【ニューヨークIDN=リサ・ヴィヴェス】
国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、1994年のルワンダ大虐殺(ジェノサイド)を考える記念日(4月7日)に寄せたメッセージの中で、当時恐ろしい結末を招いた過激派集団や憎悪を掻き立てる言説が再び台頭している現状に警鐘を鳴らした。
グテーレス事務総長は、「私たちは、今日の世界を厳しく見つめ直し、27年前の教訓を確実に心に留めなければなりません。過激派が利用するテクノロジーや手法は進化する一方ですが、卑劣なメッセージやレトリックに変わりはありません。」と語った。
犠牲者はツチが圧倒的に多かったものの、ジェノサイドに反対したフツやその他の人々も含めて100万人以上の人々が3カ月足らずの間に組織的に殺害された。今年の「ルワンダ大虐殺を考える記念日」は、フランスの関与を検証した歴史家らによる委員会が、当時の大虐殺について、影響力を失うことを恐れてルワンダの政権側を無条件に支持し続けたフランスに「国家として責任がある」という衝撃的な報告書を公表したなかで迎えた。
2019年にエマニュエル・マクロン大統領が委託したこの報告書は、フランス政府が親交を深めていたジュベナール・ハビャリマナ大統領が準備していた虐殺を阻止するために十分な対策をとらなかったのではないかという嫌疑に応えることを目的としたものであった。
フランス政府公文書への前例のないアクセスを認められた55人の歴史家らは、992頁からなる報告書を作成した。ツチの虐殺についてフランスは共犯ではないと結論付けたものの、当時のフランスワ・ミッテラン社会党政権(81~95年)が大虐殺の首謀者らをフランス軍が設置した安全地帯に保護し、逮捕を拒否したことについては「責任がある」と断じた。
ミッテラン大統領や側近らは、ウガンダやポール・カガメ氏率いるルワンダ愛国戦線の活動により(ルワンダなど)アフリカのフランス語圏に英語勢力が浸透してくる事態を恐れていた。
一方、グテーレス事務総長は、とりわけ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)により社会や文化の分断が深まっている事態に対処することの緊急性を強調している。グローバルな健康危機は、あらゆる地域の人権全般に深刻な影響を与え、差別や社会の両極化、不平等を一層深刻化させており、これらはいずれも暴力や紛争につながりかねない。
グテーレス事務総長は、「私たちは1994年にルワンダで起きた出来事を目の当たりにし、憎悪の蔓延が許された時の恐ろしい結末を知っています。」と指摘したうえで、人権を擁護し、社会のすべての人々を十分に尊重する政策を推進し続けていかなければならないと訴えた。そして、「この厳粛な日に、すべての人々の人権と尊厳の精神によって導かれる世界の構築を、私たち皆で誓おうではありませんか。」と語った。(原文へ)
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