ニューストラコーマの撲滅、南アジアでの成功を受けて実現が視野に

トラコーマの撲滅、南アジアでの成功を受けて実現が視野に

【ニューデリーSciDev.Net=ランジット・デブラジ】

2024年10月、世界はトラコーマ撲滅に一歩近づいた。世界保健機関(WHO)がインドとパキスタンをトラコーマのない国として認定したためだ。この病気は失明の主な原因の一つとなっている。

トラコーマは、清潔な水や衛生環境が不足している貧困地域で発生する細菌感染症で、治療しないと耐え難い痛みを引き起こし、最終的には視力を失うことになる。インドは14億5千万人が暮らす世界で最も人口の多い国であり、パキスタンは約2億5千万人の人口を抱える世界で5番目に人口の多い国である。この2か国はそれぞれ、トラコーマのない国として認定された19番目と20番目の国となった。

英国に本拠を置き、予防可能な失明の治療と予防に取り組む慈善団体サイツセイバーズのパキスタンおよび中東ディレクターであるマナッザ・ギラニ氏は、パキスタンの成果について「この戦いにおいて団結してきた無数の個人と組織の忍耐と献身のおかげ。」と述べている。しかし、彼女は次のように警告する。

「私たちは決して油断してはなりません。トラコーマは、地域社会や医療スタッフの間で病気への意識を維持する努力を続けなければ、再発する可能性があります。」

WHOの2021-30年の被忽視熱帯病(NTDs)ロードマップでは、トラコーマを公衆衛生上の問題として撲滅する目標年を2030年と設定している。このロードマップでは、疾病特有の戦略ではなく、ユニバーサルヘルスカバレッジ(UHC)に基づく包括的なアプローチが求められている。

WHOによると、トラコーマによって推定190万人が部分的または完全に視力を失っている。この病気は、細菌クラミジア・トラコマティス が原因で、目や鼻、喉の分泌物との接触を介して広がる。特に水や衛生施設が限られた地域で発生しやすく、動物の糞や人間の排泄物、食品くずに集まるハエも感染を広げる要因となる。

SAFE戦略

WHOのトラコーマ撲滅戦略「SAFE」は、手術(Surgery)、抗生物質(Antibiotics)、顔の清潔(Facial cleanliness)、環境改善(Environmental change)の頭文字を取ったもので、安全な廃棄物処理や清潔な水へのアクセス改善、基本的な衛生設備の提供、感染治療のための抗生物質の使用を含んでいる。

WHOインド代表のロデリコ・H・オフリン氏は、インドの成功はこの戦略の実施に加え、保健家族福祉省による手術や薬剤投与、政府の集中的な水と衛生プログラムによるものだと述べている。

「インドの成功は、トラコーマの撲滅と公衆衛生の改善に取り組む他国へのインスピレーションとなります。」とオフリン氏は語った。

トラコーマ撲滅の広がり

中国、ネパール、イラク、イランな200か国が、この古代からの災厄を撲滅した。この病気は、まつげが内側に向かって目をこすり、激しい痛みを引き起こす。子ども時代に繰り返し感染すると、治療しない場合、視覚障害や不可逆的な失明に至る可能性がある。

1950代に欧州や北米では衛生状態の改善によりトラコーマが撲滅されましたが、過密状態が一般的で、清潔な水や衛生設備へのアクセスが不足している貧困国の地域では、いまだにこの病気が蔓延している。

21世紀の公衆衛生の成功物語

しかし、トラコーマの発生率の劇的な減少は、21世紀における公衆衛生の成功物語とみなされている。複数の機関が協力して、感染リスクがある人々の数を2002年の15億人から2024年には1億300万人にまで減少させることに成功した。

集団投薬の実施

2023年、WHOによると、13,746人が進行したトラコーマ(トラコーマ性睫毛内反、Trachomatous Trichiasis)の手術治療を受け、32.9万人が抗生物質で治療を受けた。トラコーマの拡散を抑えるため、抗生物質アジスロマイシンの地域全体への配布は、SAFE戦略の重要な要素となっている。アジスロマイシンは、感染者および非感染者を問わず、トラコーマが流行している国々に無償で提供され、国際トラコーマイニシアチブを通じて集団投薬が実施されている。

インドの監視計画と成功要因

インドでは、トラコーマの永続的な撲滅を目指し、睫毛内反を矯正するための手術提供を含む監視計画が策定されている。この計画には、地域社会の意識向上や水、衛生、衛生環境の促進も含まれている。

ギラニ氏によれば、インドの成功は、政府や サイツセイバーズ、フレッド・ホロウズ財団、クリスチャン・ブラインド・ミッションといった組織の協力に加え、医療従事者、地域住民、ボランティア、寄付者、製薬業界の努力によるものだとされている。

39か国

しかし、トラコーマは依然として世界で最も感染性の高い失明の原因であり、現在も39か国で人々に影響を及ぼしている。サイツセイバーズのトラコーマ専門家で技術顧問を務めるケイレブ・ムピエット氏は、病気の撲滅には国際協力が必要だと述べている。「感染症は国境を越えて広がります」と彼は語った。

SDGs Goal No. 3
SDGs Goal No. 3

ムピエット氏は、ケニア、ウガンダ、タンザニアがトラコーマ対策を同期化した事例を挙げている。「新たな協調的で国際的な戦略は、これらの国々におけるトラコーマの持続可能な撲滅への道を開きます。」と、彼はイギリス医療ジャーナル(BMJ)のブログで述べた。

トラコーマは、アフリカ、中南米、アジア、オーストラリア、中東の多くの貧しい農村地域で非常に一般的である。WHOによると、アフリカは依然として最も影響を受けている大陸であり、最も集中的な対策が行われている。

トラコーマを撲滅した他の国々には、ベナン、カンボジア、ガンビア、ラオス、ガーナ、マラウイ、マリ、メキシコ、モロッコ、ミャンマー、オマーン、サウジアラビア、トーゴ、バヌアツが含まれる。(原文へ)

この記事は SciDev.Net のアジア・太平洋デスクによって作成された。

関連記事:

|ケニア|農村地域の牧畜民を蝕むトラコーマ

なぜアイ・ケアが重要なのか―バングラデシュなど多くの国々のために

アルビニズムの人たちに対する恐ろしい攻撃が報じられる

最新情報

中央アジア地域会議(カザフスタン)

アジア太平洋女性連盟(FAWA)日本大会

2026年NPT運用検討会議第1回準備委員会 

パートナー

client-image
client-image
client-image
client-image
Toda Peace Institute
IPS Logo
The Nepali Times
London Post News
ATN

書籍紹介

client-image
client-image
seijikanojoken