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巨大ハイテク企業がコンゴの炭鉱で横行している児童労働に加担しているとして訴えられる。

【ニューヨークIDN/GIN=リサ・ヴィヴェス】

児童が21世紀の今でも炭鉱で働いている?

1910年当時、米国では15歳未満の推定200万人の児童が工場や炭鉱で低賃金・長時間シフトの労働に従事していた。ニューヨークの写真家ルイス・ハイン氏が、全米各地の田畑や炭鉱で過酷な労働を強いられている児童(中には僅か8歳の子どももいた)の実態を撮影した写真を刊行し、社会に改善の必要性を訴えた。米国では1938年に児童労働は非合法化された。

Map of DRC
Map of DRC

それから100年後、15歳の児童が危険なコバルト鉱山でトンネルを掘っている。彼らが働かされているのは米国ではなく、コンゴ民主共和国である。児童らはここで人目に触れることなく、安全措置も施されていない環境で24時間ないしはそれ以上の過酷なシフトで働かされている。

2019年12月、ワシントンに拠点を置く人権保護団体インターナショナル・ライツ・アドボケイツは、「児童らが過酷で危険な労働を強いられていることを認識しながらこれに加担し、利益を得てきた」として、IT大手企業5社等を相手取り、ワシントンDCの連邦地方裁判所に集団訴訟を起こした。

提訴されたのは、アップル、グーグルの親会社アルファベット、デル、マイクロソフト、テスラの5社で、申し立てによると、サプライチェーンの起点となる英国の採掘会社がコンゴ人の児童を使役して採掘したコバルトを、ブリュッセルを拠点とする貿易業者に販売し、同社がバッテーリー材料としてIT大手企業5社に販売していた。

今回、提訴の対象には、中国最大のコバルト精錬事業者のZhejiang Huayou Cobaltや、スイスの資源大手グレンコア、ベルギー本拠のユミコアなどが含まれている。

提訴は、採掘現場のトンネルや壁が崩壊して死亡または重傷を負った子供たちの保護者である原告14人を代表して上記人権保護団体が行った。

In the rock quarries of DR Congo, entire families – including small children – have to work in order to survive./ UNICEF DR Congo
In the rock quarries of DR Congo, entire families – including small children – have to work in order to survive./ UNICEF DR Congo

ガーディアン紙が確認した申立書によると、児童らは家庭が貧しいために学校に通えず採掘場で働くことになり、1日に12時間のシフト、中には日給2ドルで、コバルトを含む岩石の採掘や岩石が入った袋の運搬に従事させられていたという。

コバルトは、スマートフォンやノートパソコン、電気自動車に使用される充電式リチウムイオンバッテリーに欠かせないレアメタルで、コンゴ民主共和国は、コバルトの埋蔵量・生産量ともに世界一(世界の埋蔵量の約半分、生産量の約6割)である。

「つまり、提訴された企業が毎年生み出す数千億ドルにのぼる収益は、コンゴ民主共和国で採掘されたコバルトなしにはありえない。」と訴状は記している。

デル広報担当ローレン・リー氏は、フォーチュンマガジン誌の取材に対して、会社として訴訟内容を精査していると語った。リー氏は電子メールで、「当社はいかなる形であれ、強制労働や詐欺的人材募集、児童労働を使った事業を、そうと知りながら利用したことはない。」「不正行為が報告されたサプライヤーは調査され、もし不正行為が見つかった場合は当社のサプライチェーンから除外される。」と語った。

SDGs Goal No. 16
SDGs Goal No. 16

しかし、インターナショナル・ライツ・アドボケイツは、こうしたIT企業各社の主張に反論して、「こうした企業は、自社の莫大な富と力からすれば取るに足らないほどの資金でこうした児童らに対する支援を強化することさえせず、幼児期と健康、そして自身の命さえ奪われる劣悪な環境で児童たちが掘削した安価なコバルトから利益を上げ続けている。」と述べている。

「私たちが代弁する子供たちに、速やかに正義がもたらされるよう全力を尽くします。」と主任弁護士のテリー・コリングワース氏は語った。(原文へ)

INPS Japan

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2020年代は恐怖・貪欲・憎悪の時代になるか(ロベルト・サビオIPS創立者)

【ローマIDN=ロベルト・サビオ】

2020年、世の中の仕組みが急速に道徳的指針を失いつつある今日の世界において、私たちは、人類の歴史の中で新たな最低地点に入りつつある(あるいは既に入ってしまった)と認識しないわけにはいかない。

今日、例えば、気候変動の危機がもたらす前例のない生存上の危機に私たちは直面している。科学者によれば、国際社会は2030年までに気候変動を止める必要があり、それ以降は地球に不吉な予兆が現れるのだという。にもかかわらず、先日マドリードで開催された気候変動に関する世界的な会議(COP25)では、なんの合意も見られなかった。

Roberto Savio/ Photo by Katsuhiro Asagiri
Roberto Savio/ Photo by Katsuhiro Asagiri

2000年代初頭から、政治家と気候変動問題の関係が目覚ましく変わってしまった。気候変動問題は、もはや科学ではなく、政治的な問題となってしまい、米国のドナルド・トランプ大統領やブラジルのジャイル・ボルソナーロ大統領、ハンガリーのオルバーン・ヴィクトル首相、ロシア連邦のウラジーミル・プーチン大統領のように、気候変動の危機など起きていないと論じる重鎮レベルの政治家も出てきている。

2000年代終盤以来、私たちにとって重要な環境、すなわち民主主義にも変化が起こってきた。1989年のベルリンの壁崩壊時、共産主義の脅威は去ったと語られた。フランシス・フクヤマ氏の有名な言葉を借りれば、それは「歴史の終わり」であった。資本主義と市場経済が世界を統合し、あらゆる人々を引き上げると当時言われたものだ。

そして、2008年から2009年にかけて諸政府(すなわち民衆)が12兆ドルを失う巨大な金融危機がやってきた。これによって明らかになったことは、実際に引き上げられた人々はほんのわずかであったという現実だった。その後行われた緊縮財政は、とりわけ福祉や教育、保健政策を狙い撃ちにする一方、一部の人々が莫大な富を手に入れた。世界の債務は倍増し(現在で3250兆ドル)、にわかに、国家主義的で排外主義的な右翼諸政党が各地に出現した。2009年の金融危機以前は、こうした極右政党はフランスにしかなかった。公民精神と寛容の象徴と長らくみなされてきた北欧諸国ですら、極右政権が誕生するに至っている。

ベルリンの壁崩壊から金融危機までの30年間に、競争と個人主義、価値喪失の文化が蔓延った。すなわち、「貪欲の文化」である。そして、この危機から10年間で「恐怖の文化」が現出した。移民がその触媒になった。「我々は侵略されつつある」「イスラムは我々の社会に馴染まない」「我々の職が奪われている」「犯罪と麻薬が我々の社会に持ち込まれている」という声がこだまし、気候変動の事実を信じないのと同じ指導者らが、キリスト教の擁護者を自認して、人権を顧みない抑圧的な法律を、市民が喝采するなか次々と制定している。

The Fall of the Berlin Wall, 1989/ By Lear 21 at English Wikipedia, CC BY-SA 3.0
The Fall of the Berlin Wall, 1989/ By Lear 21 at English Wikipedia, CC BY-SA 3.0

この20年で、労組は全く弱体化し、労働を非正規化する法律が制定され、社会保障費が削減された。その結果、人々は子どもたちの不透明な将来に直面して、恐怖心にとらわれるようになった。

