SDGsGoal17(パートナーシップで目標を達成しよう)国連事務総長が描く、創設75周年に向けた青写真

国連事務総長が描く、創設75周年に向けた青写真

【ニューヨークIDN=J・ナストラニス】

国連の機能を脅かす財政難によって複雑化する様々な危機が進行する中で、国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、国連の死活的な重要性を強調する計画を発表した。「2020年は、国連創設75周年の一環として『私たちが望む未来』の構築にグローバルな協力が果たす役割に関する大規模かつ包摂的なグローバル対話に焦点を当てることになるだろう。」とグテーレス事務総長は語った。

「『国連デー』は、74年前に発効した国連憲章の不朽の理想を記念する日です。荒れ狂う海のような世界の中で、国連憲章は依然として私たちをつなぎとめる道徳的な錨(いかり)の役割を果たしています。」とグテーレス事務総長は強調した。

国連は、安全保障理事会の常任理事国5カ国を初めとする署名国の大多数が国連憲章を批准することで、正式に発足した。1948年以来、10月24日は「国連デー」として祝われている。1971年、国連総会は、加盟国がこの日を公的な休日とするよう勧告した。

Photo: UN Secretary-General António Guterres speaks at the University of Geneva, launching his Agenda for Disarmament, on 24 May 2018. UN Photo/Jean-Marc Ferre.
Photo: UN Secretary-General António Guterres speaks at the University of Geneva, launching his Agenda for Disarmament, on 24 May 2018. UN Photo/Jean-Marc Ferre.

来年の国連創設75周年のイベントの一環としての、地球の将来に関する「史上最大のグローバルな対話」の開始は、グテーレス事務総長が公表した通り、来年1月から世界各地で始まる対話を通じて、世界の民衆を巻き込むことをめざしている。この対話の目的は、さまざまな人々の希望と恐怖に耳を傾け、彼らの経験から学び、いかにしてより良い世界を構築できるかに関する対話と行動に活気を与えることだ。

教室や企業の役員室、議会、村役場など、さまざまな環境において社会のあらゆる部門や世代からの意見が求められる予定だが、とくに強調されているのは若者や社会から取り残された人々である。こうして寄せられた意見とアイディアは、2020年9月の第75回国連総会で実施される注目度の高いイベントで世界のリーダーと国連高官に提示される。

世界の世論調査やメディア分析と並んで、この対話の中で集められた情報は、国連創設100周年にあたる2045年に向けたグローバル・ビジョンにまとめられる。「すべての人々にとって持続可能で包摂的な未来に対する脅威への理解を深め、このビジョンを実現するための集団的行動を推進することをねらいとしている。」と「国連ニュース」は述べている。

創設75年イベントの責任者である国連高官のファブリツィオ・ホスチャイルド氏は、10月24日の記者会見で、「このイベントは、世界がかつてないほど相互関連を深め、国際協力を通じて対処すべき諸課題に直面しているにもかかわらず、そうした問題に対処するために作られた組織から諸国が手を引きつつある中で行われるものです。」と指摘した。

ホスチャイルド氏は、「グテーレス事務総長は、世界の現状について、そして、この現状が『持続可能な開発に向けた2030アジェンダ』で提示されたより良い未来に向けた国連の野心からどれほど離れているかについて、国際社会が熟考する一連のプロセスを求めています。」と語った。

ホスチャイルド氏によると、国連が進めるこれらの対話は、3つの主要な領域に焦点をあてるという。第一は、2045年を見据えて、世界規模のビジョン「私たちが望む未来」を定義すること。第二は、グローバルメガトレンドと、それがこのビジョンから私たちをどの程度遠ざけているのかを把握すること。第三は、グローバルな協力を促進するアイディアを生むような批判的議論を展開することである。

国連75周年では、教室から役員室、国会から村役場に至るまで、社会のあらゆる部門における対話を促進することをめざしているが、若者をはじめ、その声がグローバルな場で軽視されたり、無視されたりすることがあまりにも多い社会から取り残された人々を特に重視する予定だ。

グテーレス事務総長は、10月24日に発表された動画で「私たちが奉仕すべき全世界の人々により良い成果を届けられるようにするためには、皆さんの意見や戦略、アイディアが必要です」と述べ、このキャンペーンに声を寄せるよう、世界各地の人々に訴えた。

国連は、対話の枠組みを作り促進するために、気候危機、不平等、新たな形態の紛争と暴力、急激な人口変動、デジタル技術といった問題に関して概観する『イッシュー・ブリーフ』に焦点を当ててきた。これらの問題は、国境や部門、世代を超えた効果的な協力を必要としている。

