【ニューデリーIDN=デヴィンダー・クマール】
カザフスタンは国連安保理非常任理事国(2017年1月から2年の任期)に選出されてからまもなく、中央・北アジアの人々の社会・経済開発ニーズに関係各国と連携して取り組んでいく方針を確認した。そしてこの目的のために、アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)との間に7月11日、新たな協定に署名した。
カザフスタン政府はホストカントリー協定を補う今回の協定に基づき、ESCAPの中央・北アジアサブ地域事務所(SONCA)のための土地建物の提供及び同事務所の運営・プログラム経費を年次予算から助成金で負担すること約束した。
サブ地域事務所は、国連総会決議に則り、カザフスタン政府の主導で主要商業都市であるアルマトイに2011年7月5日に開設された。各加盟国の特性や開発ニーズにより適切に対応し包摂的で持続可能な開発の実現に向けた前進を加速するために地域協力及び地域統合を強化することが目的である。
カザフスタンの駐タイ大使兼ESCAP常駐代表のマラート・イェセンバエフ大使は、今回の合意について、「ESCAPと中央・北アジアの加盟国間の協力関係を一層拡大・深化させるうえで、重要な一歩となりました。」と指摘したうえで、「このことは、カザフスタンが国連安保理の非常任理事国に選出されたことに鑑みればとりわけ重要な意味合いを持ちます。我が国はこれにより一層重い責任感を持って様々な国連機関における取り組みを進めていかなければなりません。本日の署名が、中央・北アジア地域の開発を目的とした既存並びに新たな国連プロジェクトや計画に弾みを与えることと確信しています。」と語った。
シャムシャド・アクタール国連事務次長兼ESCAP事務局長は、「本日の署名式は、中央・北アジアサブ地域の開発に有意義な貢献をもたらそうとするESCAPの計画にとって重要な一歩となりました。今回の合意は。中央・北アジアサブ地域事務所(SONCA)の地位を一層確固たるものにし、その機能が継続していくことを保証するとともに、カザフスタン政府が提唱している、中央アジアにおける国連諸機関のためのハブ機能を強化していくことになります。ESCAPは同サブ地域事務所に対するカザフスタン政府による手厚い支援に感謝しています。」と語った。
中央・北アジアサブ地域事務所は、加盟国であるアルメニア、アゼルバイジャン、ジョージア、カザフスタン、ロシア、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタンと協力して、持続可能な開発目標(SDGs)に向けた地域全体の進歩を加速するために地域間協力を促進するほか、規範的な分析作業、政策による権利擁護、キャパシティビルディング活動を推進していく。
アフガニスタンもまた、国連中央アジア経済圏連特別プログラム(SPECA)の加盟国として中東・北アジアの活動に参加している。SPECAは中央アジアにおける準地域的な協力と世界経済への統合を強化することを目的に1998年に創設された国連プログラムで、アフガニスタンの他にアゼルバイジャン、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタンが加盟しており、国連欧州経済委員会(UNECE)とESCAPが全般的な支援を行っている。
SPECAの戦略的な重要性は、中央アジアをUNECE地域(現在はヨーロッパ諸国だけでなく、北アメリカ、西アジア、中央アジア諸国にまで加盟国が広がっている。)の中でもユニークな地域に押し上げている。つまり、SPECA加盟諸国は、欧州とアジアのエネルギー安全保障にとって重要な役割を果たしているほか、アジアと欧州大陸を結ぶ物流のハブとなる大きなポテンシャルを有している。さらに、テロや宗教上の過激主義、麻薬密輸といった世界的な安全保障上の脅威との闘いにおいて積極的な役割を果たしているのだ。
中央アジア諸国はいずれも、陸封国であること、旧ソ連時代の計画経済から市場経済への移行を経験してきたこと、資源国(カザフスタンとトルクメニスタン)と非資源国(ウズベキスタン、キルギス共和国、タジキスタン)の間で急速に経済格差が広がっていることに起因する様々な困難に直面している。
従って、これらの国々はいずれも経済を多様化し、今日のようにエネルギーや特定の産物の輸出に依存する構造からできるだけ早期に脱却する必要に迫らせている。地域協力を強化していくことは、これら中央アジアの全ての国々の経済を迅速かつバランスと安定性を確保しながら発展させていくための、極めて重要な前提条件となっている。
専門家らによると、これらの中央アジアの国々は、互いの戦略的な利点を最大限に活かし、地域全体を不安定化しかねない諸課題に共に効果的に立ち向かっていくためにも、緊密な域内協力を推進することが求められている。(原文へ)
INPS Japan
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