ニュース超富裕層に課税せよ──私たちには変革すべき世界がある

超富裕層に課税せよ──私たちには変革すべき世界がある

【ナイロビ/バンコクIPS=アティヤ・ワリス、ベン・フィリップス】

なぜ、すべての子どもたちに教育を受けさせることができないのか?
なぜ、必要とするすべての人に医療を提供できないのか?
なぜ、誰もが飢餓や貧困から解放されることができないのか?

これらは本来、すべての人に「権利」として約束されているはずなのに、私たちは何度も「お金がない」と言われる。

しかし、ここで朗報だ。お金は存在する。お金がどこに行ってしまっているのかも、どうやってそれを取り戻すかも、私たちは知っている。そして今年は、進展のための重要な新たな機会が訪れている。

世界中で毎年4,920億ドルが、富裕層や権力者による税逃れによって失われている。
このうち3分の2、すなわち3,476億ドルは、多国籍企業が利益をオフショアに移して課税を逃れていることによるもの。残りの3分の1、1,448億ドルは、富裕個人が資産を隠して課税を回避していることが原因だ。

これは、「世界税正義レポート」の最新報告によって明らかにされた衝撃的かつ憤りを感じる事実である。しかし、同時に希望の兆しでもある──私たちは、変えられる世界を持っているのだ。

税制は技術的で複雑であるため、その複雑さを利用して「富裕層から税を取る政策は機能しない」とする主張がなされがちである。

しかし、G20の委託した専門的な経済分析は、富裕税が貧困解消や持続可能な開発目標(SDGs)の達成に必要な資金を引き出す有効な手段であることを示している。

実際、すでにこのような取り組みを始めている国もある。スペインは、最富裕層0.5%に対する富裕税を導入することに成功した。Tax Justice Networkの試算によれば、スペインの制度を他国も導入すれば、2.1兆ドルの税収を得ることが可能である。

また、多国籍企業による利益移転を防ぐための政策的枠組みも既に明らかになっている。

  • 誰が企業を所有しているかの登録義務
  • 各国での納税状況の国別報告
  • 利益を上げた国で課税するルール

技術的な課題よりも、むしろ最大の課題は「政治的」なものだ。しかし、ここにも希望がある。

今年、ついに国連国際税協力枠組条約の交渉が始まり、「多国籍企業の公正な課税」や「高額所得者による脱税・租税回避への対処」、「実効的な課税の実現」などが盛り込まれる予定でだ。

さらに、6月30日~7月3日にスペインで開催される開発資金国際会議では、次のような内容が盛り込まれた成果文書案が議論される:

  • 多国籍企業が「価値が創出され、経済活動が行われた国で課税される」ための仕組み
  • 高額所得者への課税強化」へのコミットメント

富裕層への課税は、多くの国々で非常に高い支持を得ている。そして、市民社会によるキャンペーンも加速中だ。現在、世界各地の40以上の団体が「超富裕層に課税せよ」という共通のキャンペーンで連帯している。

この連帯のもと、彼らは次のような共通プラットフォームを掲げている。

「人権は憲法や国際法によって約束されているのに、それを実現するための財源が否定され続けている。これはもう『普通のこと』であってはならない。」

例えば、子どもが「教育を受ける権利」を約束されたとしても、

  • 近くに学校がなかったり、
  • 学費が高くて通えなかったり、
  • 教師が足りなかったり、
  • 学習環境が劣悪だったりするなら、

それは「名ばかりの権利」でしかない。

健康の権利も同様だ。
十分な医療スタッフも薬もない医療センターで、誰が本当のケアを受けられるでだろうか?

だからこそ、財政政策(課税と歳出)こそが、人権の約束を現実のものとする手段なのだ。

どれだけの資源が使えるのか、それをどう確保するのか──それは技術の問題ではなく、政治的な選択なのだ。

もちろん、リソースを確保するのは簡単ではない。富の集中は、同時に権力の集中をも意味するからだ。しかし、それでも「超富裕層への課税」が重要なのは、単に必要な公共サービスの資金を集め、最も脆弱な人々を救うためだけではない。

それは、民主主義を取り戻すことでもあるのだ。原文へ

INPS Japan/ IPS UN Bureau

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