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|メキシコ|無視されてきたマイノリティに手を差し伸べるサパティスタ

【メキシコシティIPS=ディエゴ・セバージョス】
 
メキシコの「サパティスタ民族解放軍」(EZLN)が、今年1月から、「もうひとつのキャンペーン」をうたい文句に半年の予定で全国行脚に出ている。7月2日に行なわれる大統領選挙に対抗するためだ。

サパティスタの存在意義は、社会の中で無視されてきた人々の問題を拾い上げるところにある。今回6日間の予定で首都のメキシコシティに訪れたサパティスタのマルコス副司令官は、性的マイノリティの人々が集まる集会で演説を行い、「違うものであろうとする闘いは、生命への闘いでもある」と語りかけた。集会は200名という小規模のものだったが、同性愛者・異性装者・性労働者・先住民など多様な人々が集まった。

サパティスタは、1994年に登場して以降、国内的にも国際的にも大きな注目を集め、彼らの拠点であるチアパス州のジャングルの中で大規模な国際集会を開いたりしていた。

しかし、2000年に現在のビセンテ・フォックス大統領が就任して以降、先住民たちの希望が一定程度聞き入れられるようになり、サパティスタへの関心は少なからず弱まった。現在、サパティスタの集会などに集まる人々の数は減っている。

ただ、メキシコの中でも最も貧しい地域であるチアパスの状況は以前とそれほど変わっていない。先住民社会の自決権と天然資源の集団的利用という、サパティスタと前エルネスト・セディージョ政権(1994~2000)との間の約束は果たされないままだ。

しかし、前出の集会に参加した大学生ディエゴ・マルチネスさんは言う。「人数が少ないように見えたってかまわないんだ。本当は私たちの仲間はたくさんいるのだから。マルコスは一人じゃないし、サパティスタは孤立してなんかいない」。

近年のサパティスタの取り組みについて報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan 

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シンガポールとラオス、民主主義の欠如では同類

【バンコクIPS=マルワーン・マカン・マルカール

シンガポールは東南アジアでもっとも裕福な国かもしれないが、その選挙制度は共産主義一党独裁の貧しい国ラオスにも匹敵する。

5月6日の投票日に向け選挙戦が開始されたシンガポール議会(定数84)の総選挙だが、野党側が定数の半分を上回る立候補者の擁立を果たし、過去の選挙戦とは異なり投票日前の与党・人民行動党(PAP)の勝利宣言を阻むに至った。残りの37議席はPAP候補が当選を果たしている。

しかし、野党側の選挙戦を阻もうとするPAPの試みはこれまでと変わりない。野党側の口を封じ、選挙前の議論を阻止しようというリー・シェンロン現政権の試みは、4月30日に実施されたラオスの国民議会選挙の実情とその精神・意図に何ら違いは見られない。

 国際的なメディア監視機関である国境なき記者団(RSF)は、表現の自由の権利に関する昨年の調査で、シンガポールを167カ国中140位、ラオスを155位にランクしている。RSFの東南アジア代表フィリップ・ラトゥール氏は「新技術の活用では先進国のシンガポールだが、サイバースペースにおける表現の自由では未だ中世だ。選挙戦ではブロガーもウェブマネジャーも特定の候補者を支援する権利が認められていない。この点ラオスやベトナム並だ」とIPSの取材に応えて語っている。

その一例は野党シンガポール民主党(SDP)とチー・スンジュアン党首である。シンガポール政府はSDPによるPAP批判を禁止、党機関紙や公衆の前での意見表明すら厳しく取り締まっている。反対意見を封じる戦略は、リー・クァンユー初代首相、ゴー・チョクトン前首相の方針を追随するものである。シンガポールに本拠を置くNGOシンク・センターのシナパン・サミドライ会長は「野党側は選挙期間中、ブログ、インターネット、ポッドキャストなど電子メディアを一切利用できない」とIPSの電話取材に答えている。

