【クルチャトフ/アスタナIDN=イリヤ・クルシェンコ】
CTBTO青年グループのロシア人メンバーであるイリヤ・クルシェンコ氏は、中央アジアのカザフスタン共和国において5日間に亘って開催された同青年グループと賢人会議(GEM)合同による「2018年青年国際会議」プログラムに参加していた。
参加者の一行は首都アスタナで開催された2日間に亘る国際会議に参加したのち、北東部にある東カザフスタン州の都市クルチャトフを訪問した。この都市の名称はソ連の核物理学者イーゴリ・クルチャトフからとられており、かつて(=ソ連時代)は同国最大規模のセミパラチンスク核実験場に隣接した、核実験における中心都市であった。現クルチャトフの核関連施設は、カザフスタン国立原子力センターの一部門であるカザフスタン原子力研究所により管理されている。
9月1日、クルシェンコ氏はクルチャトフからアスタナに戻る夜行列車の中で、一行に同行した浅霧勝浩IDN-INPSマルチメディアディレクターの取材に応じ、同日午前中に核実験場跡を訪問した経験について語った。(インタビュー映像はこちらへ)
5日間に亘ったプログラムも終盤に近づき、この間に私たちが目の当たりにしてきた出来事について振り返ってみたいと思います。今日私がこの目て見て感じたことは、率直に言って、あたかも人生ががらりと変わるような経験でした。
私たちは今日、核兵器実験場跡を訪れました。これは人生の転機となる経験でした。爆心地に降り立ち、まわりを見渡すと広大な平原と破壊しつくされた建物が目に入りました。そこでは、空も地上も地下も、ただ死しか感じられませんでした。
この核実験場跡で見た光景を、世界のいかなる地でも二度と見たくありません。放射能で汚染された大地、核兵器が私たちにもたらす大惨事とはいかなるものなのかを、だれもが理解する必要性を痛感する経験でした。私は生き証人としてこの経験を語っていきたい。
核軍縮は、政治家や科学者のみならず、この地球上に暮らすすべての人々に関係する問題です。なぜなら、核爆発がおこれば、私たちが愛おしみ大切にしているすべてのものが失われることになるからです。核兵器が引き起こす大惨事の本質を理解し、二度と悲劇が繰り返されないようにすることは、私たちの義務です。
皆さんも広島と長崎にいかにして原爆が投下され無辜(むこ)の市民が核兵器がもたらず惨禍に苦しんだかを知れば、あるいは、ここカザフスタンのセミパラチンスクや米国のネバダ州で核実験の影響に苦しむ人々…核放射線の影響下に生まれた我が子を直視できず目を閉じ泣き崩れる人々のことを知れば、このことが理解できるでしょう。
これらのことを知り、人々が今も苦しんでいることを知れば、これまでおこった悲劇が決して繰り返されないよう、できる限りのことをすることが、全ての人にとっての義務だということが理解できるでしょう。
私はCTBTO青年グループに参加して、これらのことがいかに重要なことなのかが理解できました。当初は、核問題とは、例えば核兵器や物理学を学ぶ人々に限られたテーマだと思っていました。また、当初は科学や外交の世界に足を踏み入れ、その仕組みを理解し、そこで自分がいかに学び経験を共有していくことができるか、大変な挑戦でした。最初は苦労しましたが、やがて、あらゆる人が核兵器の廃絶を交渉する共通の立ち位置にいるということが分かると、核兵器にいかなるものであっても存在価値を認めるような世界は見たくないという、共通の合意や理解に到達することは、実はあらゆる人々にとって難しい事ではないということが理解できるようになりました。
私やCTBTO青年グループの仲間たち、そして賢人会議のメンバーやCTBTOの全職員、そして国際社会全体で取り組まれている活動を通じて、私たちは世界を安全で豊かな場所にしていきます。
私たちは、破壊や爆撃や核実験といった死をもたらす側に加担するのではなく、学校を建設し、教育を提供し、生命を育むあらゆる努力を重ねて私たちの世界を発展させていきます。クルチャトフ近郊の核実験場で何が起こったかを知った今、死をもたらず側に加担することは、断じてありません。
皆さんには、核兵器に対する見方を、今一度考え直すとともに、核兵器の問題は、この地球上に暮らす全ての人々に直接関わる問題であるということをご理解いただきたい。(原文へ)
INPS Japan
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