SDGsGoal1(貧困をなくそう)|ミャンマー|「都市部の貧困率が3倍に」とUNDPが警告

|ミャンマー|「都市部の貧困率が3倍に」とUNDPが警告

【ヤンゴンIDN=キャロライン・ムワンガ】

国連開発計画(UNDP)は、ミャンマー(人口5500万人)では総人口の約半数にあたる約2500万人が、2022年初頭には貧困ライン(1日の所得が1590チャット=約100円)以下の暮らしを余儀なくされることになるとする報告書を公表した。このことは、パンデミック以前の15年間にわたる経済成長の成果が消滅して貧困率が2005年以来最悪の水準に逆戻りすることを意味する。

「貧困率の増加からは、生活収入の不足という問題にとどまらず、次世代の人的資源にマイナスの影響を及ぼす栄養、健康、教育へのリスクも見てとれる。ミャンマーの都市部の貧困率は、コロナ禍と進行中の政治的危機による複合的影響により、3倍を超す水準となる。」と報告書は述べている。

UNDPでは、2月に発生した国軍によるクーデターに伴う国民の所得水準への影響を測るための家計調査を5月から6月にかけてミャンマー全土で実施した。

カニ・ヴィグナラジャ国連事務次長補・UNDPアジア太平洋局長は、「通常、中間層が経済回復の原動力となるが、これほど大規模に貧困層が拡大しているミャンマーでは、その中間層が消滅してしまいかねない状況だ。」と指摘し、急速に不安定化している現状について警鐘を鳴らした。

同調査によると、パンデミックと国軍のクーデター前から既に貧困の危機に見舞われていたチン州ラカイン州では、貧困率が高止まりとなる見通しだ。一方、マンダレーヤンゴンといった主要都市部では、貧困層が増加するとともに、既に貧困に喘いでいた層は一層厳しい状況に追いやられると見られている。

報告書はまた、貧しい人々の雇用と収入の大半を生み出す中小規模ビジネスの他、とりわけ縫製業、観光業、サービス業、建設業が大きな打撃を受けていると指摘している。これらの産業はミャンマーの都市部に集中しているが、過密でインフラが未整備なうえに、水道その他のサービスへのアクセスが限られている都市部の環境はウイルスの拡散を悪化させている。

報告書はまた、都市部の世帯の約3分の1が収入減を補うため貯蓄を切り崩し、このうち半数が「貯蓄を使い果たした」と回答するなど、家計の貯蓄が大幅に減少したと指摘している。また都市住民の約27%が、家計をやりくりするために、主な移動手段であるバイクを手放したと回答している。

現金はますます不足してきており、ミャンマーの大手民間銀行カンボーザ(KBZ)銀行は、一日当たりの現地通貨引き出し可能額を約120ドル相当に制限している。さらに、困窮した家庭が頼りとしている出稼ぎ労働者からの国際送金も10%減少している。

報告書は、貧困率の増加は、国の開発全体に深刻な波及効果を及ぼすことになりかねないと警告している。

「我々は、ミャンマー政府は、年間GDPの4%相当の予算を社会救済策に割当てる必要があると見積もっている。経済規模が急速に縮小し、所得崩壊が起こっている中で、もし救済を目的とした社会的投資がなされなければ、多くの世帯を長期にわたって恒常的な貧困状態に固定してしまう可能性がある。」(原文へ

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