初の総選挙を迎えるシェンロン首相は、あくまでも公正な選挙制度だと主張しているが、域内民主活動家の団体Alliance for Reform and Democracy in Asiaも、昨年の「アジア民主主義指標(ADI)」でアジア16カ国中シンガポールをビルマに次いで最下位としている。「きわめて抑圧的社会」とADIで評価されているシンガポールの総選挙について報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan

|国際女性デー|忘れられているボスニアの性的暴行被害者

【ベオグラードIPS=ヴェスナ・ペリッチ・ジモニッチ

産まれたときは、娘の姿など見たくもなかった・・・でも出産の翌日娘をこの胸に抱いたときこの世で唯一かけがいのない美しい存在であると実感し、手元に置き育ててきた」 

サラエボの若き映画監督ヤスミラ・ジュバニッチの心揺さぶる映画『グラバビツァ(Grbavica)』の中で、ボスニア人ウエートレスのエマは13歳の反抗期の娘サラを手元に置いて育てた経緯をこのように話す。映画は、今年のベルリン国際映画祭で最優秀映画に与えられる金熊賞に輝いた。

 医学生であったエマは、1992年、ボスニア紛争最中のサラエボのグルバビツァ地区にある自宅でセルビア人兵士に暴行され妊娠した。しかしエマは、娘のサラには、父親はボスニア人イスラム教徒で、殉教者「シャヒード」としてサラエボを守って亡くなったと話していた。 

しかし、サラが学校の遠足代免除のために父親の死亡証明書が必要となった時、恐るべき真実が明らかとなる。母子は打ちのめされ、言い争い、しかし暗い秘密に苦悩しながらも絆を取り戻す。 

だが、ボスニアの現実は映画のようにハッピーエンドではない。2月18日ベルリン映画祭最高賞を受賞したジュバニッチ監督は「ボスニアの性的暴行の被害者の試練は決して終わっていない」とベルリンの聴衆に語った。 

集団レイプの被害者は、家族からも友人からも疎んじられる。被害者のほとんどは、事実が知られると、白い目で見られ、社会から疎外される。 

レイプで生まれた子どもは、大半がボスニアや隣国のクロアチアの養護施設に送られる。まれであるが養子に迎えられる子もある。だがどの子も、両親について知らずに大きくなる。 

ボスニアのトゥーズラやゼニツァ、クロアチアのウラディミル・ナゾルやGoljakにある養護施設では、子どもたちの出自や居所を追跡していない。 

ジュバニッチ監督は、3月6日夜、セルビアの首都ベオグラードの地元映画祭の上映会で「今回のベオグラードでの上映が悪循環の終わりの始まりとなることを願っている。このシナリオの土台は、実際のところ、この地で書かれたのだから」と聴衆に語った。 

ボスニアのセルビア人勢力はベオグラードの支援を受け、イスラム教徒を中心とするボスニア人による独立の動きに抵抗する3年に及ぶ内戦の中で、イスラム教徒の女性に対し組織的な性的暴行を行なったと告発されてきた。セルビアではこの問題はタブー視され、そのようなことは起こらなかったと広く否定されている。 

「ボスニアの戦争の真実を知るため、率直に解明していく必要のある問題だ」と、人権活動家Natasa KandicはIPSの取材に応えて述べ、「数字の操作は真相解明に役立たない」と指摘している。 

1993年の戦時中のボスニア政府の文書では、性的暴行被害者は2万から5万人とされている。 

性的暴行は「人間としてもっとも恥ずべき退廃であり、屈辱的暴力行為であり、セルビア人の侵略政策」であると記されている。 

性的暴行被害者について、EU主導の委員会や国連(UN)報告書などの国際的な報告書は、大きく異なる数字を挙げている。EUは1993年に2万人と報告している一方で、1994年の国連報告書は150人未満としている。 

この国連報告書の数字は、ボスニア紛争における残虐行為を否定するセルビア人民族主義者によってしばしば引用されている。 

旧ユーゴ国際刑事裁判所(ICTY)は、イスラム教徒女性の収容所を設けていたボスニア東部の町フォツァおける性的暴行に対する罪で、ドラゴリュブ・クナラッチ、ラドミール・コヴァッチ、ゾラン・ブコヴィッチの3人に合計60年の禁固刑の判決を言い渡した。 

しかし年月とともに、問題は脇に追いやられ、数字は選択的に引用されるものの、被害者は完全に忘れられている。 

レイプ被害者の恐怖の生活について、Seada Vranicが『Breaking the Walls of Silence(沈黙の壁を破る)』を著わしている。Vranicは、レイプは10件に1件の割合でしか報告されていないと推論している。 

また、ボスニア中部のNGO、Medica Zenicaは、レイプ被害者の1~4%が妊娠したと1997年5月の調査報告書で述べている。 

Sarajevo Society for Endangered Peopleの責任者Fadila Memisevicは、現地メディアの取材に応えて「女性たちは2度にわたって被害者となっている。レイプされた時と忘れ去られた時」と語っている。 