歴史家は、歴史に変革をもたらす2つの原動力は「貪欲」と「恐怖」であると断じている。私たちは2020年代を、この「貪欲」と「恐怖」と共に迎えた。さらに悪いことに、私たちは「憎悪」が蔓延る風潮の中にいる、と多くの識者が見ている。

実際には、人類が歴史の中で捨て去ってきた2つの「大義名分」が復活を遂げつつあるということなのだ。

一つ目は、「神の名において」という大義名分である。これはイスラム国(IS)やアルカイダが連想させるかもしれないが、実はトランプ大統領やボルソナーロ大統領、オルバーン首相、プーチン大統領の物の見方の基礎にあるものだ。右翼は、宗教を利用して貧困層を組織化してきた。神学者のフアン・ホセ・タマヨ氏は、聖書を手にしたこうした政治家たちを「キリスト教・ネオファシスト同盟」と呼んでいる。

コスタリカの先の大統領選挙では、福音主義のファブリシオ・アルバラード牧師が、欧州由来の中絶や自然崇拝主義的な考え方に反対し、キリスト教の価値と新自由主義の旗を掲げて善戦した。これはまさに、オルバーン首相がハンガリーで、カチンスキー首相がポーランドで、プーチン大統領がロシアで掲げていた選挙戦のテーマであった。

ブラジルではキリスト教福音派がボルソナーロ氏の当選に重要な役割を果たした。エルサルバドルでは、ナジブ・ブケレ新大統領が、極右の福音派牧師に就任式で祈りを捧げるように要請し、教室で聖書を読むことを義務化する法律案を策定しつつある。

ボリビアのエボ・モラレス政権が軍によって転覆させられて以降、ジュアニネ・アニェス大統領代行とその支持者らは、あらゆる式典に聖書を片手に現れている。そして、トランプ大統領もまた、4000万人の信者を抱えるキリスト教福音派の支持によって誕生したことを忘れてはならない。

タマヨ氏は「国際化」する憎悪(ヘイト)について語っている。ジェンダー平等やLGBT、中絶、移民に対するヘイトである。ヘイトを拡散する者たちは、家父長制的な家族のあり方や女性の従属を擁護し、伝統に反するものを忌み嫌い、科学や統計を信じず、気候変動を否定し、ムスリムやユダヤ人、黒人を嫌う。この中で完全に無視されているのは、社会的不平等の問題であり、民族や文化・ジェンダー・社会階級・性的アイデンティティなどを理由とした経済格差の拡大である。

タマヨ氏はこれが新たな国際的運動になりつつあるとみている。先日のスペインの選挙結果からもわかるように、その波は欧州に及んでいる。極右政党「ボックス」は創設わずか6年だが、今や議会に52議席を占める第3党となった。ドイツの極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」も同じだ。

マッテオ・サルビーニ氏が率いるイタリアの「同盟(旧北部同盟)」もまた、ロザリオを手に第一党にのし上がり、サルビーニ氏は今にも首相になりそうな勢いだ。また、カトリック教会で教皇フランシスコに反対する保守的な勢力が、伝統の擁護を望み、LGBTに反対し、家父長制的な家族のあり方を支持している。これらの勢力はすべて、宗教や恐怖、憎悪を政治的目標のために利用しているのである。

では、「国家の名の下に」という「大義名分」はどうだろうか? 好例は、ユダヤ教徒であることをイスラエル国民たる要件にする法律を作ったベンヤミン・ネタニヤフ首相だろう。これは、インドのナレンドラ・モディ首相が1億7000万人のムスリムからインド市民権を奪おうとしているやり方と同じだ。ミャンマー政府も100万人以上のロヒンギャにこうした取り扱いをしている。これらの事例では、宗教が、「国家の名の下に」マイノリティや異宗教の弾圧に向かっているのである。

中国は今や、チャイニーズ・ドリーム(そしてまた少数派イスラム教徒ウイグル族の弾圧)のキャンペーンを開始した。これはアメリカン・ドリームを掲げているトランプ政権と同じ戦略である。米国には同盟などなく、対米貿易で稼いでいる国は、それがカナダであれドイツであれ、米国の敵である―この「アメリカ・ファースト」政策が現実に意味するものは「アメリカ・アローン」にほかならない。

つまり、「神の名の下に」と「国家の名の下に」という「大義名分」は、大部分重なりあっている。イタリアの政治・経済学者のリカルド・ペトレラ氏は、この数十年で多くの人々の関心を占めている第三の「大義名分」は「カネの名の下に」というものであり、この20年で汚職がもうひとつの普遍的な対価になりつつあると論じている。

汚職に対して取り組む国際非政府団体「トランスペアレンシー・インターナショナル」の最新の報告書は、汚職がいかに民主主義を弱体化させるかを分析している。汚職との闘いは、大衆向けのアピールとしてポピュリスト勢力が打ち出してくるが、実際に権力の座に就くと、民主的仕組みを弱め、前任者と同じように汚職に手を染めてしまう、と報告書は指摘している。

報告書では、グアテマラからトルコ、米国、ポーランド、ハンガリーに至るさまざまな国を取り上げている。汚職が民主的なシステムに入り込むと、指導者を汚染する。市場が人間に代わって社会の中心を占めるようになり、「貪欲は善」という考えが広まった40年前から経済汚職が増加してきた。汚職は、民間部門はもとより、公的部門全体を覆っている。

汚職が広まっているために民衆の3分の2が警察やその他の行政サービスに信頼を置いていない。汚職があまりに広まっていて、根絶は不可能だと見ているのだ。

この20年、汚職が毎日のように報じられて、こうしたニュースにあまりに慣れきってしまった。本来あってはならないことを「当たり前」と考える習慣が徐々に身についてしまった。これは道徳的指針を私たちが失いつつある兆候だと言えよう。

今日、戦争や貧困は自然に生ずるものかと子どもたちに問うたならば、恐らく子ども達はそうだと答えるだろう。そうした子ども達が大きくなると、汚職は自然に生ずることだと考えるようになるのだろう。

したがって、人間にとっての2つの根本的な環境が危機に立たされていることは明らかだ。短期的に見て、その一つ目は自然環境である。地球の生命が置かれている状況は急激に悪化し、あらゆる予測は出尽くしている。気候変動が(一部の人々が主張のように)自然的な要因であれ、(あらゆる科学者が主張するように)人為的なものであれ、この流れを反転させるチャンスはあと10年しかない。

しかし、問題は、社会・経済・文化を貫く私たちの政治的環境を守り、それを不可逆的な衰退に陥らせないようにするために、どれだけの猶予があるのか、ということだ。

他方で、2019年は大衆デモの年でもあった。ラテンアメリカやアフリカ、アジアや欧州の21カ国で、汚職や社会的不正義、政治機構と市民の間の格差、社会福祉の政治的優先順位が下げられることへの恐怖が、数百万の人々を街頭に駆り立てた。

政党や選挙に背を向けた若い人々が、しばしばこうした大衆デモの前面に立った。彼らは持続可能な世界を求めるキャンペーンの最前線にいる。若いグレタ・トゥーンベリ氏は、世界中の若者を引きつけた。しかし、チリやパリ、バグダッドや香港でそうであったように、運動が過激化しない限り、体制側はなかなか本気で耳を傾けようとはしていないと思われる。

以上の考察から、3つの結論が導き出せる。

第一に、偶然ではなく、私たちの自然環境を守る闘いの敵は、政治的環境の敵でもあるということだ。彼らは、自然環境が破壊されても意に介さない。なぜなら、彼らは、ガス・石油企業や、土地を収奪したい農民(ブラジルやアマゾンの場合)、石炭企業(ポーランドやオーストラリアの場合)と密接に結びついているからだ。彼らは、自らの権力を用いて、政治的環境を捻じ曲げようとしている。

