ニュース核の安全と核実験禁止に関する国連会議開催

核の安全と核実験禁止に関する国連会議開催

【国連IPS=エリザベス・ウィットマン】

歴史は、核兵器と原子力の破壊的能力の証明にあふれている。しかし、それでもなお、原子力には多くの利点があるとの証拠で科学は満たされている。

原子力の危険を避けつつ、人類がその利益を安全に享受するにはどうすればいいか。国連で9月22日から23日にかけて開かれたハイレベル会合では、指導者らがこのジレンマに直面した。


国連の潘基文事務総長は、9月22日のサミット開会にあたり、「3月の地震と津波によって起こった福島第一原子力発電所の事故と、1986年のチェルノブイリの原発事故が『警鐘を鳴らしている。』」と語った。

「原子力事故には国境はありません。人々を適切に保護するために、強い国際的なコンセンサスと安全基準が必要です。」と潘事務総長は語った。

9月23日、40ヶ国以上の閣僚と高官が、包括的核実験禁止条約の発効について討論した。同条約にはこれまで182ヶ国が署名し、155ヶ国が批准している。米国を含め9ヶ国の批准が、条約発効の要件とされている。

22日の討論は、福島原発事故の影響に焦点を当てた。この事故は、原子力安全を向上するための取り組みを国際社会が緊急に強化しなくてはならないことを示した。

ただ、すべての国家が核活動を追求することをやめる前提で勧告がなされたわけではなかった。

軍縮問題担当の国連上級代表であるセルジオ・ドゥアルテ氏は、原子力の段階的廃止あるいは開発中止を決めた国がある一方で、「原子力の開発、取得の努力を続けている国もある」、と閣僚討議において述べた。したがって、災害とリスクに関する分析がさらに行われる必要がある。

潘事務総長が22日に提示した福島原発事故の影響に関する体系的な研究は、少なくとも原子力安全の分野においては、福島事故の問題が依然として国際的な関心の的であることを示した。

同研究は、原子力に関する賛否を検討し、「安全で科学的に健全な原子力技術は……農業と食料生産にとって貴重なツールである」と指摘した。

にもかかわらず、周囲の環境に放射性物質を放出した事故によって、「水や農地が(激しく)汚染され」、「人々の生活に直接の影響があった」と述べている。

また同研究は、「福島事故の主要な教訓は、どんな種類の事故が起こるかという想定があまりに甘かったということである。」と指摘し、「国際社会は、核保安の問題に適切に対処するために、関連の国際法枠組みを普遍的に遵守し履行するよう努力していかねばならない。」と提言している。

CTBTの発効

包括的核実験禁止条約(CTBT)は、そうした国際的な法的枠組みのひとつである。国際監視制度(IMS)の観測技術が、CTBT違反の探知にあたって貴重かつ効果的であることは広く認められている。その探知能力は、原子力事故にあたっても有益であるかもしれない。

1996年、CTBTは署名に開放された。潘基文事務総長は2012年をその発効の目標年と定めたが、まずは、中国、エジプト、インド、インドネシア、イラン、イスラエル、北朝鮮、パキスタン、米国が条約を批准しなくてはならない。

指導者らは、CTBT発効で多くの利益が生まれる、という。

潘事務総長は23日の閣僚会議で、「CTBTは核兵器なき世界に向かっての不可欠の飛び石のひとつだ。」と語り、「遅滞なく」条約を署名・批准するよう各国に求めた。

ドイツのギド・ヴェスターヴェレ外相は、条約発効によって中東や東アジアのような地域の緊張を緩和するのに効果的なだけではなく、「世界の平和と安全を強化する」のにも有益だと語った。

しかし、条約が発効するまでには、批准という大きな問題が立ちはだかっている。

CTBT機関準備委員会のティボール・トート事務局長は、9ヶ国の批准問題に関して、「それは各国で決めることです。各国は、CTBTに加盟することでセイフティネットが張られることになると考えるのかどうか、自ら判断しなければなりません。」「特に中東と南アジアでは、CTBTがより高度の安全を確保するための資産になると各国が考えるようになることが重要です。」と語った。

またトート事務局長は、「政治的安全保障という利益を超えて、複雑な災害の影響を減ずるという効果もCTBTにはあります。」と語った。

この点についてはドゥアルテ氏も同意見で、「原子力をエネルギーミックスの一部に加えたいと思うかどうかは、主権的な決定に関わる問題です。」とIPSのインタビューに応じて語った。

ドゥアルテ氏は、「国連ができることは、CTBTを促進し、それに加盟することに伴う利益を(諸国に)示していくことです。」と語った。

国連は会議を招集し、知識を集積し、情報を共有することができる。原子力事故の予防・対処のために加盟国を知識でもって武装することもできるし、そうした効果を生むような枠組みや条約づくりを促進することもできる。しかし、究極的には、そうした実践を行ったり条約を批准したりするのは、他でもなく各加盟国である。

「どうしたいか決めるのは、各国次第なのです。」とドゥアルテ氏は語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩

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