ボスニアのメディアがこの話題を取り上げたのも、映画『グルバビツァ』がベルリン国際映画祭で受賞してからのことだ。 

「問題は今(映画以降)一気に注目を集めるだろう」と、クロアチアの新聞Vecernji Listの取材に応えたMemisevicは言い、「毎日レイプ被害者や子どもと面談しているが、子どもに真実を話している母親はいない。ここに社会が果たすべき役割があるが、ボスニア社会は明らかにその準備ができていない」と述べている。 

Memisevicは、問題にどう対処すればよいか、母親にアドバイスできる心理学者のチームもいないと指摘する。 

「労働社会福祉省は、そうした生まれの子どもが何人いるかも把握しておらず、母子とも社会ケアの対象とは考えていない」とMemisevicは言う。「昨年そうした子どものリストを作成しようとしたが、断念するに至っている」 

サラエボの確かな情報筋がIPSに語ったところによれば、昨年7月国連児童基金(ユニセフ)は、ボスニアでの性的暴行によって産まれた子どもたちに関する報告書を依頼したが、理由は不明のまま出版されなかった。 

結局のところ、戦争中の残虐行為は広く知られるようになったものの、性的暴行の被害者の多くは孤独だ。国に捨てられ、その経験に傷ついているだけでなく、貧困に喘いでいる。 

社会から疎外され、多くの場合夫に見捨てられ、その多くは働き口も見つからない。被害者は、悪夢、肉体的損傷、精神的障害などの苦悩に苦しみ、そうした苦難に対する補償を得ている者はほんの一握りしかいない。 

「現実の世界では、『グラバビツァ』のようなハッピーエンドはない」とMemisevicは言った。(原文へ)

翻訳=IPS Japan 浅霧勝浩 

|ジンバブエ|耕すべきか、耕さざるべきか

【ヨハネスブルクIPS=モイガ・ヌドゥル】

ジンバブエ政府が強制収用した土地での農業再開を白人にも認めたことがさまざまな反響を呼んでいる。「人殺しをし、農場から追い出し、国の経済を破たんさせてから、われわれに手伝えという」と批判的な白人農民もいるが、白人が多数を占める商業農家連盟(CFU)のD.テイラー-フリーム代表は問題解決につながる可能性があると考えている。

土地問題担当のフローラ・ブカ大臣は白人を含むジンバブエ人すべてが土地を申し込むことができ、これまでに500人の白人農民から申し込みがあったことを明らかにした。NGOの「農業の公正」によると、2005年のジンバブエ国内の白人商業農家は500以下で、2000年末の4,300から大幅に減った。2000年の議会選挙で与党ジンバブエ・アフリカ国民同盟・愛国戦線(ZANU-PF)が苦戦したときに農場襲撃は始まり、土地問題を選挙に利用した政府主導の襲撃だと非難が起きた。

 土地を奪われた多くのジンバブエ農民は近隣諸国へ逃れた。ジンバブエのジョセフ・メイド農業大臣は改革政策の失敗による土地の再提供を否定しているが、「農業の公正」は没収した土地の利用はずさんで、与党高官の所有となった土地もあると報告している。

かつては南部アフリカの穀倉地帯だったジンバブエが、現在食糧不足に直面している。国連の世界食糧計画(WFP)によると1,300万の国民のうち400万人以上が食糧支援を求めている。米国が支援する「飢饉早期警戒ネットワーク」の2006年報告書は、気候に問題はないが収穫量の低下により食糧危機が続くとしている。さらにジンバブエのHIV感染率が20%となっていることも事態を悪化させている。

土地の没収がジンバブエの経済を停滞させ、燃料、主要農作物、外国為替の不足を招き、ジンバブエでは3桁のインフレが普通である。ジンバブエ共同市民社会組織のダニエル・モロケル代表は、「政府は過ちを認めようとしている」という。だが白人農民には土地を手にせず政府打倒を目指すべきという声もある。白人の手に農地が戻ってもジンバブエ経済を好転させるには時間がかかるだろう。農民たちは政府を信用していない。白人の土地の没収と貧しい黒人への分配は近隣諸国でも起きている。