ハンガリーのオルバーン首相は、「非自由民主主義」を推進してきた。ボルソナーロ大統領はさらに一歩踏み込み、軍事独裁の「古き良き時代」について語った。トランプ大統領に始まるこうした指導者ら全員が、国際協力や多国間協定、(国連や欧州連合のような)平和や正義のために国家の自由を制約しようとするあらゆる動きを敵だと見なしている。彼らは、第二次世界大戦の教訓を忘れ、壁を作ることを好む。

第二の結論は、環境が危機に立たされているのと同じ理由で、民主主義も危機に立たされているということだ。ポピュリストたちには、内部的な合意に達しようという能力も意志もない。今日、国際連合を創設したり、人権宣言を採択したりすることが可能だろうか?ちょうど彼らには気候変動と闘おうという意思すらないように、それは恐らく無理だろう。

従って、第三の結論は、まさに私たちが足を踏み入れたばかりの新たな10年で起こることに関わってくる。この10年間は、人類の未来にとって決定的なものになると思われる。わずか数年の間に、現在の環境を守り、いかに共存していくかという、文字通り人類の生存をかけた2つの問題に関して、対処していかねばならないのである。

SDGs logo
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これらを決めるのは有権者だが、ここで一つの問題が出てくる。ファシズムや排外主義、ナショナリズムがこうした問題への解決策になると考えることは、はたして正当なのだろうか? 人間は、他のすべての動物と同じく、失敗から学ぶべきである。私たちは、2度の世界大戦から、これらは問題への答えではなくて、戦争や対立の根源だと学んできたはずである。

そこで最後の考察である。カナダの認知心理学者スティーブン・ピンカー氏が『エコノミスト』誌に書いていたところでは、人間は以前より健康になり、寿命が延び、より安全で豊かに、より自由で知的に、より高い教育を受けるようになったという。こうした傾向は今後も続くことだろう。しかし、人間が進化してきたのは、主に自らの再生産や生存、物質的な成長に専心してきたためであり、知恵や幸福のためではない。

第一の緊急のステップは、進歩と人間性を調和させることだ。私たちには認知能力があり、他の動物と違い、協力したり共感したりする能力がある。啓蒙時代と第二次世界大戦との間には、人類は、科学や民主主義、人権、自由な情報、市場のルール、国際協力のための機関創設といった分野で、重要な進歩を遂げた。ピンカー氏が論じるように、これらは今や私たちの遺伝子に組み込まれており、この流れは止まらない。

私たちは、今後10年以内に、世界がどうなっていくのか、被害が不可逆なものか否か、そして気候変動を止めるうえでの進展が得られたかどうかを知ることになるだろう。…そして、これら全てが人間の遺伝子にまで組み込まれたのか、それとも単に歴史の一ページにしか過ぎなかったのかを、知ることになるだろう。(原文へ)

※著者のロベルト・サビオ博士は、イタリア系アルゼンチン人で、「アザー・ニュース」代表。経済学者、ジャーナリスト、コミュニケーションの専門家、政治評論家、社会的正義・気候正義の活動家で、反新自由主義的なグローバル・ガバナンスを主張している。「欧州平和開発センター」国際関係部門長、INPS-IDN顧問、「国際協力評議会」顧問。インター・プレス・サービス通信社の創設者、名誉総裁。

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若者を核兵器禁止運動の前面に

【ニューヨークIDN=J・ナストラニス】

国連のアントニオ・グテーレス事務総長は2018年5月24日に発表した「軍縮アジェンダ」において、若者が関与できるプラットフォームを構築していく必要性を強調した。そうしたプラットフォームには、それぞれの地域で軍縮や不拡散、軍備管理の問題に熱心に取り組む「世界各地の若者集団」が含まれる。

また、若者や軍縮・不拡散教育、紛争予防といった問題とリンクさせながら持続可能な開発目標(SDGs)の履行を支持する若者グループや地域団体と関わることは、若者の関与を目指すプラットフォームの第2の柱である。

Secretary-General António Guterres launched Youth 2030, the United Nations Youth Strategy, at a high-level Event held at United Nations Headquarters in New York, 24 September 2018. Photo Credit: Mark Garten/UN Photo ​
Secretary-General António Guterres launched Youth 2030, the United Nations Youth Strategy, at a high-level Event held at United Nations Headquarters in New York, 24 September 2018. Photo Credit: Mark Garten/UN Photo ​

そして第3の柱は、国連軍縮局ウィーン支部が若い外交官や青年指導者を対象に知識と能力向上を目的にオンラインで展開している軍縮・不拡散訓練のモジュールである。

2018年9月24日、グテーレス事務総長は、「ユース2030:国連のユース戦略」を発表した。若者は「変革の主体」であり、若い世代は「変化の究極の勢力」であることを強調し、若者の関与を促進する行動を提起したものだ。

グテーレス事務総長は、「ユース大使」を指名し、国連システムと若者達双方と連携して「国連ユース戦略」を策定する任にあたらせている。その目的は、若者のニーズを満たし、彼らの権利を実現し、変革の主体として若者の可能性を伸ばすために、世界・地域・国レベルで行動を促進することにある。

2019年12月12日、国連総会は「若者・軍縮・不拡散」と題する決議を全会一致で採択した。韓国とその他42カ国による共同提出であり、その中には、核保有国も、核兵器に依存する同盟国も、非核兵器国も含まれている。

UN Secretariate Building/ Katsuhiro Asagiri
UN Secretariate Building/ Katsuhiro Asagiri

決議は、軍縮・不拡散分野で、若者を教育し関与させ、エンパワーすることを、各国政府や国連機関、市民社会に求めている。そうしたものとして、決議は、国連と協力し、各国政府の支持を得ながら、若者に焦点を当て若者自身が主導するプログラムを非政府組織が策定する推進力を生みだすことを目指している。

若者を関与させるプラットフォームと国連事務総長が始めた多様なプログラムは、地球温暖化のみならず、史上最も非人道的かつ無差別な兵器で人類の存続そのものを脅かす核兵器の脅威に対する若者の深い懸念を反映したものだ。核兵器は、国際法に違反し、深刻な環境破壊をもたらし、国家や世界の安全を毀損するほか、人間のニーズを満たすために必要な膨大な公的資源を浪費する。

2017年のノーベル平和賞受賞団体である「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)が強調しているように、たった一発の核兵器でも数十万人が死亡する可能性があり、永続的で壊滅的な被害を人間や環境に及ぼす。ロシア・米国・英国・フランス・中国・インド・パキスタン・イスラエル・北朝鮮は合計で約1万4000発の核兵器を保有し、そのほとんどが広島型原爆よりも遥かに強力である。その他31カ国(核兵器をホストしている5カ国と核兵器の保有と使用を認めている核依存国等26カ国)にも問題がある。

若者たちは、国連の核兵器禁止条約への支持と履行を訴えている非政府組織の連合体であるICANの活動の中心を占めている。

ICAN
ICAN

2017年7月7日、世界の国々の圧倒的多数が、正式には「核兵器禁止条約」として知られる画期的な世界的合意に至った。50か国目の批准書が国連事務総長に寄託されてから90日後に発効する。これまでの批准国は34カ国である。

既存の条約であるラテンアメリカ・カリブ海地域非核兵器地帯(トラテロルコ条約)、南太平洋(ラロトンガ条約)、東南アジア(バンコク条約)、アフリカ(ペリンダバ条約)、中央アジア(セメイ条約)、モンゴルは、それぞれのやり方で非核兵器世界に貢献している。

