INPS Japan/ IPS UN Bureau Report批判にさらされる国連のポスト2015年開発アジェンダ

批判にさらされる国連のポスト2015年開発アジェンダ

【国連IPS=タリフ・ディーン】

まもなく国連で採択される予定の、野心的な「ポスト2015年開発アジェンダ」が、まだ始動する前から厳しい批判にさらされている。

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国連メジャーグループ」(UNMG)という名の下に集った市民団体のグローバルなネットワークが、17の「持続可能な開発目標」(SDGs)を含む開発アジェンダは「緊迫性や明確な実行戦略、説明責任に欠いている」と警告している。

UNMGの構成団体であるアムネスティ・インターナショナルのサビオ・ガルバルホ氏は、IPSの取材に対して「ポスト2015年開発アジェンダは、履行とフォローアップに関して政府に責任を取らせる明白に独立したメカニズムに欠いたままの、単なる希望的な文章になってしまっています。」と語った。

「(このままでは)国家の所有、現実、能力といった名目の下に、各加盟国は全く何もせずに済ませることが可能です。(SDGsが期限を迎える)2030年になっても現状が変わらないということがないように、各国政府に対して、人権の原則と基準に従って国の優先順位を決めるよう求めていきたいと。」とガルバルホ氏は付け加えた。

9月の国連サミットで150以上の政治指導者によって承認される予定の17の開発目標からなるSDGsは、貧困、飢餓、ジェンダー平等、持続可能な開発、完全雇用、質の高い教育、グローバル・ガバナンス、人権、気候変動、すべての人々にとっての持続可能なエネルギーといった、経済社会面での課題を幅広く網羅している。

17の開発目標のすべて、とりわけ極度の貧困と飢餓の根絶という目標は、2030年までに達成することが期待されている。

現在提示されている案では、「国家主権や各国の状況、優先事項といった、SDGsを実行するという普遍的な誓約を蔑ろにする恐れがある内容に言及されており」、強力な説明責任のメカニズムを欠いている。」とUNMGは主張している。

「とりわけ、各々の国において社会の主流から取り残された立場にいる人々の生活に影響を及ぼすような決定に関して、各加盟国が民衆の参加をどれだけ真剣に実現しようとしているのか、私たちは疑問を持っています。」

「約束をする前にそれを破るな」と題された声明では、開発アジェンダの実際の履行における資金調達(予算配分)に関連した問題でも同じようなことが言える、としている。

「各国政府がこうした誓約を遵守するよう民衆がしっかりと監視して、目標が達成され、全ての人々にとって機能するものになるようにしなければならない。」とUNMGはいう。UNMGは、ポスト2015年プロセスを監視する多くの連合・ネットワーク団体(例えば、女性や子ども及び青年、人権、労働者及び労働組合、地方自治体、ボランティア、障害者等からなる市民団体)から成り立っている。

「障害を持つ人々の会」事務局のジェイミー・グラント氏は、UNMGの構成について、「UNMGは持続可能な開発の問題に関して民衆が国連とかかわる公的なチャンネルです。」と指摘したうえで、「これら全てのグループや利害関係者、ネットワークを横断して、私たちは非常に広い意味での立場を共有してはいますが、様々な能力を持ち、様々な立場や優先順位をもつ数多くの組織が、その立場の形成に関与しています。」と語った。

100か国以上、600以上の団体を代表する「女性メジャーグループ」は、反対派からの様々な声にさらに力を与える形で、現在の開発アジェンダを非難し、その欠陥を批判している。

国際女性保健連合」の政策提言担当であるシャノン・コワルスキー氏はIPSの取材に対して、「SDGsは女性や女児に対して重要な画期になるかもしれません。」と語った。

「経済機会の増加、セクシュアル/リプロダクティブ・ヘルスケア、リプロダクティブ・ライツの保護、教育への機会、暴力なき生など、女性たちがSDGsによって得るものは少なくありません。」「しかし、このビジョンを現実のものにするには、ジェンダー平等がこの取り組みの中心に据えられ、それが持続可能な開発の前提条件になることを認識しなくてはなりません。」とコワルスキー氏は指摘した。

