ニュース2012年国連中東会議に向けた準備会合がアンマンで開催

2012年国連中東会議に向けた準備会合がアンマンで開催

【エルサレムIPS=ジリアン・ケストラーダムール】

国連が目標としている中東非大量破壊兵器地帯の創設に向けた基礎固めを行うため、65の国や機関の代表が、ヨルダンの首都アンマンに集まった。

「(アンマン)会議では、11の専門分科会において協議が進められました。中でも特に重要なのが、『中東非大量破壊兵器地帯の設置における国連機関の役割』、『(同地帯設置に伴う)安全保障上の意味合い』、『核燃料サイクル構築の見通し』、『中東における核セキュリティー』です。」と主催団体の一つArab Institute for Security Studies (ACSIS:本部アンマン)のアイマン・カリル所長は語った。

 この会議は、オランダ政府とノルウェー政府が後援し、ACSISとパートナーシップ・フォー・グローバルセキュリティー(本部:ワシントンDC)が共催して開催された。

「2012年に向けて基礎を固める:核不拡散、核セキュリティーを推進する機会」と題した3日間の会議(11月29日~12月1日)では、2012年に開催が予定されている「中東非大量破壊兵器地帯創設に関する国連会議(=中東会議)」を実現するためにクリアすべき諸問題について協議が行われた。

この国連主催の中東会議は、2010年5月に開催された核不拡散条約(NPT)運用検討会議(5年毎に開催)が、2012年の開催を呼びかけたものである。今年10月、フィンランド政府がこの会議をホストし、同国のヤッコ・ラーヤバ外務事務次官がファシリテータを務めることが発表された。

「アンマン会議は、国、地域組織、及び国際機関の代表者が、意見交換し調整する場を提供するとともに、2012年プロセス(中東会議の実現に向けた)に、中東域内の全ての国々が積極的に参加、関与するためにクリアすべき課題や条件を浮き彫りにしました。」とカリル氏はIPSの取材に対して語った。

NPTの無条件、無期限延長が決定された1995年のNPT再検討延長会議は、最終文書の中で、中東の全ての国に対して、中東非大量破壊兵器(核兵器、生物・化学兵器)地帯を設立するよう呼びかけるとともに、その他の国々に対して核不拡散を推進するよう強く訴えた。

その最終文書には、「(NPTの普遍的加盟を早期に実現する重要性を強調し)、未だそれを行っていないすべての中東諸国に対し、例外なく、可能な限り早期にNPTに加盟し、自国の核施設を包括的なIAEA保障措置の下に置くよう求める。」と記されている。

1970年に発効したNPTは、核兵器及び核兵器技術の拡散を防止し、世界における核軍縮を前進させることを目的としている。現在、核兵器保有5大国である中国、ロシア、英国、フランス、米国を含む190カ国が条約に加盟している。

一方NPTに未加盟のイスラエルは、核兵器を保有していると広く考えられている。カリル氏は、「域内の全ての国々が、中東非大量破壊兵器地帯の創設を望んでいるにも関わらず、この構想は未だに実現できないままでいます。もちろん、これを妨げている最大の要因は、NPTへの加盟を頑なに拒否している国があるからです。」と語り、NPT加盟を渋るイスラエルの態度こそが、中東非大量破壊兵器地帯の創設にとって最大の障害になっていると指摘した。

「中東には、例えばアラブ-イスラエル紛争や核兵器保有・核開発計画疑惑など、依然として(中東非大量破壊兵器地帯という)目標実現を困難にしている難題が数多くあります。」とカリル氏は語った。

ここ数カ月の間に、イランは疑惑を一貫して否定しているものの、同国が核兵器開発とその技術取得を進めているとする報告書が発表され、多くの国々が、イランに対する制裁を課した。

こうした事態から、中東全体を紛争に巻き込みかねないイスラエルとイランの衝突を懸念する声が浮上している。先月、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、国際社会に対して「手遅れになる前に、核武装を目論むイランの動きを止めなければならない。」と強く訴えた。

しかしカリル氏は、イランはNPT加盟国で、これまでIAEA査察を受け入れているのに対して、イスラエルはNPT未加盟国というだけでなく、核保有について曖昧政策をとってきた点を指摘し、「イランとイスラエルを同じカテゴリーに入れて考えるのは、問題点を複雑にしかねません。」と語った。

「アンマン会議では、イスラエルの核防衛能力についても議論されました。(中東で)NPT未加盟の唯一の国でありながら、大規模とは言えない周辺諸国の通常兵力に対して、核兵器を取得して抑止力を図るというイスラエルの姿は、例えるならば、『躾の出来ていない子ども』とでも言わざるを得ません。」

「もし2012年の中東会議開催に向けたプロセスを成功させることができるとすれば、イランとイスラエル双方が積極的に会議に参加することが大前提となるでしょう。」とカリル氏は語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩

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