しかし、中東における非核・非大量破壊兵器地帯条約の創設の問題が、国際社会を悩ませている。中東非核・非大量破壊兵器地帯化に関する最初の会議が、ヨルダンのシーマ・バホウス大使が議長を務める形で2019年11月18日から22日にかけてニューヨークの国連本部で開かれ、政治宣言と最終報告が採択された。

国連軍縮局の支援を受けて、国連のカザフスタン代表部は12月9日、この会合の成果に関する「核問題討議フォーラム」を主催した。

中東非核・非大量破壊兵器地帯化に関する会議の第2会期は、2020年11月16日~20日の日程で同じくニューヨークの国連本部で開催されることになっている。

国連本部での公的な活動とは別に、若者たちは非政府組織「アンフォールド・ゼロ」が始めたいくつかの活動にも参加している。

2019年10月24日~30日の「国連軍縮ウィーク」の間、(そのほとんどが若者である)ボランティアらが今後5年間の世界全体の核兵器関連予算である5420億ドルを数えてゆき、その額を象徴的に地球温暖化対策や貧困削減、持続可能な開発目標に再配分するというイベントを行った。

このアクションは「世界未来評議会」が始め、持続可能な未来のために活動する「倫理的な未来主義者と起業家の集まり」である若者中心の団体「平和の加速者たち」によって主催された。

この額は、国連本部を含めニューヨークのさまざまな場所で数え上げられた。具体例を挙げると、ニューヨーク市庁舎の前では「フライデー・フォー・フューチャー」の学生らとニューヨーク市年金基金の投資を核兵器産業から引揚げさせるための活動、核兵器製造企業である「ヤコブズ・エンジニアリング」本社前での活動、ジョン・レノンに敬意を表したストロベリー・フィールズでの活動などが行われた。

このイベントのためにニューヨークに来ることができなかった若者らは、SNSで活動を支持した。

また、「バーゼル平和オフィス」と「核不拡散・軍縮議員連盟」は、「アボリション2000若者ネットワーク」と協力して、「気候・平和・核軍縮に対する若者の声」という新しいプロジェクトを次のような形で展開した。

SDGs Goal No. 13
SDGs Goal No. 13

・「気候・平和・安全:若者の声から政策アクションへ」

2020年1月9日にバーゼルで開かれるイベントで、気候・平和・軍縮運動で活動する欧州の若者たちに議員や専門家らが加わる。

・「ビデオ・プロジェクト:気候・平和・軍縮に対する若者の声」

気候・平和・安全保障・軍縮や、欧州連合や国連、欧州安全協力機構(OSCE)の役割に関する若者の意見を集めた動画。

・「欧州の若者たちによる平和・気候アクション(PACEY)賞」

気候・平和・核軍縮に関する欧州の若者らのプロジェクトや提案に対して5000ユーロを与える新たな賞。(原文へ) 

INPS Japan

This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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【ニューヨークIDN=サントー・D・バネルジー】

2020年を目前にして、人間開発への堅固な基礎を構築する点でかなりの進展があったものの、その他多くの国々と同じくタイでも不平等の問題に直面していると国連が警告している。これはまた、国連開発計画(UNDP)が発行している2019年版人間開発報告書が注目している点でもある。

『所得の先を考え、平均の先と現在の先を見据えて:21世紀の人間開発格差』と題する報告書では、教育と技術、気候変動を中心に、新世代型の格差が広がっており、この2つの大転換を野放しにすれば、社会には産業革命以来、未曽有の規模で「新たな大分岐(=格差の拡大)」が引き起こされる恐れがあると警告している。

しかし、UNDPのアヒム・シュタイナー総裁は「不平等は解決できない問題ではない」と述べている。

Achim Steiner/ UNDP
Achim Steiner/ UNDP

報告書によれば、タイの2018年の人間開発指数は0.765だが、これは高位に入る。189カ国のうち77位にランクされたタイは、途上国の中では2013年から18年にかけて最もランクを上げた国である(12位上昇)。これは、平均余命や就学年数、一人当たりの収入という点で継続的に改善が見られたためであるという。

しかし、不平等を割り引いてみると、タイの人間開発指標は16.9%下がって0.635となる。問題を放置すれば、最貧困層が真っ先に最も影響を被る気候変動や技術へのアクセス問題で拡大傾向にある不平等を是正するのが一層困難になってくる、と報告書は警告している。「だから緊急の行動が必要だ。」

報告書は、「所得の先を考える」「平均の先を見る」「現在の先を見据えて」の3つのステップで不平等の問題を分析する一方で、「これは解決できない問題ではない」として、これに取り組むための一連の政策オプションを提案している。

所得の先を考える

2019年の人間開発指数とその補完指標である「不平等調整済み人間開発指数」は、教育、健康、生活水準の不平等な分配が、各国の前進を妨げていると指摘している。これらの尺度によると、2018年には不平等によって、人間開発の前進の20%が世界全体で損なわれた。報告書は、所得に焦点を当てつつも、その先を見据えた次のような政策を提言している。

・幼年期と生涯を通じた投資:不平等は生れる前から既に始まっており、健康や教育の差を通じて成人するまで蓄積、増幅する可能性がある。例えば、米国の専門職の家庭に生まれた子どもは、生活保護世帯の子どもよりも3倍多い単語に接しており、これが後々成績に跳ね返っている。従って、不平等に対処する政策は、出生時、あるいはそれ以前から、幼児への学習、健康、栄養への投資等の形でスタートさせなければならない。

Image: The ethical application of artificial intelligence is one of the pressing questions of our time. Credit: Information Age
Image: The ethical application of artificial intelligence is one of the pressing questions of our time. Credit: Information Age

・生産性:こうした投資は、各人の生涯を通じ、労働市場で所得を得ている間もその後も続けなければならない。より生産的な労働力を有する国は、労働組合の強化を支援し、適切な最低賃金を設定し、インフォ―マル経済からフォーマル経済への道筋を作り、社会保障に投資し、女性の職場進出を促進する政策を通じ、最富裕層への資産集中度を低下させる傾向にある。しかし、生産性を向上させる政策だけでは不十分だ。雇用者の市場支配力増大は、労働分配率の低下と関連している。市場支配力の不均衡への取り組みでカギを握るのは、独占禁止やその他の政策である。

・公共支出と公正な課税:報告書は、課税だけを切り離して検討することはできず、医療や教育、炭素集約型ライフスタイルに代わる選択肢への公共支出を含めた政策全体の一部として考えるべきだと論じている。国内政策が、世界的な法人税の議論枠組みで考えられることが多くなってきているが、これは新たな国際課税原則によって、公正な取り扱いの確保を支援し、とりわけデジタル化が経済に新たな形の価値をもたらすなかで法人税率の引下げ競争を回避するとともに、脱税を発見、抑止することの重要性を物語っている。

平均の先を見る

平均値はしばしば社会の実態を隠していると言われている。たしかに大枠の話をするのに平均値は役立つが、不平等の問題に対処する実効的政策を策定するにはさらに詳細な情報が必要となる。これは、多次元の貧困に対処し、障害者など最も社会から取り残されている人々のニーズを満たし、ジェンダー平等とエンパワーメントを促進する際に当てはまる。例えば、

・ジェンダー平等:現在の趨勢が続けば、経済的機会に関するジェンダー格差を埋めるために202年もかかると報告書は述べている。虐待にまつわる沈黙は破られつつあるものの、女性が社会進出で直面する「ガラスの天井」は厳然と残っている。それどころか、偏見と反動が生まれている。例えば、2030年までに持続可能な開発目標(SDGs)を速やかに達成すべく、前進と加速すべきまさにその時に、報告書は2019年ジェンダー平等指数の改善が実際に減速していることを伝えている。