ジンバブエの土地問題について報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩

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|ジンバブエ|通信社が閉鎖される中、自由も消えていく

パレスチナ・イスラエルの和平交渉を望む女性たち

【国連IPS=ミスレ・サンドラサグラ】

ニューヨークに集まったパレスチナとイスラエルの女性リーダーたちが、パレスチナ紛争の和平交渉開始に向けて国際社会の関与を訴える声明を出した。

今回集まったのは、「公正で持続可能なパレスチナ・イスラエルの平和を求める国際女性委員会」のメンバーたち。同団体は、2005年7月にトルコのイスタンブールで初めての会議を持ち、紛争解決と持続的平和に向けた女性の貢献の重要性をうたった国連安保理決議1325の実施を誓った。

 彼女たちは、今年1月にハマスがパレスチナ議会選挙で勝ったことにより、国際社会が中東の和平プロセスから距離を置こうとしている事態に懸念を表明している。

イスラエル議会の元副議長ナオミ・チャザン氏は、「交渉のテーブルがないことが現在の問題だ」という。今年3月にヘブライ大学と「パレスチナ政策・調査研究センター」が合同で行った世論調査によれば、イスラエル・パレスチナ双方の市民の大部分が、一方的な行動よりも交渉を通じた紛争解決を望んでいるとの結果が出た。

イスラエル議会の現副議長コールット・アヴィタル氏は、イスラエルの国会議員の大部分が、「2ヶ国」という解決を志向するのは1967年以来始めてだと強調した[イスラエル側がパレスチナ側を主権国家として承認することを意味する:IPSJ]。

「発展を目指すパレスチナ働く女性の会」のアマル・クレイシェー代表は、「ハマスは一枚岩ではない。広く対話を進めるために応援すべき穏健な意見がハマスの中にはある」と語る。また、パレスチナの「女性法律扶助・相談センター」のマハ・アブ-ダエイ・シャマス氏もいう。「ハマスが交渉入りに同意すれば、ファタハもいやとはいえなくなる。そうすれば、両国の政府と野党がいずれも賛成した初めての交渉ということになる」。

パレスチナ・イスラエルの和平交渉入りを訴える女性たちの活動について報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=山口響/IPS Japan浅霧勝浩

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古い対立をかき消す新たなメッセージ

スーダンの貧しい露天商

【ハルツームIPS=ノエル・キング】

スジー・ベルナルドは、夜明けとともにスーダンの首都ハルツームの路上で飲み物を売り始める。地方のスラムからバスに揺られやって来て、40度を超える気温の中で、釜を炊いて茶を売る。

ハルツーム露天商の多くは内戦避難民で、スーダンの影の経済の一部を構成している。しかし、商いをするには許可証が必要だ。ベルナルドは、「5人の子供と病気の夫を養うため商売をしているので許可証が買えず、既に3回逮捕された」と言う。

1日に何度も警察が見回りに来ては、笛を吹き警棒を振り回し違反者を取り締まる。運が悪ければ逮捕され、商品は没収される。スーダン女性組合のシデカ・ワシは、「スーダンは古いイスラム文化に支配されており、女性が外で男性客と話しをするのは罪悪であるため、女性露天商ほど警察の標的になりやすい」と言う。また、「逮捕された女性の中には、刑務所で強姦されたと訴える者もいる」と言う。

 警察側は、取り締まりは上官付きのグループで行っており、訴えは事実無根と主張。「女性逮捕者が目立つとすれば、イスラムの教えに反し、地酒や薬物を売っているため」と説明している。

スーダン開発協会のモハメド部長は、「まずは1日25セントの営業証明書を買うこと」と言うが、問題はそれだけではない。ハルツームは現在投資ブームに沸いており、舗装道路、住宅、オフィスビルの建設が進んでいる。当局は、町の景観向上のため、徐々にではあるが露天商の追い出しを始めている。(政府は1ヶ月前に、難民露天商に対し、より大きな市場で商いを行うための営業証明発行を禁止する法律を可決している。)都市近代化により生活の糧を失いつつあるスーダンの貧しい露天商について報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=IPSJapan 浅霧勝浩

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|米国|スーダン政権への制裁を強化する議会

|オーストラリア|アボリジニの女性・子供虐待に対する無関心

【シドニーIPS=ニーナ・バーンダリ】

国連の先住民問題常設会議(UNPFII)の第5回会合がニューヨークで開催される中、オーストラリアでは、先住民アボリジニ族の女性/子供に対する性的虐待および暴力の凄まじさが明らかになった。

