【ベルリン/ジュネーブIDN=ラメシュ・ジャウラ】
最近発表された研究調査によると、国際社会が緊急の行動を採らない限り、既に世界で最も不利な状況に置かれている47カ国が、「2030アジェンダ」において国連が設定した持続可能な開発目標(SDGs)を達成しえないと警告している。
国連用語で後発開発途上国(LDCs)と呼ばれるこの47カ国は、国際社会からの特別な配慮が必要とされる国々として知られている。そのほとんどがアフリカのサハラ砂漠以南に位置する国々であり、内40カ国は、アフリカ、カリブ、太平洋(ACP)諸国(79カ国で構成)にも属している。
国連貿易開発機構(UNCTAD、本部ジュネーブ)によるこの研究調査は、後発開発途上国の2017年の成長率が5%で、2018年には5.4%に達するだろうと予測している。これは、持続可能な開発第8目標「すべての人のための持続的、包摂的かつ持続可能な経済成長の推進」の第1ターゲットで掲げられた7%の成長率を下回っている。
2017年に7%以上の成長を達成した後発開発途上国はわずか5カ国であった。ACP諸国のエチオピア(8.5%)、ジブチ(7%)、ネパール(7.5%)、ミャンマー(7.2%)、バングラデシュ(7.1%)である。
こうした現状を踏まえて、UNCTADアフリカ・後発開発途上国・特別事業局のポール・アキウミ局長は、「誰一人取り残さないという(SDGsの)公約に従って後発開発途上国への支援を強化する」よう国際社会に呼びかけている。
「グローバル経済の復調が緩やかなペースにとどまっている中、開発パートナーは後発開発途上国への支援を拡大して持続可能な開発目標を達成させるにあたって様々な制約に直面しています。こうしたなか、後発開発途上国と他の開発途上国との間の格差が拡大する恐れがあります。」とアキウミ局長は語った。
UNCTADの分析は、あまりに多くの後発開発途上国が一次産品の輸出に依存しすぎていると指摘している。
「ほとんどの一次産品の国際価格は2016年末以降上昇しているものの、このゆっくりとした回復は、2011年以来の大幅な国際価格の下落を埋め合わせるものとはなっていない。とりわけ、重油や鉱物、鉱石、金属といった産品にこの傾向が顕著である。」とUNCTADの研究調査は指摘している。
2017年、後発開発途上国はグループ全体として、500億ドルの経常赤字を記録した。これは名目値で、史上2番目に大きな赤字幅である。それとは対照的に、同年の後発開発途上国でない途上国、途上国全体、さらに先進国グループのいずれも、黒字を記録していた。
2018年には後発開発途上国の経常赤字がさらに拡大し、国際収支の脆弱さがさらに悪化するものと予測されている。
国際通貨基金の推定によると、2017年、ごく一部の後発開発途上国のみが黒字を記録している。比較的大きな額の援助を得たアフガニスタン、南スーダン両国と、エリトリア、ギニアビサウのACP加盟2カ国だけである。
その他すべての後発開発途上国が、額の違いはあれ経常赤字を記録した。その内訳は、GDPの1%に満たないバングラデシュやネパールから、25%を超えたブータンやACP加盟国のギニア、リベリア、モザンビークまで、さまざまである。
後発開発途上国への特別海外援助の約束額は総計432億ドルであるが、これは途上国全体への援助額の推計値のわずか27%でしかない。年単位の実額で言うと、0.5%増えたにすぎない。
こうした傾向は、世界的景気後退にあたって後発開発途上国への援助が底を打つのではないかとの懸念を裏打ちするものだ。2016年に持続可能な開発第17目標の第2ターゲット(先進国は、開発途上国に対するODAをGNI比0.7%に、後発開発途上国に対するODAをGNI比0.15~0.20%にするという目標を達成するとの多くの国によるコミットメントを含むODAに係るコミットメントを完全に実施する。ODA供与国が、少なくともGNI比0.20%のODAを後発開発途上国に供与するという目標の設定を検討することを奨励する。)を達成したのはごく一部のドナー国だけであったと、UNCTADの研究調査は分析している。
デンマーク・ルクセンブルク・ノルウェー・スウェーデン・英国は国民総収入の0.2%以上を後発開発途上国に提供し、オランダは0.15%の基準に到達している。
「この分析は、行動を強く求める呼びかけになっています。」「国際社会は後発開発途上国に対する公約にもっと目を向けるべきです。」とアキウミ局長は語った。
この研究調査結果は2月5日、スイスのジュネーブで開催されたUNCTADの会合で加盟国に提示された。
この研究調査で指摘されたその他の要点は以下のとおり。
・後発開発途上国は、経済の全般的な再構築を進めないかぎり、持続可能な開発目標を達成しえない。
・後発開発途上国の構造改革のペースは緩慢であり、持続可能な開発第9目標ターゲット2(強靭なインフラを整備し、包摂的で持続可能な産業化を推進するとともに、技術革新の拡大を図る)で示された包括的で持続可能な工業化の目標に到底達していない。
・2006~16年の間に、ほぼすべての後発開発途上国において製造業部門の付加価値は増加しているが、同時にこれには、全付加価値における製造業の割合の低下が伴っている。つまり、後発開発途上国の間では未成熟段階の脱工業化の懸念があるということだ。
・2016年に後発開発途上国が世界の輸出に占める割合はわずか0.92%だった。これは2007年とほぼ同レベルである。
・後発開発途上国全体での貿易赤字は、2009年の450億ドルから2016年の980億ドルへと、金融危機後に相当拡大している。つまり、国内生産能力の脆弱さと、貿易収支の構造的赤字が結びついていることが示されている。
・後発開発途上国への援助額は、1981年に合意された、ドナー国の国民総収入の0.15~0.2%という目標にはるかに及んでいない。
・援助は後発開発途上国の一部の国々に集中する傾向がある。人道的危機や紛争の影響をしばしば受けているトップ10カ国がそうである。後発開発途上国全体への援助のおよそ半分がこれらの国に向けられている。
・最近のデータによれば、(国民総収入に対する)資産の面でも、元利金返済の面でも対外負債のレベルが後発開発途上国において急上昇してきている。
・後発開発途上国全体に対する個人送金は2017年には369億ドルだったが、ピーク時(2016年)の379億ドルよりも2.6%減少している。
・絶対額で言えば、後発開発途上国の中で送金受け取り額が大きいのは、バングラデシュ(136億ドル、2016年)、ネパール(66億ドル)、イエメン(34億ドル)、ハイチ(24億ドル)、セネガル(20億ドル)、ウガンダ(10億ドル)である。
・2016年、送金はネパールのGDPの31%を占めていた。ハイチでは29%、リベリアでは26%、ガンビアでは22%、コモロ諸島では21%、レソトでは15%であり、セネガル・イエメン・ツバルでは10%を超えていた。(原文へ)PDF
翻訳=INPS Japan
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