適な開発と電力への容易なアクセスの促進を任務とした東部アフリカ電力プール(EAPP)や、政策の調和と意識喚起をめざす東部アフリカ再生可能エネルギー・省エネセンター(EACREEE)などである。
ケニアのエネルギー・石油省再生可能エネルギー局のイサーク・キヴァ局長は、「政府は再生可能エネルギーの開発を支援している。」と指摘したうえで、「需要に見合う電力網を整備することが重要で、ケニアに再生可能エネルギー基本計画があるのはそのためです。」と語った。
しかし、再生可能エネルギーを普及させていく前途には、様々な課題がある。ケニアの民間部門による全国組織である「ケニア民間部門同盟」(KEPSA)エネルギー部門会議のバーナード・オサワ議長は、「ケニアには独立した電力事業者が必要ですが、大規模な再生可能エネルギーの発電に必要な能力と資金が不足しています。」と語った。
ケニアでは官民パートナーシップ(PPP)が強化され、エネルギー部門への投資において独立の電力事業者が政府とパートナーを組むことが推奨されている、と彼はみている。
無視してはならないのは、諸国がさまざまな形の再生可能エネルギーで成長を遂げているにも関わらず、この地域(=東アフリカ)全体の莫大な再生可能エネルギーの可能性は十分に追求されていないという事実だ。このことは、「21世紀に向けた再生可能エネルギー政策ネットワーク」(REN21)が2016年に発表した『東部アフリカ共同体(EAC)再生可能エネルギー・省エネ現状報告』に示されている。
この報告書によれば、東アフリカ地域は、ピコソーラーシステム(小規模で、移動可能な太陽光システム)の販売先としてアフリカ大陸全体の約半分を占めており、とりわけケニアとタンザニアはアフリカの中でも太陽光製品の売り上げがトップクラスであるという。
さらに、国連工業開発機関(UNIDO)からの支援によってまとめられたこの報告書によると、ケニア、ウガンダ、タンザニア、ルワンダ、ブルンジにおいて、再生可能エネルギーが全エネルギー利用の64%を占めている、という。
エネルギーミックスに関して、『東部アフリカ共同体(EAC)再生可能エネルギー・省エネ現状報告』は、2015年時点で東部アフリカ共同体における電力網に接続された再生可能エネルギーの発電能力は約3ギガワットにのぼると記している。これは主に、地熱・風力・太陽光・水力からのものだ。
SERC-RES4Africa会議の参加者らの意見と同じく、上記の報告書は、同地域の再生可能エネルギーのポテンシャルを最大限に活用する要素の一環として、各国における特定の再生可能エネルギー政策や制度を挙げた。すでに、ケニア、ルワンダ、タンザニア、ウガンダでは、固定価格買取制度(FIT)を導入し、太陽光関係製品に関して付加価値税・関税を免除する革新的な政策を採択しているという。
ケニア、ウガンダ、タンザニア、ルワンダ、ブルンジ、コンゴ民主共和国、ジブチ、スーダン、リビアに広がる東部アフリカ電力プール(EAPP)のレビ・チャングラー事務局長は、「これまでに各国毎だった電力網の相互接続を完成したところです。当電力プールではまた、例えば、ケニアとウガンダを、ウガンダとルワンダを接続するといった、地域プロジェクトも実施しています。」と語った。
チャングラー事務局長は、同電力プールとして、電力取引のためのプログラムを拡大していると指摘したうえで、「現在、電力取引のための規制枠組みを策定しているほか、相互接続がもたらす影響を分析する調査を実施する予定です。」と語った。
同時にチャングラー事務局長は、電力事業者に対して、環境にやさしい再生可能エネルギープロジェクトへの投資のピッチを上げるよう求めた。こうした背景の下、東部アフリカ電力プール(EAPP)はドナーを含めた利害関係者との協議を進めており、ドナーの信託基金が世界銀行の下で設立されつつあると語った。
チャングラー事務局長はまた、この地域において異なった形態の再生可能エネルギーが生産可能な場所を特定することをめざした調査を世界銀行から委託されている、と明らかにした。一方、生産される電力の市場の問題に関しては慎重な姿勢を示し、「東アフリカ地域全体の電力需要を査定する必要があります。というのも、余剰の電力を市場が吸収する必要があるからです。」と述べ、現在の需要が年間2000メガワットだが、9000メガワット分のプロジェクトが計画されているエチオピアの例を挙げた。
エネルギーに関する調査研究や訓練を行う非営利組織である「エネル財団」のカルロ・パパ代表は、要員の訓練に関する能力構築の必要性を指摘した。「再生可能エネルギーの拡大は、持続可能な開発のあらゆる側面と同じように、スキルを持った人的資源なしには実現できません。」とパパ代表は語った。
ストラスモア大学などと協力する「アフリカのための再生可能エネルギー解決策」(RES4Africa)は既に、アフリカ東部出身の300人の学生を訓練する地域プロジェクトである「マイクログリッド・アカデミー」(MGA)を立ち上げている。
人的資源を利用可能にする取り組みが進められる一方で、コロンビア大学ナイロビグローバルセンターのムルンギ・ヌディラング・センター長は、再生可能エネルギー部門に女性の専門家がほとんどいない点を指摘して、「社会文化的な障壁や労働市場の期待が、再生可能エネルギーの仕事における若い女性たちの存在を抑制している」と語った。
EACREEEの能力開発・研究・開発専門家であり、マケレレ大学准教授であるマッケイ・オクレ氏は、「マイクログリッド・アカデミー」は規模の経済を創出しつつあり、地域における規模の経済と再生可能エネルギー市場に貢献している、と語った。
カイロとアジスアベバに拠点を持ち、再生可能エネルギーに焦点を当ててアフリカ東部で海外からの投資を促している大手の国際法律事務所「ボネリ・エレーデ・カイロ」の地元パートナーであるリカルド・ビッキアート氏は、「東アフリカ地域で再生可能エネルギーを成長させるうえでの主要な障壁は資金調達の問題です。」と語った。他方で、「資金調達は、金融面の健全な脱リスク戦略と、慎重なバンカビリティ(=銀行融資が可能な状態)分析と緩和を通じて、確保することが可能です。」と語った。
ビッキアート氏は、ボネリ・エレーデ法律事務所は、各国で法的問題に関する訓練を提供しており、政策責任者に対して、民間部門における投資機会を刺激するために同部門の見方を教えている、と語った。
しかし、資金調達面での制約に対する解決策として官民パートナーシップの加速を多くの参加者が主張する一方で、ビッキアート氏は別の見方を取っていた。ビッキアート氏は、アフリカ東部における再生可能エネルギーへの投資に伴う金融面のリスクに関して、再生可能エネルギープロジェクトへの資金調達の理想的なオプションはプロジェクト・ファイナンシングであると語った。このモデルは、プロジェクトのスポンサーにほとんど頼ることなく、プロジェクトのキャッシュ・フローによって債務を返済していくものだ。
ビッキアート氏は、アフリカは機会を与えてくれる土地であり、再生可能エネルギー事業を通じて経済を発展させようという意思に満ちている、と語った。
ビッキアート氏によると、再生可能エネルギーの投資は、短期・長期の目標を設定したうえで、熟慮の上成されねばならないという。「各国にはそれぞれの独自性とリスクがあります。プロジェクトのスポンサーが、プロジェクトに伴うリスクに部分的に対処するのではなく、実行する前にリスクを特定し緩和していくことが重要です。」と語った。(原文へ)
翻訳=INPS Japan
関連記事: