6月20日、核兵器禁止条約の第1回締約国会議(21~23日)を前に開催された「第4回核兵器の人道的影響に関する国際会議」において、レベッカ・ジョンソン博士にインタビューした映像。18日~19日にかけて世界各地から活動家らが集まったICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)主催の市民社会フオーラムにおける協議内容を振り返り、締約国会議への期待と、核のない世界の実現に向けて、これから運動を継承していく若い世代に対するメッセージを語っていただいた。(INPS Japan 浅霧勝浩)
【ウイーンIDN=レベッカ・ジョンソン】
今回ウィーンで開催されたICAN市民社会フォーラムでは、広島と長崎の被爆者をはじめ、南太平洋や、カザフスタン、米国等核実験が行われてた様々な地域の被爆者の証言にまずは耳を傾けました。また、アフリカのコンゴにようにウラン採掘に伴って今も被爆が起こっている現地からの声にも耳を傾けました。
このように軍・産・核という軍事主義的な繋がりが進行しており、私たち人類にどのような被害をもたらすのかが明らかになりました。
今日の「核兵器の人道的影響に関する会議」で、祖母が被爆した日本の被曝三世からの証言にもあったように、女性や少女が男性と比較して、その生物的特性から放射線の影響を圧倒的に受けやすいことも分かっています。
私たちは核兵器に汚名を着せ、禁止し、廃絶することが不可欠であることを、核兵器禁止条約(TPNW)が発効した今、これを履行することが不可欠です。また、ICANフォーラムでは、気候変動による絶滅の危機をくいとめようと懸命に取り組んでいる若者達の話を聞きました。化石燃料による軍事的貢献と、工業化による気候破壊は、核兵器による破壊と密接に関係していることを理解しなければなりません。そしてこれらのことは、核の冬や気候温暖化と相互に関連しており、極端な気象現象として既に顕在化し、最も弱い立場の人々を破壊し、飢餓の原因となっています。こうした全ての事態が、ロシアがウクライナ侵攻後の数日後に核兵器の使用を威嚇する中で進行しているのです。
また、ICAN市民社会フォーラムでは、9つの核兵器国と、日本を含む一部の同盟国の問題について話し合いました。これらの国々は核兵器を保有すること、或いは同盟を通じて核兵器にアクセスできることが抑止力になるという幻想を抱いています。しかし、米国、英国、フランスが欧州で核兵器を保有するNATO加盟国であるという事実をもってしても、ウラジーミル・プーチン氏のウクライナ侵攻を阻止することができなかったことから明らかなように、核抑止理論は既に破綻しているのです。
プーチン氏はロシアの核がNATOを抑止する能力があると考え、侵攻に踏み切った。しかし私たちは、これが世界の安全保障を確保する方法ではないことを示さねばありません。しかしそれ以上に、プーチン氏は英国のトニー・ブレア氏がかつてしたことと同じことをしたのです。ブレア氏は回想録のなかで触れていますが、プーチン氏や(イラクに侵攻した)2003年当時のブレア氏のような核武装国の指導者は、核兵器を持たない国に対しても、侵略的な戦争を行う行動の自由が得られると信じているのです。彼らは軍事侵攻は法的には何の影響もないと信じていたのです。
このようにICAN市民フォーラムでは、世界から集まった多様な背景を持つ老若男女が、様々な方法でこれらの問題について話し合いました。
異なる国、宗教、政治体制下で暮らす私たち一人一人が、「核兵器は国際法で禁止された」しかし「依然として多くの国々がこの条約に署名していない」現状を踏まえて、いかにして核なき世界の実現に向けて前進を図っていくかを協議したのです。
私は20代の頃、英国のグリーナムコモンズで、各巡航ミサイルの欧州配備を阻止する運動に加わって以来、長年反核運動に携わってきました。配備阻止は、1987年の中距離核戦力全廃条約(INF条約)で実現したのを皮切りに、その後市民社会は各国政府と協力して包括的核実験禁止条約の採択まで漕ぎつけました。その時私は、核兵器を禁止する多国間条約を締結するための第一歩として、核兵器自体を禁止することができれば、それを実現しようと考えました。TPNWは、全ての核兵器を廃絶し、廃絶を確認する方法・原則を打ち立てたものです。
またTPNWは私にとってライフワークの結集でもあります。今回のフォーラムでこの条約を前進させるために多くの若者が世界から集まっているのを目の当たりにして、大変頼もしく思っています。
そこで皆さんにお伝えしたいことがあります。
核廃絶を希求する皆さんのお気持ちの根底には、各々が信じる信条や信仰があると思います。是非、各々の信仰に従って祈ってください。そして、それを行動に移してください。各々の信心の伝統や、信仰を行動や他者との協力に結びつけるスピリットの力(霊性)に相当する考え方には様々なものがありますが、方法は様々でも、核廃絶を実現するために、団結して共に行動することが重要です。
各々の国で、同じ人間として老若男女が、各々の信仰・信条に従って、TPNWが謳う核兵器の禁止のみならず、手遅れとなる前に、自国の政府をこの条約に加盟させて、条約を履行するために、全身全霊を傾けていくべきです。
そうでなければ、核兵器や気候変動によって、私たちの子どもたちは、私たちが望むような安全で持続可能な平和な未来を迎えられないからです。私たちの子どもたち、そしてその子供たちに、平和で持続可能な未来を与えるために、私と一緒に行動してください。
INPS Japan
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