北部地域訴追担当官ナネット・ロジャースが作成した機密報告書がリークされたもので、同氏は報告書の中で、先住民の文化、緊密な同族関係により社会に蔓延する女性/子供に対する暴力がこれまで公にされなかった事実を暴露している。

しかし、活動家および政府関係者の一部は、政府は欧州植民地主義による先住民征服に根ざした悲劇を無視してきたと非難している。1900年から1970年にかけては、アボリジニを“根絶やし”にするため数万人の子供を家族から引き離す政策も行われていた。

 ロジャース氏の記録には、ガソリンを嗅いでいた18歳の少年に強姦、溺死させられた6歳の女児、母親が酒を飲みに行っている間に複数の男に襲われ外科手術が必要な程の酷い性的暴行を受けた子供などの事例が含まれる。

オーストラリアの先住民数は、総人口2千万の僅か2%に過ぎないが、先住民社会におけるアルコール中毒、失業、投獄、家庭内暴力のパーセンテージは極めて高い。

アボリジニおよびトレス海峡諸島の先住民は、先進国の中で最も阻害された民族である。同地域の女性早死の第一原因は殺人であり、彼女達が家庭内暴力の犠牲となる確率は、他のオーストラリア女性に比べ45倍といわれる。

しかし、コミュニティー内での復讐、嫌がらせ、脅迫に対する恐れから、犠牲者が犯罪の届け出、証拠の提出を行うことは殆どない。

15年の被告弁護経験を有するロジャース氏は、「北部地域における子供に対する性的暴力と文化問題」と題された報告書の中で、オーストラリア中央部のアボリジニは、犯罪の届出および裁判所における正しい証拠の提出に責任を持つべきであると述べている。

同氏は、6歳の女児の事件では、裁判官の前で事情聴取が行われたが、女児と一緒に遊んでいた子供達は絵に書いた証拠を提出したと記している。同裁判は、他の裁判同様、自殺、過失死、殺人といった新たな悲劇でまもなく有耶無耶になってしまった。

ロジャース氏は、暴力を見て育った、暴力の犠牲者となった子供達は残虐になり、大人になると暴力事件を起こすようになると指摘している。

同氏はまた、ある男が妻と子供達をナイフで脅しながら、娘の一人を強姦した恐ろしい事件について記している。後に、この娘は妊娠していることが分かったという。

オーストラリア統計局およびオーストラリア保健厚生研究所の2003年報告によると、先住民の女性/女子が暴行による怪我で入院する確率は、一般オーストラリア女性の28倍という。

少年も例外ではない。クィーンズランド工科大学の研究者は先週、アボリジニの少年が強姦される確率はオーストラリア男性の10倍という報告を行っている。

北部のアリス・スプリングでは、10代の女性がボーイフレンドを刺し殺すという事件が過去1年間で数件発生している。

オーストラリア労働党のワレン・マンディーン党首は、当局が暴力を無視していては、問題は悪化するばかりと警告。「警察は、先住民を目の敵にしていると見られるのを恐れ介入しようとしない。政府は、人種差別主義者とのレッテルを貼られることを恐れている」と語っている。

暴力は一部社会に深く浸透しており、これらコミュニティーは「無機能社会」「未開地ゲットー」と呼ばれている。ロジャース氏は、男性が法を無視した野蛮な行為を行うことを許している先住民文化が問題の原因としている。

しかし、先住民社会問題担当コミッショナーのトム・カルマ氏は、「政府は、コミュニティーおよび家族と協力し、暴力に影響を与える社会経済問題に取り組んでいく必要がある。暴力問題は、住居/生活条件の改善、雇用創設、レクリエーション施設の建設、健康/教育プログラムの導入により改善可能」と主張する。

救援団体Oxfamは、「政府の関与がなければ、先住民社会に蔓延する虐待は解決されない」としている。Oxfamオーストラリアのジェームズ・エンソー会長代行は、「オーストラリア市民が享受している基本サービスを先住民に提供するための予算が不足していることが問題」と指摘する。

オーストラリア医療協会が、先住民向け基本保健サービスの支出は年間3億4千5百万ドル不足していると指摘しているにも拘らず、2006~2007年度予算は、僅か9千万ドルに止まっている。