報告書が新たに提示した「社会規範指標」を見ると、評価対象となった国の半数で近年、性差別的偏見が増していることがわかる。77カ国の約半数の人々が、政治指導者には女性よりも男性がふさわしいと回答しているほか、企業のトップも男性のほうが良いと感じている回答者も40%を超えている。

タイでもジェンダー不平等が広範にみられる。ジェンダーで調整すると、男性の人間開発指標0.766に比べて女性のそれは0.763となる。これは女性の方が、就学年数が短く、収入も少ないためである。タイの国会議員のうち女性は僅か5.3%しかいない。これは、東アジア・太平洋地区の平均20.3%よりもはるかに低い。

従って、根底にある偏見や社会規範、権力構造に対処する政策がカギを握る。例えば、とりわけ子どもに対するケアの分配のバランスをとる政策が重要であると報告書は指摘している。というのも、ライフサイクルを通じた男女の収入差は、40歳前に生じるからだ。

SDGs Goal No. 5
SDGs Goal No. 5

現在の先を見据えて

報告書は、現在の先を見据え、とりわけ22世紀までの暮らしを決定づけることになる2つの大変革を取り上げながら、将来的に不平等がどのように変化していくかを検討している。

・気候の危機:世界で相次ぐ抗議活動が実証しているように、カーボンプライシングのような気候変動対策に欠かせない政策の管理を誤れば、富裕層よりもエネルギー集約的な商品やサービスに支出する所得の割合が高い貧困層にとって、感覚的にも実際的にも不平等な結果が生じかねない。報告書著者の主張によると、より幅広い社会政策の一環として納税者にカーボンプライシングで得られた収益が還元されれば、そうした政策は、不平等を広げるよりも、縮める可能性が高くなる。

・技術変革:再生可能エネルギーや省エネ、デジタル金融、デジタルヘルス・ソリューションを通じたものを含め、技術は機会を素早く捉え、幅広く共有すれば、将来の格差が過去とまったく異なるものになることを垣間見るきっかけを与えてくれている。技術革命が、根強く残る大きな格差をもとらした歴史的前例が存在する。産業革命は、工業国と一次産品に依存する国々との間に大きな格差を生んだだけでなく、最終的に気候変動に至る生産パターンを築き上げてしまった。

報告書は、来るべき変化は気候問題にとどまらないとしながら、人工知能やデジタル技術によって加速される「新たな格差の拡大」は不可避ではないとしている。人間開発報告書は、「クラウドワーク」に対する公正な報酬を確保する社会保障政策、労働者が新たな職業に適用または転換できるようにするための生涯学習への投資、デジタル活動への課税の仕方に関する国際的コンセンサスを提示しているが、これらはすべて、人間開発において、格差を拡大するのではなく縮小する力として、新しく安全で、安定的なデジタル経済の構築に寄与する方法である。

UNDPのシュタイナー総裁は「この人間開発報告書は、構造的な不平等が、私たちの社会を深く傷つけている様子とその理由を示しています。不平等は、誰かがその隣人と比べてどれだけ稼いでいるかという話ではありません。問題となっているのは、富と権力の不平等な分配、つまり今まさに、人々をデモへと駆り立てている根深い社会・政治規範であり、何も変わらなければ、今後も同じことを引き起こすきっかけとなるでしょう。不平等の真の姿を認識することは対策の第一歩にすぎません。次に控えているのは、それぞれの指導者が下さなければならない選択なのです。」と述べている。(原文へ)

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【マスカットIDN=マニッシュ・ライ】

イスラム教スンニ派(サウジアラビア等)とシーア派(イラン等)間の対立が先鋭化する今日の中東・北アフリカにおいて、宗派対立に与せず、IS(イスラム国)等の過激勢力とも無縁のイバディ派が唯一多数派を占めるオマーンに焦点を当てた記事。イバディ派は主流のイスラム教宗派に先行して興った(預言者ムハンマドの死後20年後の650年頃)という理由で、イスラム教初期の非常に正統的な解釈であると考えられている。2016年世界テロ指数によるとオマーンの評価は中東・北アフリカ地域では唯一のゼロ(=テロのインパクトが皆無)」で、世界で最も安全な国の1つである。(原文へ)

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【モスクワIDN=ケスター・ケン・クロメガー】

ロシアは、今日蔓延している核拡散のリスクと脅威は、核不拡散条約(NPT)の厳格な履行によって除去できると考えている。その際、核不拡散・軍縮・原子力の平和利用という三本柱の間のバランスを尊重し保つことが必要だとしている。

2020年は4月から5月にかけて、ニューヨークの国連本部でNPT再検討会議が開催される。セルゲイ・ラブロフ外相は、来たる再検討会議では「できるだけ対立を避けたい。お互いに話をせず、耳を傾けることすら拒否し、他者が言っていることに関しててんでばらばらに言いたいことを言っていた2015年NPT再検討会議の二の舞は避けなくてはならない。」と考えている。

Sergey Lavrov, Minister of Foreign Affairs for the Russian Federation/ By The Official CTBTO Photostream - 2019 Comprehensive Test-Ban Treaty Article XIV Conference, CC BY 2.
Sergey Lavrov, Minister of Foreign Affairs for the Russian Federation/ By The Official CTBTO Photostream – 2019 Comprehensive Test-Ban Treaty Article XIV Conference, CC BY 2.

「こうした対立こそが、(ロシア政府が見るところの)むしろ危険で同時にただの幻想に過ぎない現象、つまり、核兵器国の安全保障上の利益と戦略的現実を考慮に入れることなく核兵器を放棄することを『強制』しようという傾向が広がる原因であった。こうしたアプローチは、現在は署名開放されている核兵器禁止(核禁)条約の起草が加速されるという結果につながった。」と、ラブロフ外相は2019年11月8日にモスクワで開催された会議で行った演説の中で語った。

ラブロフ外相は「ロシアは核禁条約に加盟する予定はない。」と強調したうえで、「ロシア政府は核兵器のない世界を構築するという目標は共有している。しかし、この目標は、核禁条約が依って立つところの、単独主義的でむしろ傲慢な方法によって達成すべきではない。核兵器の完全廃絶は、NPTに従って、核兵器保有国も含めたすべての国々にとって平等で不可分の安全保障が確保された一般的かつ完全な軍縮という文脈でのみ可能だ。」と語った。

ロシア諸民族友好大学法学部長でロシア外務省科学諮問委員会の委員でもあるアスラン・アバシゼ教授は、IDNの取材に対して、「米国は、ロシアや米国の西側パートナーが数年に及ぶ厳しい協議を経て締結したいくつかの条約から脱退する傾向にある。」と指摘した。また、「残っている戦略的多国間条約のなかで重要なものは、核兵器国間の信頼醸成を主目的とするオープンスカイズ条約だが、残念なことに、米国政府はこの協定からも一方的に離脱する意図をくり返し明らかにしている。」と語った。

同時に、米ロの戦略核兵器を制限している新戦略兵器削減条約(新START)が危機に瀕している。新STARTは2010年4月8日にプラハで締結され、米ロ両国の批准を経て2011年2月5日に発効した。この条約は2021年2月に失効する。

新STARTは、ジョージH.W.ブッシュ大統領とゴルバチョフ大統領が開始した両国の戦略核兵器を検証可能な形で削減するプロセスを継承したもので、重要なのは、1994年に発効した第一次START(1989年失効)以来、米ロ間で合意した初めての検証可能な核軍備管理条約であるという点である。

アバシゼ教授は、「米国政府は、新STARTの延長に関する実質的な協議を求めるロシアの呼びかけに応えていない。そして今日の西側諸国には、かつて1980年代に米ソ軍拡競争に反対した運動のような動きがみられない。」と嘆いた。

Sergey Lavrov, Minister of Foreign Affairs for the Russian Federation/ By The Official CTBTO Photostream - 2019 Comprehensive Test-Ban Treaty Article XIV Conference, CC BY 2.
Sergey Lavrov, Minister of Foreign Affairs for the Russian Federation/ By The Official CTBTO Photostream – 2019 Comprehensive Test-Ban Treaty Article XIV Conference, CC BY 2.

