地域アジア・太平洋女性をとりまく深刻な人権侵害の実態が明らかになる

女性をとりまく深刻な人権侵害の実態が明らかになる

【ベルリンIDN=ユッタ・ヴォルフ】

新たに発表された女性・女児の保護状況に関する報告書によると、性的暴行、差別、人身売買、性的搾取等の人権侵害に晒されるリスクが「極めて高い」国は、全世界197カ国のうち、実に40%以上に及んでいる。

リスク分析を専門とするメイプルクロフト社が出した「女性・女児の人権インデックス(WGRI)」によると、「極めて高い」に分類された国は80カ国で、その内訳は、サブサハラアフリカ地域の33か国、ほぼ全ての中東諸国、北アフリカ地域、及び多くの新興経済国であった。

 その中で「リスクが最も高い」10カ国は、イラン、スーダン、ソマリア、シリア、コンゴ民主共和国、サウジアラビア、アフガニスタン、ブルンジ、ハイチ、ナイジェリアであった。

一方、対極の「リスクが低い」と分類された国は、デンマーク、ベルギー、スウェーデン、カナダ、ニュージーランドを含む全体の僅か5%であった。しかしながら、これらの国々においてさえも、いわゆる名誉関連の犯罪や強制結婚を含む人権侵害は依然として残っている。

また、経済成長が著しい新興経済国において、女性や女児の人権侵害事件に、現地に進出している多国籍企業が巻き込まれるリスクが高い。それに該当する国々は、ナイジェリア、バングラデシュ、パキスタン、フィリピン、中国、エジプト、メキシコ、ロシア、インドネシア、インド、トルコで、いずれの国もWGRIで「極めて高いリスク」に分類されている。

これらの国々で、治安機関その他の関係者による人権侵害に多国籍企業が巻き込まれるケースとしては、性的暴行、雇用上の差別、児童労働、人身売買と性的搾取が挙げられている。
 
WGRIは、重要な調査結果として、石油掘削事業や鉱山、プランテーションといった価値が高い資産を守るために多国籍企業が雇用した、国の或いは民間の治安要員の行状について、言及している。

英国に本拠を置くメイプルクロフト社は、地下資源が豊富なコンゴ民主共和国(DRC)、コートジボワール、シエラレオーネ、ミャンマーを含む政府の統治体制が脆弱な国において、治安要員による強姦事件が頻発している現状に言及している。

WGRIに5年連続で「極めて高いリスク」とランク付けされた国々においては、多国籍企業が、女性の人権侵害事件に巻き込まれるリスクが特に高い。2011年7月、国連の調査ミッションは、コンゴ民主共和国国軍(FARDC)の兵士たちが、2011年の1月から2月にかけて北キブ州マシシ地方のブシャニ村とカランバヒロ村において、1人の未成年者を含む47人の女性に対して、強姦を含む性的暴行を加えていたことを明らかにした。

伝達環境が整っていないことから、これらの国における性的暴力事件に関する正確な数値を得ることは困難であり、数値があったとしても情報源によって様々である。とはいえ、2011年5月、「アメリカ公衆衛生ジャーナル」は、コンゴ民主共和国(DRC)では毎日1,152人の女性と女児が強姦されていると報告した。一方、国連人口基金(UNFPA)は、DRCで過去5年間に強姦された女性と女児の数を20万人と報告している。

性器切除(FGM)を含む人権侵害に最も晒されやすいのが思春期の少女達である。世界の思春期の少女達が置かれている状況に関するデータを集積したウェブサイト「Girls Discovered」(メイプルクロフト社、ナイキ財団、国連財団が共同開発)の2011年版データによると、サブサハラアフリカの多くの国では、FGMを含む様々なジェンダーに基づく暴力が頻発している。例えば、シエラレオーネ、ソマリア、ギニアといった国では、少女の80%から90%がFGMを経験している。

「男女平等の実現は基本的人権であり、開発において最も重要な部分です。企業は、自らのサプライチェーンを通じて、注意深く人権状況をモニタリングし、そうしたリスクを特定・緩和することで重要な役割を果たすことが可能なのです。また企業は、市民社会や国際機関、各国政府とも積極的に協力して、女性や女児の人権擁護を促進するプロジェクトを支援することもできます。」とメイプルクロフト社の分析官であるシオブハン・トゥオヒースミス氏は語った。

「女性・女児の人権インデックス(WGRI)」は、2011年12月10日の「国際人権デー」に発表される予定の年次報告書「人権リスクアトラス第5版」に用いられている23の指標のうちの一つである。この年次報告書は、メイプルクロフト社が、多国籍企業が事業やサプライチェーンを通じて、人権侵害に関与する潜在的なリスクを監視するツールとして開発したものである。

最新のインデックスを見ると、世界全体では、僅かながら女性と女児を取り巻く状況が改善しているのが分かる。つまり、「極めて高いリスク」と次のランクの「高いリスク」のカテゴリーに分類された国が、昨年は156カ国であったのに対して今年は144カ国と8%減少している。しかし本報告書を担当したリスク分析官によると、これはほんの僅かな改善に過ぎず、女性に対する暴力と差別は、引き続き新興経済国や開発途上国において深刻な問題であり続けている。

翻訳=IPS Japan

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