国連は、これらの新たなリスクと機会に対処するために必要なことに関する多様な視点と創造的なアイディアを求めている。現在のメガトレンドに変わりがないとすれば、「私たちが望む未来」と、私たちが向かいつつあるところの間で、どう集団的な舵取りをしていったらいいのだろうか。

デジタル技術の影響

技術によって、私たちの世界は、より公平で、より平和で、より公正なものになりうる。デジタル技術の進展は、極度の貧困の撲滅から、妊婦・幼児死亡率の抑制、持続可能な農業の促進、ディーセント・ワーク、普遍的な識字の達成にいたる、17項目の「持続可能な開発目標」の達成を支援し加速することを可能にする。しかし、技術はまた、プライバシーを危険に晒し、安全を損ない、不平等を強化しかねない。人権や人間の主体性への影響もある。以前の世代と同じように、我々(政府や企業、個人)は、新技術をどう使いこなし管理していくかの判断を迫られている。

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紛争と暴力の新たな時代

紛争と暴力の性格は、国連が75年前に創設されて以来、かなり変化してきた。紛争における死者数は減ってきたが期間は長期化し、国家間紛争よりも内戦が増えてきた。世界の一部の地域では殺人が増え、性的な暴力も多くなってきた。

それとは別の問題として、技術の進化によって、ロボットが兵器化され、ドローンが生まれ、ライブストリーミングやサイバー兵器、ランサムウェア、データのハッキングが起きるようになってきた。他方で、国際協力が制約され、紛争と、あらゆる形態の暴力の予防・解決に向けた世界の能力が低下してきた。

不平等:格差の縮小

世界は、貧困の削減で大きな成果を上げてきた。この30年間で、極度の貧困から抜け出した人は10億人を超える。しかし、人類の貧しい方から半分の人々の収入は、1990年以来、世界経済の生産が3倍にもなっているにもかかわらず、この間ほとんど変わっていない。不平等は経済的進歩を阻害し、それがさらに、不平等がつくり出す社会の分断を悪化させる。

収入や地理、ジェンダー、年齢、民族、障害の有無、性的志向、階級、宗教による不平等は、資源へのアクセスと機会、成果の決定要因となり、国内および国家間において執拗に存在し続けている。世界の一部の地域では、こうした分断がより明確になりつつある。他方で、オンライン技術やモバイル技術へのアクセスといった、新しい領域での格差が生まれつつある。

気候危機:勝ち目のある闘い

気候変動は、私たちの時代を特徴づける危機であり、私たちが危惧するよりも速いスピードで訪れている。しかし、グテーレス事務局長が9月に指摘したように、このグローバルな脅威に直面した私たちに、力がないわけではない。グテーレス事務局長は「気候の緊急事態は、私たちが負けつつある闘いだが、勝ち目のある闘いである。」

Photo (in text) Credit: UN
Photo (in text) Credit: UN

気候変動の壊滅的な影響から逃れうる場所など、地球のどこにもない。気温の上昇によって、環境の悪化や自然災害の発生、異常気象、食料や水の供給の不安定、経済的阻害、紛争やテロなどが起きている。海水面は上昇し、北極の氷は融け、サンゴ礁が死滅し、海が酸性化し、森は火災に見舞われている。これまでのやり方が有効でないのは明らかだ。気候変動のもたらす無限のコストは不可逆的に膨らんでいる。大胆かつ集団的対応が必要な時にきている。

変化する人口構成

世界の人口は現在の77億人から2050年には97億人へと、20億人も増加すると見込まれている。出生率が下がり始めるとみられる今世紀末には110億人のピークに達する。この間、世界の人口は都市に集中し、65歳以上人口が5歳未満の児童の数を上回るようになると考えられる。

現在から2050年までに起こる世界の人口増加の半分は、インド・ナイジェリア・パキスタン・コンゴ民主共和国・エチオピア・タンザニア・インドネシア・エジプト・米国のわずか9カ国で起こるとみられる(人口増の多い順)。サブサハラ地域のアフリカの人口は倍増し、欧州の人口は減少に向かうと見込まれる。

他方、人々の移動が活発になっている。この20年間、国境を越えて移住する人の割合は世界の総人口の3%程度で一定だが、実数で言うと、2000年以来、50%以上増えている。同時に、長引く紛争のために、意思に反して住み処を追われる人々が急増し、気候変動や環境悪化のためにその数がさらに増える可能性もある。難民・移民の流れの圧倒的多数は「南」の国々で起きている。(原文へPDF

INPS Japan

This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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