アバシゼ教授はまた、「制御を失った軍拡競争は、近い将来、米国とロシアを含むあらゆる国々に計り知れない苦しみをもたらすのみならず、大量破壊兵器の拡散に対する国際的な規制メカニズムを毀損させ、核使用の大惨事とまではいかないまでも、予測不能で回復不能な結果がもたらされることになる。」と警告した。

同じく深刻に懸念されるのは中距離核戦力(INF)全廃条約の停止である。2018年10月20日、ドナルド・トランプ大統領は、ロシアの条約違反と中国の中距離ミサイル戦力に対する懸念を表明しINF条約から脱退すると表明した。専門家らによると、INF条約に関しては依然として対話の扉は閉ざされていないという。「米国が半年前に条約から離脱の意図を正式に通告したことで、条約の残存有効期間が6か月になった。」と、CIS諸国研究所副代表で軍事評論家のウラジミール・イェフセエフ氏は「ネザビシマヤ・ガゼッタ」紙の取材に対して語った。

「条約はいったん有効期限が切れると、その効力を失う。離脱プロセスはこのように機能するものだ。通常は、国益や国家安全保障上の脅威を持ち出して、条約からの離脱が正当化される。しかし、米国の態度が当初から非建設的であったために、ロシアは米国と妥協点を見出すことができなかった。米国はまず脱退の決定ありきで、あとからその理由を探したのだ。」とイェフセエフ氏は語った。

「条約脱退の動きは、米国防省の専門家による評価に由来している。すなわち、米国は射程5500キロを超える地上発射型の極超音速兵器を開発できない、という評価だ。この評価が出てから、緊張が高められた。」とイェフセエフ氏は指摘した。

2019年5月、ロシアの『イズベスチア』紙は、プーチン大統領のINF履行停止法案が世界に対するシグナルとして発せられたと報じた。この中でロシア国会の議員らは同紙の取材に対して「ロシアは、INF全廃条約の履行を停止するという法案を出すが、いかなる時でも条約の履行を再開する権利を保留している。」と語っていた。

専門家によれば、プーチン大統領が5月30日に提出した法案は、ロシアは現状を維持する用意があるという国際社会に対するシグナルだったが、米国の動きに応じてやり返すことで自らの安全を完全に確保する心づもりでもあった。

ロシア下院国際問題委員会のアレクセイ・チェパ副委員長は、「これは米国の条約離脱に対する一つの報復措置だと述べた。もし米国が望むなら、ロシアは条約に復帰する権利を保留している。残念なことに、米国は欧州での緊張を煽り、NATOが軍事支出を増やすことに関心があるようだ。」と語った。

「加えて、米国には企業や政治家から成る強力なロビー集団がある。彼らは、条約の履行停止を利用して兵器生産に励み、より多くの資金を獲得しようとしている。これが国際社会で更なる緊張を生むかもしれない。」

「INF条約の履行が停止される中、NATO諸国間の深刻な対立が出てくるかもしれない。ポーランドやバルト三国のような米国の外交政策に忠実な支持国が、米国製核兵器の自国内配備を容認する可能性がある一方、他の欧州諸国はより慎重なアプローチを採り、米国の『足場』になることに同意しないだろう。」とチェパ副委員長は語った。

プリマコフ国際・世界経済研究所のセルゲイ・マラシェンコフ上級研究員はIDNの取材に対して、「かつてINF条約で禁止されていた米国のミサイルは、欧州ではNATO諸国に、アジアでは、米軍基地がある日本や韓国に配備可能だ。これらの中距離・短距離ミサイルは、米国から直接発射することもできる。例えば、ロシアをアラスカから隔てているベーリング海峡は、わずか幅86キロしかない。」と語った。

1987年12月にロナルド・レーガン大統領と共にINF条約に調印したミハイル・ゴルバチョフ元ソ連大統領は、INF失効に伴って世界政治に混乱と予測不能性がもたらされたと強い警戒感を示した。ゴルバチョフ氏は経済紙「ベドモスティ」に寄稿した記事の中で、「米国のINF条約撤退が状況を反転させた結果、私たちが冷戦に終止符を打って以来成し遂げてきたあらゆるものが、危機に晒されている。」と記している。

Mikhail Gorbachev in 2010/ By veni markovski – Flickr, CC BY 2.0

「米国は、自らの立場を正当化するために、中国やイラン、北朝鮮などその他の国々が保有する中距離ミサイルに目を向けさせようとしている。しかし、米国とロシアが依然として世界の核兵器の9割を保有していることから、このアプローチは説得力を持たないようだ。核保有に関して、米ロ両国は依然として世界の超大国なのだ。」

「他国の核戦力は、米ロ両国の規模と比較すれば10分の1か15分の1に過ぎない。明らかに、核兵器削減のプロセスが続いていたならば、英国やフランス、中国といった他の国々もどこかの時点でそれに加わっていたことだろう。」とゴルバチョフ氏は結論付けた。

ゴルバチョフ氏の見方では、既存の軍備削減協定に関する米国政府の真意は異なったところにあるという。ゴルバチョフ氏は、「米国は軍備領域におけるあらゆる制約から自らを解き放ち、完全なる軍事的支配を達成しようとしている。しかし、一国による覇権は今日の世界では不可能だ。」と強調した。

ゴルバチョフ氏は、米議会の議員らに対して、核兵器問題についてロシアとの対話を始めるよう呼びかけた。「残念ながら、近年米国内で生じている敵対的な国内政治状況により、核兵器の問題を含むあらゆる領域の問題に関する米ロ両国間の対話が阻害されている。党派間の違いを乗り越えて、真剣な対話を始めるべき時だ。」とゴルバチョフ氏は語った。

「政治家は、現状を分析し、自らの行動が新たな軍拡競争を起こさないようにしなくてはならない。ロシアにはその準備があると、私は自信を持って言える。」とゴルバチョフ氏は断言した。(原文へ)

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スリランカ出身の世界的外交官ジャヤンタ・ダナパラ

【コロンボIDN=HMGSパリハカラ】

スリランカ出身の外交官・国際公務員として、紛争調停・国際交渉の歴史に巨大な足跡を残したジャヤンタ・ダナパラ氏(INPSとSGIが推進している核廃絶メディアプロジェクトのアドバイザー、コラムニストでもある)の半世紀に及ぶ歩みをまとめた新書「Sri Lankan Son and Global Diplomat」の書評。(原文へ)

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再び非大量破壊兵器地帯への軌道に乗る中東諸国(セルジオ・ドゥアルテ元国連軍縮問題担当上級代表、パグウォッシュ会議議長)

【ニューヨークIDN=セルジオ・ドゥアルテ】

中東地域における非核兵器地帯の確立は、国連の軍備管理・不拡散分野において最も困難な取り組みの一つである。この数十年間、他のいくつかの地域では、平和と安全を大いに高める非核兵器地帯を確立する条約の交渉・採択に成功してきた。

核兵器は、まずは、南極や宇宙、海底といった無居住地において禁止された。1967年、ラテンアメリカ・カリブ海地域は、人口居住地域における核兵器非核地帯確立のパイオニアとなり(トラテロルコ条約)、これに、南太平洋(ラロトンガ条約)、東南アジア(バンコク条約)、アフリカ(ペリンダバ条約)、中央アジア(セメイ条約)、さらにモンゴルが加わっている。