「女性メジャーグループ」には、「共通の未来を求める欧州女性の会」「子どもの公正を求める会」(メキシコ)「グローバル森林連合」「女性環境計画」「女性・法・開発に関するアジア太平洋フォーラム」「女性の環境と開発」(WEDO)「女性NGOフォーラム」(キルギスタン)などが参加している。

コワルスキー氏は、最近アジスアベバで開催された「第3回開発資金国際会議」(7月13日~16日)の成果に対して失望を表明した。

「私たちはグローバル経済の不平等の根本原因と、女性・女児の生に対する影響の問題に取り組むような進歩的で公正な最終合意を望んでいました。しかし、そのような成果は得られませんでした。」と、コワルスキー氏は語った。

「私たちは、ジェンダー平等のための資金調達や、女性が無給で担っているケアや家事労働の価値に対する認識という点で、各国の間で強力な誓約がなされること期待していました。また、国家間及び各国内の制度的な不平等の原因に対処し、公正な租税対策を打ち立て、違法な資金の流れを断ち切り、最貧国に不利な国際貿易構造の不公正を正すことを各国政府に期待していました。」

「SDGsを達成するために公共の資金を増やすための新たな誓約が何らなされなかったことは残念です。」とコワルスキー氏は語った。

アムネスティ・インターナショナルのカルバルホ氏は、「開発アジェンダの進捗状況を全てのレベルで、一般民衆の参加と透明性を確保した環境で、定期的かつ全体的に見直すことなしに、誰も置き去りにすることなく真に変革的な持続可能な開発を達成することなど不可能でしょう。」と語った。

「この開発アジェンダは、国内政策を尊重する国際金融機関の必要性を認識しているが、これらの活動が人権侵害につながらないようにするところまではいっていない。」

「全ての国が誓約と義務を果たすようにするには、開発アジェンダを普遍的なものにするような方向で議論を強化しなくてはなりません。」

「これらの問題には、政府開発援助(ODA)や租税の正義の問題も含まれます。」とカルバルホ氏は語った。

他方、ミレニアム開発目標(MDGs)の後継となる強力な目標を推進する世界的な市民社会キャンペーンである「2015年を超えて」は、IPSに対して出した声明の中で、「SDGsがあらゆる場所の民衆の人生に真の影響をもつには、民衆自身が目標の実行と進展状況の再検討に参加し、自分たちに関係ある意思決定に参加する能動的な主体にならなくてはならない」と語った。

「2015年を超えて」キャンペーンは、国連で現在協議されている草案で「包摂」と「参加」に焦点があてられていることを歓迎し、「各国政府に対して、SDGsが採択されしだい速やかに、約束を実行に移すよう期待する。」と述べている。

SDGsの実行にあたっては、「誰も置き去りにしない」という誓約を各国が尊重することが重要だ。

「このことはすなわち、さまざまな情報源からのデータや、民衆自身の関与を通じた定期的な査定を基礎として、全ての社会的・経済的集団、とりわけ、最も脆弱で最も周縁化された人々にとっての進展状況を追跡することを意味する。」と声明文は述べている。

さらに、実行段階が始まれば、全てのレベルにおいて、さらに高いレベルの参加と包摂が必要とされる。

「民衆がこの新しい開発アジェンダを意識し、真に持続可能な変化が起きるようにこの目標を自らのものにしなければならない。」

「2015年を超えて」キャンペーンはまた、複数のレベルにおける民衆の参加を基礎とした、オープンで透明性のあるフォローアップの枠組みに対するコミットメントを歓迎した。

「特定の時限を設定した誓約を含め、誓約事項の再検討のためにデータを生成するうえでの市民社会の役割を是認することによって、現在の草案がさらに改善されるものと信じている。」と声明文は述べている。

「私たちは、各国政府がSDGsを国を挙げて取り組む政策に変換していく必要性を強く訴えています。それはそうすることが、諸政府が、あらゆる場所の民衆に対して真の意味で責任を負うようになるための重要なステップとなるからです。」(原文へ

翻訳=IPS Japan

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