エンソー氏は、「中央政府のトップ・ダウン政策は役に立たない。意志決定の全過程で、先住民リーダーを中心に据える必要がある」と言う。

先住民問題担当のマル・ブロー大臣は、同問題を討議するため、国および地方リーダーによる緊急サミットを召集する意向であるが、北部地域担当のクレアー・マーチン大臣は、「アボリジニ自身がそれを欲しなければ、全国サミットを開催しても無益」と言う。

連邦政府が、虐待する親から子供を引き離し、麻薬やアルコールの問題を抱える親には治療を施すという政策を提案したため、ブロー氏は、「奪われたジェネレーション」に関する新たな議論を展開した。

5月26日に終了する2週間のUNPFII会議には、70カ国、3億7千万人の先住民の代表が参加。他の緊急課題と共に、意志決定への参加権を要求している。(原文へ

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩

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パレスチナ・イスラエルの和平交渉を望む女性たち

【国連IPS=ミスレ・サンドラサグラ】

ニューヨークに集まったパレスチナとイスラエルの女性リーダーたちが、パレスチナ紛争の和平交渉開始に向けて国際社会の関与を訴える声明を出した。

今回集まったのは、「公正で持続可能なパレスチナ・イスラエルの平和を求める国際女性委員会」のメンバーたち。同団体は、2005年7月にトルコのイスタンブールで初めての会議を持ち、紛争解決と持続的平和に向けた女性の貢献の重要性をうたった国連安保理決議1325の実施を誓った。

 彼女たちは、今年1月にハマスがパレスチナ議会選挙で勝ったことにより、国際社会が中東の和平プロセスから距離を置こうとしている事態に懸念を表明している。

イスラエル議会の元副議長ナオミ・チャザン氏は、「交渉のテーブルがないことが現在の問題だ」という。今年3月にヘブライ大学と「パレスチナ政策・調査研究センター」が合同で行った世論調査によれば、イスラエル・パレスチナ双方の市民の大部分が、一方的な行動よりも交渉を通じた紛争解決を望んでいるとの結果が出た。

イスラエル議会の現副議長コールット・アヴィタル氏は、イスラエルの国会議員の大部分が、「2ヶ国」という解決を志向するのは1967年以来始めてだと強調した[イスラエル側がパレスチナ側を主権国家として承認することを意味する:IPSJ]。

「発展を目指すパレスチナ働く女性の会」のアマル・クレイシェー代表は、「ハマスは一枚岩ではない。広く対話を進めるために応援すべき穏健な意見がハマスの中にはある」と語る。また、パレスチナの「女性法律扶助・相談センター」のマハ・アブ-ダエイ・シャマス氏もいう。「ハマスが交渉入りに同意すれば、ファタハもいやとはいえなくなる。そうすれば、両国の政府と野党がいずれも賛成した初めての交渉ということになる」。

パレスチナ・イスラエルの和平交渉入りを訴える女性たちの活動について報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=山口響/IPS Japan浅霧勝浩

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古い対立をかき消す新たなメッセージ

グアンタナモ収容所からの大量釈放によって明らかになる多くの過ち

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【ニューヨークIPS=ウィリアム・フィッシャー】

今もなおキューバのグアンタナモで収容されている囚人の約3分の1を米国防総省がまもなく釈放する、という報道を見た米国のメディア関係者やブログの世界の人々は、グアンタナモの囚人は「最悪中の最悪」の連中だとしたラムズフェルド国防長官の2002年の声明を思い出したことだろう。

そして、つい最近の2005年6月にも、彼はこう述べている。「あそこにいる人びとのことでいえば、彼らはみな戦場で捕まえられてきた連中ばかりだ。彼らはテロリストであり、訓練役であり、爆弾を作っている連中であり、[新しいテロリストを]リクルートしている連中であり、資金集め役であり、[オサマ・ビン・ラディンの]ボディーガードであり、将来の自爆テロリストであり、そしておそらくは、9・11のハイジャック犯だ」。

ペンタゴンは、グアンタナモにいまだに収監されている人びとの約3分の1にあたる141名の囚人をまもなく釈放すると発表した。しかし、ペンタゴンは同時に、収容所の存在そのものやそこで取調官が囚人を選別する方法に関して、頑としてその正当性を主張し続けている。

 
グアンタナモから囚人が釈放されたのはこれが初めてではない。2002年以降に同収容所に連行された約760名の囚人のうち、米軍はこれまでに180名を釈放し、76名を他国の施設に移送してきた。

