【サンタバーバラIDN=リック・ウェイマン】
ドナルド・トランプ大統領と金正恩最高指導者による米朝首脳会談まであと数週間となった。そこで多くの疑問が浮かんでくる。これは望ましい会談なのか? いつ、どこで行われるのか? 何を議論するのか? 誰が(もしそんな人がいればだが)米国大統領のためにこの重大な会談の準備をしているのか? 会談は成功するのか?
トランプ時代には、何が答えなのかを推測することすら難しい。しかし、この前代未聞の首脳会談が朝鮮半島における数十年に及ぶ紛争に永続的な変化を生み出すことがあるとすれば、頭に入れておかねばならない重要な問題がいくつかある。
主権
韓国は主権国家だ。大統領の文寅在氏は2017年、北朝鮮との対話・和解を公約に選挙戦を勝ち抜いた。文氏は韓国が「朝鮮半島の問題で主導権を握れるように」したいと明確に語った。
平昌での2018年冬季オリンピックと、それと関連した2月2日から3月25日までのオリンピック休戦は、南北朝鮮に対して、外交的努力と軍隊間の連絡を再開する機会を与えた。西側メディアの多くは、オリンピックへの北朝鮮の出場とそれに伴う外交に関して、米韓間に「くさび」を打ちこむものだとの印象を植えつけようとした。
この米国中心的な思考は、状況に関する韓国大統領の理解と、韓国民衆の平和への希求を軽視したものだ。文大統領に対する74%という支持率は、韓国民の大多数が望む方向を文氏が追求していることを示している。
文寅在大統領・金正恩最高指導者による4月の南北首脳会談は、より過大に期待されている金・トランプ会談に先行する。南北朝鮮の首脳は、対話と協力関係を通じて両国の数多くの市民の安全を確保する歴史的な機会を手にしている。
非核化
米国による北朝鮮への一般的な要求は、北朝鮮はその核兵器を放棄すべきだというものだ。これはしばしば北朝鮮の「非核化」、あるいは朝鮮半島の非核化の要求と呼ばれる。
3月に北朝鮮を訪問した韓国特使は声明のなかで、「北朝鮮は朝鮮半島を非核化する意思を明らかにし、北朝鮮に対する軍事的脅威の問題が解決され、その体制の安全が確保されたならば、核兵器を持ち続ける理由はないと明確に述べた。」と述べている。
朝鮮半島の非核化というとき、北朝鮮の核兵器の問題に加えて、米国もまた、トランプ大統領の言によれば数百発の核兵器で「狙いを定め、装填している」状態にあることを忘れてはならない。米国の爆撃機や陸上配備の大陸間弾道ミサイル、潜水艦発射弾頭ミサイルはすべて、北朝鮮を「完全に破壊」する能力を持っている。
北朝鮮に対する十分な安全保証とはなにを含むのかについては不明確なままだ。北朝鮮の侵略に備える米韓合同軍事演習停止の協定という形になるのか? それとも、完全な核軍縮を達成するための誠実な協議に、北朝鮮や他の7カ国の核保有国とともに米国が参加するという約束になるのだろうか?
どのような安全保障協定であっても、その主な要素は、朝鮮戦争を公式に終結させる和平協定の形でなくてはならない。1950年に始まった朝鮮戦争は、停戦協定をもって1953年に停止している。65年経った今日、和平条約は未締結のままである。
文大統領は2017年のベルリンでの演説で「半島における永続的な平和をもたらすために、朝鮮戦争終結時のすべての当事者が参加する和平条約を結ばねばならない」と述べている。
平和を実現する女性たち
どんな平和協議であっても、女性の声を含めることがきわめて重要だ。「平和を実現する女性たち」と題された3月7日のウェブセミナーで、「非武装地帯を超える女性たち」のクリスティーン・アン氏と「コードピンク」のメディア・ベンジャミン氏は、和平協議一般と、とくに朝鮮の文脈に関連した女性の不可欠の役割について話し合った。
アン氏は「女性が関われば実際の和平協定につながり、それはずっと永続的なものになることが、この30年の経験で分かっています。」と語った。
アン氏はまた、「核時代平和財団」での第17回「人類の将来に関するフランク・K・ケリー・レクチャー」(3月7日)において、さらにこうした考え方を敷衍(ふえん)した。また、「非武装地帯を超える女性たち」が今年5月に、政府の承認を得たうえで、非武装地帯を実際に超えるイベントを準備していると発表した。
挑発はやめよ
米韓両国は4月に、やや規模は当初の予定より小さくしたものの、合同軍事演習の再開を予定している。不必要に挑発的なものだが、にもかかわらず実施しようとしているようだ。米国は、オリンピック休戦に合わせるために、2月初めに予定していた大陸間弾道ミサイル「ミニットマンⅢ」の実験をひそかにキャンセルした。
他方、北朝鮮は、「協議が継続される限り、さらなる核実験や弾道ミサイル実験のような戦略的な挑発を再開しない」ことに同意した。
朝鮮戦争の公式解決は、民衆がそれを要求しない限り実現しそうもない。ホワイトハウスが暴力的な「平和」に関する見方を喧伝するなか、文大統領による和平条約の追求を支持するために立ち上がるのは、米国や世界各地の民衆次第だ。(原文へ)
翻訳=INPS Japan
This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.
※リック・ウェイマンは、核時代平和財団(NAPF)の事業責任者。2016年4月には、核の責任同盟(ANA)から「今年の活動家賞」を送られる。受賞理由は「マーシャル諸島の核ゼロ訴訟に世界的注目を集める上で大胆なリーダーシップを発揮し、次世代の平和のリーダーたちを育て、ANAで理事及び技術指導者として活躍したこと」であった。
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