そのほとんどが南半球にある114カ国が、自らの領土において核兵器を認めず、その他関連義務を受け入れている。これらの国々は、背景の歴史・政治・経済・文化や直面する安全保障環境は異なるが、核兵器やその他の大量破壊兵器を保有していないという重要な一点では少なくとも共通している。

中東地域の状況は異なるが、域内の国々は長年にわたって、これを現実にすべく努力を続けてきた。

中東非核兵器地帯創設に関する最初の決議は、イランとエジプトが1974年に提案したもので、その後、昨年に至るまで、国連総会で無投票で毎年採択されている。安保理決議の中にはこの提案を認めたものもある。同様に、1991年以来、国際原子力機関(IAEA)総会が、中東のすべての核施設へのフルスコープ保障措置の適用は「非核兵器地帯確立への必要なステップ」であるとする決議を毎年採択している。

1988年、国連は中東非核兵器地帯の推進につながる措置に関する研究を行い、主に信頼醸成措置の形でこの件に関する勧告を出した。1989年、IAEAはこの目標に向けたステップとして、中東地域の核施設に適用可能な保障措置システムの形態に関する研究を行った。

核不拡散条約(NPT)寄託国であるロシア、英国及び米国が共同提案した決議が一つの突破口となった。中東地域に、効果的に検証可能な核兵器などの大量破壊兵器のない地帯(非大量破壊兵器地帯)の創設を目指す決議案が採択されたのである。

1995年のNPT再検討・延長会議においてこの「中東に関する決議」は、他の文書(「条約の運用検討プロセスの強化」「核不拡散と核軍縮の原則と目標」)とパッケージで、NPTの無期限延長が投票によらない無評決で決定された。しかし、中東諸国間の厳しい対立と、域外諸国も含めた脅威認識や安全保障上の懸念を巡る立場の相違から、これまで実質的な進展はみられていない。

2000年、NPT再検討会議は、中東非大量破壊兵器地帯によって、世界及び中東地域の平和と安全は高まり、不拡散レジームの強化につながり、核軍縮という目標の達成に向けて寄与するところが大きいとの認識を再確認した。同会議は、進展の少なさに遺憾の意を示し、1995年中東決議の完全履行を5つの核兵器国が改めて公約したことに留意した。

UN Secretariate Building/ Katsuhiro Asagiri
UN Secretariate Building/ Katsuhiro Asagiri

国連事務総長と1995年中東決議の共同提出国が主催して、中東非大量破壊兵器地帯の創設に関する会議を核兵器国からの全面的な支援と関与を得て2012年に開催するという了解を2010年NPT再検討会議が是認したことで、出口が開かれたかに見えた。

国連事務総長と1995年中東決議の共同提出国は、中東諸国の協力を得て、同決議の履行を支援する任務を与えられたファシリテーターを任命することになっていた。ファシリテーターは、2015年NPT再検討会議とその準備委員会会合に報告することになっていた。さらに、2012年会議のホスト国が指名されることになっていた。

これに従って、国連の潘基文事務総長は1995年中東決議の3つの共同提出国及びその他の関連各国と協議を行い、フィンランドの外交官ヤッコ・ヤーラバ氏をファシリテーターに指名した。その後数年にわたってヤーラバ氏は、イスラエルやその他の中東諸国と協議を行ったが、進展ははかばかしくなかった。

2015年NPT再検討会議では新たな努力がなされたが、2016年までに中東非大量破壊兵器地帯の創設に関する会議を開くとの議長提案を米国・英国・カナダが受け入れなかった。これらの国々は、この提案は「コンセンサスと平等」の原則に則っておらず、「実現しえない条件」と「恣意的な期限」を含んでいると主張した。こうして2015年の再検討会議は実質的な最終文書の採択に失敗した。

中東諸国には失望が広がり、2018年会期の国連総会では別の戦略が採られた。国連総会では、NPT再検討会議のような全会一致原則とは異なり、多数決で決定がなされる。そこでエジプトが、中東非大量破壊兵器地帯の創設に関する会議を、2019年と、同非大量破壊兵器地帯が達成されるまで毎年招集することを国連事務総長に義務づける決議を、国連総会第一委員会に提出したのである。

決議は、賛成88、反対4(イスラエル・リベリア・ミクロネシア・米国)、棄権75で採択された。

これに従って、アントニオ・グテーレス事務総長は中東非核・非大量破壊兵器地帯化に関する会議を招集した。この第一会期は、ヨルダンのシーマ・バホウス大使が議長を務める形で、今年11月18日から22日にかけてニューヨークの国連本部で開かれた。

中東地域からは23カ国が参加した。NPT上の5つの核兵器国はオブザーバーとして招待された。中国・フランス・ロシア・英国は招待を受諾した。参加者らは、手続規則に関する合意がなされるまでの間、手続き的・実質的内容について全会一致で議論をすすめることで合意した。手続規則は、会期の間に協議が継続することになっている。

Conference on the Establishment of a Middle East Zone Free of Nuclear Weapons and Other Weapons of Mass Destruction by UNODA
Conference on the Establishment of a Middle East Zone Free of Nuclear Weapons and Other Weapons of Mass Destruction by UNODA

テーマ別討論は、原則と目標、核兵器に関する一般的義務、他の大量破壊兵器に関する一般的義務、平和利用、国際協力、制度整備、その他の側面について話し合いがなされた。来年の第二会期に先立ち、既存の非核兵器地帯の加盟国の代表が招待され、これまでの経験と教訓を共有することになっている。

会議が採択した政治宣言は、核兵器とその他の大量破壊兵器のない地帯を検証可能な形で創設出来れば、中東地域及び国際の平和と安全に寄与する部分が大きいという参加各国の見解について述べ、中東諸国の自由意思による取り決めを基礎とした法的拘束力のある条約の策定を、オープンかつ包摂的に追求する意図を確認した。

そうした考えから、同会議は、この政治宣言を支持しプロセスに参加するよう、すべての国々に呼びかけた。参加諸国はまた、政治宣言と同会議の成果に対するフォローアップを行うことを公約した。次の会期は、ニューヨークの国連本部で2020年11月16日から20日にかけて開かれる。

中東非大量破壊兵器地帯の実現を目指した国際社会のこれまでの取り組みの歴史と、今日の中東地域の政治状況や緊張状態を考慮に入れるならば、今回の会議の最終成果は、まずまずの成功と言って差し支えないだろう。なぜなら、短期的な目標は、後に進展をもたらしうるプロセスを確立することにあると言えるからだ。

Sergio Duarte
Sergio Duarte

会議にイスラエルと米国が参加しなかったことは織り込み済みだが、会議が予定通り開かれることを妨げるものではなかった。両国が近い将来に立場を変えないことは明らかだろう。中東地域の国々がこの目的の下に団結し、落とし穴を避け得たことは特筆に値する。

しかし、安全保障環境に関する多様な見方を今後のプロセスのなかで調整していかなければならない。今後の会期のなかで、意思決定方法が引き続き主要な議論の対象になり続けることだろう。一部の国々が、他の方法よりも全会一致方式が望ましいとしているからだ。採られるべき次のステップに関する会期間の議論が重要になってくる。

中東諸国や関連主体、わけても核兵器国の強い意志と外交的スキル、創造性、とりわけ政治的意志が、中東を核兵器とその他の大量破壊兵器のない地帯にする道筋を進むうえで必要となる。国際社会は、この取り組みに対して全面的に支援すべきだ。(原文へ)