ペンタゴンは、釈放される囚人はもはや米国にとっての脅威とはみなせず、諜報上の価値も持たないと説明している。

しかし、ブッシュ政権のこうした収容政策に批判的な人々は、米軍はこれらの人々を裁く十分な証拠を持っていないと主張している。しかもその裁判所は、米国内の裁判所よりも証拠採用の基準がずっと緩いのである。

「ヒューマン・ライツ・ファースト」の国際法律ディレクターのギャバー・ロナ氏はIPSに対してこう答えた。「もしこれらの人々のほとんどがアルカイダではない、つまり、濡れ衣を着せられた民間人であったとしたら、あるいは、たんなるタリバンの歩兵だったとしたら、グアンタナモにおける人権侵害の訴えを否定しようとする際にブッシュ政権が持ち出してくる、『テロリスト』たちは人権侵害を受けたという嘘の申立をするように教え込まれているのだという唯一のスローガンにすら反することになる」。

最新の囚人釈放のニュースを伝えた『ロサンゼルス・タイムズ』によれば、その他の囚人約20名超に関しても、訴追が停止されているという。しかし、主任検事は、残りの囚人たちが4年間も収監されたあげく即時釈放されることもないし公判に出席することすらない理由を明確に示していない、と報じられている。

現在グアンタナモに収監中の「敵の戦闘員」だとされている約490名のうち、わずか10名に対して訴追が開始されたに過ぎない。死刑を求刑されたものはひとりもいない。

グアンタナモ基地の軍事検事によれば、米国はこれまでより多くの囚人を訴追する計画で、場合によっては死刑を求刑することになるだろう、という。しかし、空軍のモリス・デイビス大佐は、すでに訴追された10名に加えて20名超の囚人を訴追する計画の詳細について明らかにすることを拒んでいる。

141名の囚人を釈放する決定は、彼らの事例に関する1年にわたる見直しの結果である。取調官は、これら囚人から得られる情報はこれ以上存在しない、との結論に達した。

米国がグアンタナモに囚人を送り始めた2002年以降、収容者の中に「テロリスト」などほとんどいないという世界の法律家・人権団体からの激しい非難が勢いを増してきた。ペンタゴンのファイル自身が、米軍は、グアンタナモに人を送り訴追も裁判もなしに収監し続ける点において多くの過ちを犯してきたことを示唆しているのである。

ペンタゴンの「過ち」の多くは、5年間にわたり秘密にされてきた。囚人の中には、アフガンの戦場において逮捕されたのではなく、ヨーロッパの街頭や中東のさまざまな場所で拉致されてきた人びともいる。

多くの囚人は、アフガンやパキスタンにおいて懸賞金と引き換えに米当局に「売りとばされた」。他にも多くの人たちが、たんに間違った時間に間違った場所にいたというだけだ。
 
無党派を頑固に貫いている『ナショナル・ジャーナル』誌は、次のように報道している。「ラムズフェルド自身の説明とは異なり、グアンタナモの囚人のほとんどは米兵が戦場で逮捕してきた人びとではない。彼らは、そのほとんどがパキスタンなどの第三国から送られてきている。中には、9・11以後にアラブ人狙いで張られた捜査網の中で、ピンポイントの家宅捜索の末に送られてきた囚人もいる」。

にもかかわらず、このすべての人びとが、タリバンやアルカイダ、テロを支援するその他の集団とのつながりを持った「敵の戦闘員」に分類されているのである。

グアンタナモの囚人の中にはできるだけ多くの米国人を殺害することを意図したアルカイダの工作員がいるとの十分な証拠をペンタゴンがつかんでいるかもしれない、という識者の意見もある。しかし、その他のケースにおいて、その「証拠」なるものは第2・第3・第4の人物からの伝聞によることが多いのだ。さらにその他のケースにおいては、多くの人びとが拷問同然だと語る残虐で非人道的な取調べを通じて自白を得たことは明らかだ。

ペンタゴンの過ちを探すのは困難なことではない。たとえば、

サディクという名前の男が、もう4年以上もかみそり付鉄線[で囲まれた収容所]の中に閉じ込められている。彼が敵の戦闘員ではないということを米軍はすでに昨年の時点で把握しているにも関わらずだ。彼の弁護士によれば、彼が故郷のサウジアラビアにおいてオサマ・ビン・ラディンに反対する言動を取ったことで当局が彼を持て余したのが原因だという。

