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|軍縮教育|国連、あらたな方策で核軍縮推進へ

【ジュネーブIDN=ジャヤ・ラマチャンドラン】

アントニオ・グテーレス国連事務総長は2018年5月24日、大量破壊兵器や通常兵器、未来の兵器技術など、軍縮問題全範にわたる一連の実践的措置をまとめた「軍縮アジェンダ」を発表した。

このアジェンダのタイトルにもなっている「私たち共通の未来を守る」ための「行動1」は、「核軍縮のための対話を促進する」ことを目的としている。このアジェンダは、軍縮と不拡散が、国連憲章に謳われているように、人間開発にとって望ましい安全な環境作りに不可欠のツールであることを強調している。

Vienna International Center/ photo by Katsuhiro Asagiri
Vienna International Center/ photo by Katsuhiro Asagiri

軍縮教育は、核軍縮を推進するための重要な手段である。それゆえ、国連軍縮部(UNODA)の重要な優先課題は、そのさまざまな組織の支部を通じて実施されてきた多くの教育活動に協力することである。

この戦略は、軍縮部の任務の持続可能性と影響力を強化する取り組みの一環であり、ますます厳しさを増す軍縮及び国際安全保障環境の中で、信頼でき、幅広く、包摂的な軍縮教育が緊急に必要とされている状況に対応したものだ。

国連軍縮部ウィーン事務所は、このことを念頭に、初の「軍縮教育戦略」を2022年12月5日にウィーンで開かれた「仮発表」イベントで打ち出した。世界全体に向けた発表は2023年前半を予定している。

この戦略には、今後数年間、国連軍縮部が軍縮教育活動で推進する4つの主要分野の概要が示されている。国連軍縮部ウィーン事務所のレベッカ・ジョビン代表は、イベントでこれらの目標を発表し、UNODA独自の専門性や不偏性、さまざまな主体を糾合しつなげる力の点で同軍縮部が持っている軍縮教育分野の比較優位性について強調した。

ジョビン所長は、UNODAが数多くの教育の取り組みを同時並行的に進めると強調した。そうすることで、国連の内外におけるより広範な教育の取り組みと軍縮の側面を統合し、平和や安全保障、開発、人権、ジェンダー平等にとっていかに軍縮が重要であるかについて理解を広げていくことを目指す。

ジョビン所長はさらに、パートナーシップの中心的な役割と、軍縮教育分野を前進させるうえで関連するネットワークを生み出し、接続し、橋を架けることへの軍縮局への取り組みを強調した。

イベントには、オーストリア外務省軍縮・軍備管理・不拡散局長のアレクサンダー・クメント大使、ウィーン軍縮不拡散センター(VCDNP)のエレナ・ソコバ事務局長も加わった。

Staff of the UNODA Vienna Office were joined by Ambassador Mr. Alexander Kmentt for a group photo at a  reception celebrating the 10th anniversary of the Office
Staff of the UNODA Vienna Office were joined by Ambassador Mr. Alexander Kmentt for a group photo at a reception celebrating the 10th anniversary of the Office

クメント大使は、特に現在の激動する国際安全保障環境における軍縮教育の不可欠の役割を強調し、オーストリアが軍縮教育を長らく重視し、将来への大きな投資だと考えてきたと語った。また、この作業を進めるためにオーストリアがUNODAウィーン事務所に財政支援を行うことを発表し、軍縮教育におけるドナーの幅広い支援を呼びかけた。

ソコバ事務局長はつづけて、軍縮・不拡散の目標達成のため、国連の戦略を実行し、UNODAなどの主要なパートナーと協力することを表明した。とりわけ、伝統的な軍縮分野の外にいる主体と積極的に関わり、特定の対象者や文脈に見合った形で資源を動員しアプローチを採ることで、国際の安全の問題に対応するさまざまな主体や方法論、能力を糾合するコミュニティ・アプローチを採ることの重要性を強調した。

この発表イベントはまた、国連軍縮部ウィーン事務所発足10周年を祝うものでもあった。クメント大使は2010年の核不拡散条約(NPT)再検討会議を振り返った。

この時の会議で、オーストリアのミヒャエル・シュピンデルエッガー外相(当時)が国連軍縮部ウィーン事務所の誘致(及びVCDNPの設立)を打ち出した。軍縮・不拡散分野の専門性を高め、その他の軍縮部事務所との連携を密にし、ウィーンにおける能力構築の取り組みを強化することが狙いだった。

2022年にはまた、UNODAとストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が、軍縮・軍備管理・不拡散における責任感のあるAIイノベーションに関する初の世界的なプロジェクトが遂行された。これは韓国政府からの支援によってなされたものであった。

この協力の重要性は、責任感のあるAI利用に関する研究・実践が発展途上であるという点にある。AIを巡るガバナンスに対する望ましいアプローチとして専門家が論じていることは、それを重要なセクターを横断していかにして実践化していくか、多くの異なったアプローチをいかに調整していくか、そして、重要なことには、それを、民生技術の濫用・軍事転用のリスクを含めた、軍縮・平和・安全の問題にどう関連付けて理解するか、といった問題だ。

この空白を埋めるために、軍縮部・SIPRIプロジェクトは、軍縮・軍備管理・不拡散の取り組みに対する「初期の」貢献として責任感のあるイノベーションを促進し、AI分野の若い技術者たちをさらに関与させることを目指している。

2022年、プロジェクトは3つの主要かつ相互に関連した活動を行った。

Young AI practitioners shared their perspectives on the risks presented by AI, and strategies for mitigation.
Young AI practitioners shared their perspectives on the risks presented by AI, and strategies for mitigation.・UNODA

第一に、世界から集まった大学院修了クラスの若い技術者らが1週間のオンラインワークショップに参加した。双方向的かつシナリオを基礎としたセッションを通じて、大学院修了クラスの多様な集団が軍縮を巡る中核的な考え方に触れ、AIが軍縮に対してプラスにあるいはマイナスに作用しかねないケースについて認識を高め、AI開発に巻き込まれ影響を受ける他の利害関係者の役割や諸個人・組織の責任について考察した。

第二に、国連軍縮部とSIPRIは、AI技術者にとって世界最大の組織であり主要なフォーラムである米国電気電子学会(IEEE)が発行する「IEEEスペクトラム」誌に、AIコミュニティの盲点としての平和と安全に関する記事を発表した。この記事の中で著者は、民間に焦点を当てた責任あるAIの既存の取り組みを平和と安全保障、軍縮、軍備管理、不拡散の懸念と結びつけ、可能なアプローチをモデル化するワークショップの成果を基にした取り組みを試みている。

UNODA

第三に、このプロジェクトは、若い技術者に対する教材の策定・トライアルの場としても機能し、その後ファクトシートやスライド、動画付きプレゼンテーションといった複数のフォーマットの教材に発展している。これらは現在、国連軍縮部の教育関連ウェブサイトで利用可能だ。(原文へ

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