核兵器禁止(核禁)条約が発効します!これはまさに、核兵器の終わりの始まりを刻むものです!この条約の批准国が50カ国目に達したという知らせを受けたとき、立ち上がることができず、両手に顔を埋めて嬉し泣きしました。私は核兵器の廃絶に生涯を捧げてきました。条約発効のために尽力してこられた全ての人々への感謝の気持ちでいっぱいです。世界中の数万の人々が一緒になってここまできました。強い連帯感を覚えています。
核禁条約が発効するという知らせを受けて、私の心の中に生きている、広島と長崎で命を失った多くの魂に思いを馳せました。愛する姉や当時4歳の甥の英治や家族、同級生、そして原爆で亡くなった全ての子供たちの無垢な魂に「やっとここまでこぎ着けましたよ」と語りかけました。かけがえのない命で究極の犠牲を払わされた彼らに、最初にこの素晴らしいニュースを報告しました。
私は、他の被爆者の方々と同じように、亡くなった人たちのことをむだにせず、同じような苦しみを味わう人が二度と出ないようにするという誓いを立て、世界に対して核兵器の危険性を長年訴えてきました。
私はこの命があるかぎり、核廃絶に向かって邁進するという誓いを立てました。そして今、数十年に亘る運動を経て、核兵器を禁止する条約が近く国際法となるという画期的な節目を迎えるとこまでこぎつけました!
私はこのことに達成感と満足感、そして感謝の思いでいっぱいです。この気持ちは、広島・長崎で原爆を生き延びた人々や南太平洋の島々やカザフスタン、オーストラリア、アルジェリアで行われた核実験で被爆した人々、さらにカナダ、米国、コンゴのウラン鉱山で被爆した人々も共有していることでしょう。今も、世界では9カ国が、私の故郷広島を完全に破壊した原爆よりも遥かに壊滅的な被害をもたらす恐ろしい兵器を開発し続けており、多くの人々がこの野蛮な行動の犠牲になっています。あらゆる被爆者にとって、核禁条約が近く発効するという事実は大変大きな励みとなります。私は、核の犠牲になりながらも声を上げ続け今も存命の世界中の兄弟姉妹たちとこの瞬間を祝っています。
私たちはまた、核兵器が、放射能汚染であらゆる生命を奪う暴力装置であり75年もの長きにわたって全世界を人質にしてきた究極の悪であると認識している人々とともにこの瞬間を祝っています。また、この条約発効に向けて団結し、ともに尽力してきた世界各地の反核活動家の人々とともにこの瞬間を祝っています。私は、特に核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)の仲間たちに感謝しています。ICANは外交や運動上の見解の相違を乗り越えて各国を協力へと導き、未来永劫に続く極めて重要なことを成し遂げました。
核禁条約の前文には被爆者の文字が刻まれていることに大きな感銘を受けました。国際法が被爆者のことを、こうした形で明記するのは初めてのことです。私たちは、こうして認知されたことを、核実験やウラン採掘、秘密実験による放射線被害に苦しんできた世界中の被爆者と共有します。さらにこの条約は、核兵器に関わる活動で先住民に対する不釣り合いに大きな影響がもたらされたことを認識しています。被爆者と先住民コミュニティーは、戦時の核使用のみならず、核実験や核兵器の生産活動によっても目に見えない放射線汚染を通して死と言語に絶する苦しみがもたらされることを独自に理解しています。さらにこの条約には、放射線の有害性が男性よりも女性や女児に顕著に現れるというジェンダーの視座が明記されています。
私は、核禁条約に被害者に対する援助や環境の回復といったポジティブな義務が明記されていることに感銘を受けています。それはこの条約が、放射能が世代を超えてもたらす悪影響に締約国が責任を負うという保証を明記したものだからです。私たちは、核時代は核兵器が存在した時代を超えて長く続いていくと理解することが極めて重要です。私たちは今後も末永く、放射性物質を封じ込め管理していかなければなりません。
しかし今は、(廃絶に向けた)第一歩を踏み出せたことを喜びたい。この圧倒的な感謝の気持ちは言葉ではうまく表現できません。私たちが無関心と無知に直面しながらも、いかに苦労を積み重ねてきたか!核兵器国や核兵器依存国から嘲笑されながらもいかに闘ってきたか!こうした様々な逆境にも関わらず、私たちはやっとここまでたどり着きました。ついに核兵器は、国際法のもとで非合法となったのです!
条約の発効により、世界中の核兵器廃絶論者は、大いに勇気づけられ活気づくでしょう。これから、私たちは活動に一層取り組んでいきます。今は祝うべきときですが、安心していい訳ではありません。世界は今までになく危険になっています。たしかに私たちはここまで到達しましたが、完全な核廃絶という目標に達するには、まだまだ長い道のりがあるのです。
核兵器の廃絶が完了する時には、私や原爆の記憶を持つ被爆者たちはこの世にいないでしょう。しかし核禁条約が発効するお陰で、その日は必ず訪れると確信できます。そしてその日が訪れたとき、私たち被爆者や核実験の被害者、世代を超えて放射線の毒に苦しんできた犠牲者らが記憶され、生き延びた人が核兵器の廃絶を報告してくれるでしょう。私たちはこの地球を愛しこの活動に連帯感を持っているので、あらゆる人々のための平和、正義、平等、思いやりを網羅する素晴らしい運動の一部として核廃絶が達成されたとき、私たちは魂になってより一層盛大な祝いに加わります。
核禁条約は新たな扉を大きく開くものです。これをくぐり抜ければ、闘いの新たな一章が始まります。それはこれまでに亡くなった仲間達の意思を背負いながら、将来世代からの心からの歓迎を受けつつ前進していくものとなるでしょう。核兵器の終わりの始まりが到来しました!ともに、扉をくぐり抜けようではありませんか。(原文へ)
INPS Japan
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