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オーストラリアの「核をやめろ」運動、年金基金を標的に

【シドニーIDN=ニーナ・バンダリ】

年金基金に対して投資先から核兵器製造企業を外すように要請する運動がオーストラリアで始まった。これは国連の核兵器禁止(核禁)条約の精神に沿ったものである。同条約は、50カ国目が批准してから90日で発効することになっているが、現在、批准を終えているのは33カ国で、あと17カ国が批准することで国際法として効力を持つようになる。

戦争防止医師会議(MAPW)と核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)の共同イニシアチブである「核をやめろ」キャンペーンは、オーストラリアのプロジェクトで、核兵器に対する投資の実態を記録する年次報告書『核兵器に投資するな』を発行している団体「パックス」と共同で実施している。

「核をやめろ」のマーガレット・ペリル代表は、「このキャンペーンは、投資額2兆ドル超と、世界最大規模の年金基金のひとつになっているオーストラリアの年金産業を標的にしたものです。」と語った。

Quit Nukes
Quit Nukes

世界規模の市場調査会社「イプソス」が今年8月に行った世論調査によると、オーストラリア国民の実に69%が、年金基金は核兵器の生産や配備を支援する企業に投資するべきではないと考えていることがわかった。しかし、「パックス」の評価によれば、約190の年金基金のうち、非核兵器の方針を貫いているのは「オーストラリアン・エシカル」と「フューチャー・スーパー」の2基金だけであった。

「フューチャー・スーパー」は、核エネルギーやウラン採掘、核兵器や核関連の産業から利益を得る企業に投資しないと公約している。その創設者であるサイモン・シェイク氏はIDNの取材に対して、「私たちは、壊滅的な核爆発による放射性降下物も含めて、社会や環境に対するリスクを抑えるための長期的な視点で考えています。自分のお金がどう投資されるのか、自分たちと次世代にとってどのような将来を作るのかということに関して、全てのオーストラリア人に選択肢が与えられるべきです。」と語った。

キャンペーンでは、核兵器のリスクについて年金基金に情報を提供し、核兵器から脱却した投資を促すとともに、核兵器生産に関連した企業をポートフォリオから外した投資を行うよう求めている。

核兵器への投資を拒絶していることで有名な「オーストラリアン・エシカル」の倫理研究部門長であるサイード・スチュアート・パルマー氏は、「核戦争は、地球上の生命の存在そのものを脅かす危険性を孕んでおり、核技術や核物質を核兵器製造のために悪用する危険は、私たちが原子力発電所に対しても投資しない理由の一つになっています。」と語った。

「核をやめろ」キャンペーンは、次の18企業を投資先から排除することを訴えている。

イーコム(米)、アエロジェット・ロケットダイン(米)、エアバス(オランダ)、BAEシステムズ(英)、ベクテル(米)、ボーイング(米)、BWXテクノロジーズ(米)、フルオール(米)、ジェネラル・ダイナミックス(米)、ハニウェル・インターナショナル(米)、ハンチントン・インガルス・インダストリーズ(米)、ヤコブズ・エンジニアリング(米)、ラーセン&トゥブロ(インド)、ロッキード・マーチン(米)、ノースロップ・グラマン(米)、サフラン(仏)、セルコ(英)、サルズ(仏)

ICAN豪州支部のジェム・ロムルド代表はIDNの取材に対して、「世界の圧倒的多数の人々が核兵器の廃絶を望んでおり、彼らの銀行口座やスーパーファンドをこの目的促進のために使えることを認識しています。」「毎年1000億ドルが核兵器産業に投資されているのだから、核兵器製造企業に対する資金を減らし、彼らに社会的認知を与えないことは、核禁条約を適用する強力な方法となります。」と語った。

国際的にみれば、金融機関は、核禁条約に参加していない国における核兵器製造企業を排除している。同条約は、ひとたび発効すれば、化学兵器や生物兵器、地雷、クラスター弾に関する条約がそうであったように、核兵器を違法化することになる。

「核禁条約はまた、金融も含め、核兵器生産の支援も禁じています。オランダの主要な年金基金『ABP』や、ノルウェーのソブリン・ファンドなどのいくつかの金融機関が核兵器製造企業から投資を引き上げる基礎と動機を同条約はすでに与えています。」とロムルド代表は付け加えた。

核兵器への投資はまた、国連が支持する「責任ある投資の原則」(UNPRI)にも反している。UNPRIの署名者になった投資家やアドバイザーに対しては「彼らは当然に国連の持続可能な開発目標(SDGs)に従うという期待があります。」SDGの第16目標は、とりわけ平和な社会について掲げています。従って、核兵器への投資はSDG第16目標に反することになるのです。」と、ペリル氏はIDNの取材に対して語った。

SDGs Goal No. 16
SDGs Goal No. 16

2018年11月に「イプソス」が行った調査によると、オーストラリア国民の実に79%が核兵器禁止条約の署名・批准を望んでいることは注目に値する。オーストラリアは核兵器を保有していないが、米国との同盟の下で拡大核抑止に依存しており、これが同国の国家安全保障にとって鍵を握ると考えられている。

オーストラリア国立大学戦略・防衛研究センターのシュテファン・フリューリンク博士はIDNの取材に対して、「オーストラリアはインド・太平洋地域の安全保障秩序に米国の核兵器がもたらす安定化作用に価値を見出しています。米国の拡大抑止の合法性を認めず、ついては米国との同盟を非合法化することで、国際の安全の主要な柱を損なうような核禁条約に署名すべきではありません。」と語った。

「米国の他の同盟の場合とは異なり、米豪同盟において米国の核兵器はさほど大きな役割をもってこなかった。オーストラリアが米国のアジアにおける抑止力を支えるために政治面とともに戦略面で何ができるかという問題が、過去にもまして将来的に重要になってくるであろう。」

つまり、オーストラリアは、アジアの戦略的秩序における安定化要素だという理由で、米国の拡大核抑止に重要性を見出しているということになるのだろうか。「パシフィック・フォーラム」(本拠ホノルル)の副代表で核政策研究部門の責任者を務めるデイビッド・サントロ氏はIDNの取材に対して、「オーストラリアは、米国の拡大核抑止に対する貢献拡大も含めて、インド太平洋地域における抑止力と防衛力を強化する必要があると認識しています。中国の再勃興に見られるような、この地域の安全保障環境が急速に変化するなかで、そうした取り組みは安定化要因になると見ているのです。しかし、オーストラリアは、抑止や防衛の面でより大きな負担を負うことに伴うリスクもよく理解しています。こうした問題に関して、とりわけ核兵器の側面に関するアンザス条約(オーストラリア、ニュージーランド、米国による安全保障条約)内部での対話が必要です。」と語った。

前出のフリューリンク氏、サントロ氏に加え、アンドリュー・オニール教授は、11月15日にシドニー大学米国研究センターが発表した報告書「協力の強化:核抑止と米豪同盟」において、米国の拡大核抑止に対するオーストラリアの関心は「主に『見捨てられ』の懸念よりも『巻き込まれ』に関するもの」であり、「米豪同盟は、抑止力を核兵器に依存する程度を低下させるために、まずは通常兵器による長距離打撃能力の面での協力を検討し、万一オーストラリアの安全保障環境が悪化する場合は、極限の状態に限り核兵器を含む協力の拡大をはかる可能性があるというシグナルを送ることが必要だ」と論じている。

ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によると、2019年初めの時点で、9カ国(米国・ロシア・英国・フランス・中国・インド・パキスタン・イスラエル・北朝鮮)が合計で約1万3865発の核兵器を保有している。うち、3750発が作戦使用可能な状態にあり、約2000発が高度な警戒態勢下に置かれている。(原文へ)

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