中国のウイグル系ムスリムが中国における訴追を逃れ、彼らの一部が現在もグアンタナモに収監されている。米軍は、中国に戻れば彼らの身に危険が及ぶと説明している。

いわゆる「ボスニアの6人」は、2002年にボスニア・ヘルツェゴビナで逮捕され、サラエボの米大使館爆破共謀の罪に関してボスニア最高裁で無罪判決が下された後、グアンタナモに連れて来られた6名のアルジェリア人だ。彼らのうちのひとりは言う。「私はここに3年もいるが、私に関するそうした容疑は今聞いたばかりだ...取調官は、今あなたが話しているような容疑について私に言ってくれたことは一度もない。大使館爆破のことも、テロ組織のことも、アルジェリアのイスラム組織のことも全て聞いたことはない。どうしてこんな問題が出てきたのかはわからない」。

主要な人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」によれば、13才から15才までの子供が少なくとも3人は収監されている。

国防総省のファイルによれば、ある囚人がはめていた時計が、アルカイダが爆弾を製造するのに使用したのと同じ回路基板を搭載したカシオ・モデルに似ていた。米当局は、アルカイダが好んだカシオの腕時計を、少なくとも9名の囚人に対する証拠として利用している。しかし、この違法なモデルは世界中の街頭で売られている。しかも、この囚人のカシオ・モデルはこの数年間製造されてもいない。

トルコ人のムラート・クルナズさんは、パキスタンにおいて車から引きずりおろされ、その後、自爆テロリストを友人に持っていると疑われた。米政府は、クルナズさんの審理において、彼の友人はまだ生きており、「自爆テロリスト」とは呼べないということを隠していた。2005年1月、連邦裁のある裁判官が、グアンタナモの裁判において適正手続が欠けている証拠として、クルナズの事例を取り上げた。この裁判官は、グアンタナモの裁判は、無罪を証明する証拠を無視し、信頼するに足りないたった1枚の匿名の覚書を証拠採用していた、と述べた。

約3年にわたって収監されていた英国人男性の集団が、拷問やその他の人権侵害を受けたとして米政府を訴えている。男性は、提出した115ページにわたる意見書において、殴られ、裸にされ、手枷足枷につながれ、眠りを妨げられたと主張している。また、刑務官が囚人のコーランを便器に投げ込み、宗教的信仰を放棄するよう迫ったと訴えている。彼らは、囚人たちは成分不明の薬を強制的に注射され、軍用犬をけしかけられた、ともしている。そして、収容されているあいだ、人権侵害や殴打にあったと主張している。

また、彼らのそれぞれが、アルカイダの首領オサマ・ビン・ラディンや9・11のハイジャック犯のひとりモハメド・アタと共にビデオに出たという嘘の自白をさせられた、と主張している。ビデオが作成されたとき彼らはイギリスにいたと証明したにもかかわらずである。昨年3月に彼らが解放された後、そのうちのひとりがイギリス警察からの取調べを受けたが、起訴されずにすぐ釈放されている。(原文へ

翻訳=IPS Japan

国際社会の承認を跳ね返すネパールの民衆

【カトマンズIPS=マーティ・ローガン】

4月21日にネパールのギャネンドラ国王が人民に対して主権を返還すると述べてまもなく、国営のネパールTVは、インド・米・EUを含む各国がこの決断を支持していると報じた。

しかし、街角にあふれた民衆たちの叫び声はやむことがない。彼らは、口々に、「民主主義を!」「国王を処刑せよ!」と叫んでいる。また、国王が本当に権力を移譲するかどうか不透明な段階での各国政府の判断は拙速に過ぎると批判している。

 これを見た野党の「7党連合」は、国王に対して、議会の復活、制憲議会結成のための選挙実施などを呼びかけている。

しかし、民衆の抗議行動が長続きするかどうかはよくわからない。このところのデモやストの影響で交通は寸断され、物資不足が続き、物価は高騰している。そのうえ、ストに入った労働者は賃金も得ていない。

また、野党の態度にもいまだに曖昧な部分が多い。ある外交官は、今は7党連合が主導権を握るよいチャンスなのだが、野党は事態の収拾を図ることを国王側に望んでいるようにも見える、とコメントした。

別の外交官は、この混乱により「権力の空白」が生まれ、国王による抑圧がますますひどくなったり、毛派が勢力を盛り返してきたりすることがあり得る、と懸念を示した。

動乱のネパール情勢について伝える。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan

 
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否定された革命
見えないところでの闘い
「性産業」犠牲者の声なき声