【ストックホルムLondon Post=アリフ・キサナ】
スウェーデンは、廃棄物を資源として活用する循環型経済への移行において、世界を先導する存在となっている。人口1050万人、2023年のGDPは5407億ユーロと、欧州連合(EU)加盟27か国における人口の2.4%、経済規模の3.2%を占めるにすぎないが、環境政策と技術革新への影響力はその規模を上回っている。
家庭ごみの99.3%を再資源化し、埋立処分を0.4%未満に抑える同国の廃棄物管理モデルは、世界平均(60%が埋立)やEU平均(23%)とは対照的である。この成果は、厳格な政策、整備されたインフラ、高い市民意識に支えられている。一方で、素材の再使用を示す循環度は3.4%にとどまり、EU平均(11.8%)やオランダ(24.5%)に比べて改善の余地がある。
スウェーデンの一人当たりの年間ごみ排出量は431kgで、EU平均(513kg)を下回る。オーストリア(611kg)、デンマーク(747kg)、ルクセンブルク(790kg)を下回る一方、ルーマニア(280kg)やラトビア(357kg)よりは多い。2023年には410万トンの一般廃棄物が発生し、そのうち39%がリサイクル、59%が国内34か所のごみ発電施設(WTE)で熱と電力に変換された。
WTE施設は150万世帯に暖房を、78万世帯に電力を供給し、年間220万トンのCO₂排出を削減。これは約44万台の自動車に相当する排出量に匹敵する。デンマークやフィンランドも同様の技術を活用しているが、英国(リサイクル率44%)やポーランドでは導入が進み始めた段階にある。埋立率が70%を超えるブルガリアやマルタに比べ、スウェーデンの埋立率は1%と極めて低く、ドイツ、オーストリア、ベルギーと並んでEU内でも最先端に位置している。
しかし、同国の年間資源消費量は2億6600万トン、1人あたり24.4トンと、EU平均の171.7%に達しており、資源の循環利用を高める必要がある。『サーキュラリティ・ギャップ・レポート・スウェーデン』では、資源消費を最大42.6%削減するための6つの重点分野を提案している。これには、循環型建設、持続可能な食料システム、製造業の再構築、資源採取の見直し、クリーンモビリティの推進、意識的な消費の促進が含まれる。
たとえば、建築物の改修と軽量素材の導入により、建設分野の資源使用を8.2%削減できるとされる。植物中心の食生活と食品ロスの削減によっては7.3%の削減が可能だ。製造業(GDPの26%を占める)は、修理やレンタルサービスの拡充により5.3%、鉱業規制の強化で3.4%の削減効果が見込まれている。
政策面では、1991年に導入されたCO₂1トンあたり120ユーロの炭素税と、1994年から施行されている拡大生産者責任(EPR)が循環型経済を支えている。EPRは18の製品分野に適用され、包装廃棄物の85%(年間120万トン)をリサイクルしている。可燃性・有機性廃棄物の埋立禁止と埋立税の強化は、EUの2035年埋立率10%未満の目標とも整合している。
2024年には食品廃棄物の分別義務化法が施行され、バイオガスの生産が進められている。デポジット制度「パンと」では、年間約30億本の容器のうち92%が回収され、ドイツの77%を上回る。2027年までには、廃棄物の処理責任が全面的に生産者へと移行され、残渣ごみの埋立は禁止される予定である。
こうした政策は、強力なインフラによって支えられている。家庭から300メートル以内に設置されたリサイクルステーションや、真空収集システム、Optibagによる色分別技術などがその一例である。これらのシステムはドイツやオランダでも導入が進んでいる一方で、ルーマニアやギリシャでは整備が遅れている。
文化的側面も重要であり、教育や公共キャンペーン、「サーキュラーマンデー」などの取り組みを通じて、再利用や修理の意識が根付いている。エステルスンドのReTunaなどの自治体リユースセンターには、1日あたり700人以上が訪れる。H&Mは2025年までに100%リサイクル素材を使用する目標を掲げ、Volvoは95%が再資源化可能なバスを開発。SSABは化石燃料を用いない製鋼技術を開発中である。2024年に設立されたSyre社は、2032年までにポリエステルの完全循環を目指している。
こうした循環型産業は、年間21億ユーロの収益を生み出し、2024年時点で約20万人を雇用し、GDPの4%を占めている(2015年時点では1.8%)。
一方で、スウェーデンの自治体ごみリサイクル率(49%)はドイツ(69%)やオーストリア(59%)を下回っており、オランダの高い循環度(26.5%)と比べ、依然としてエネルギー回収への依存度が高い。フランスの反廃棄法(2020年)やイタリアの包装リサイクル率(76%)も成果を挙げているが、埋立率は依然として高い水準にある。ポーランドの埋立率は38%に達し、移行の遅れが指摘されている。
また、スウェーデンは年間180万トンの廃棄物を輸入し、約1億ドルの収益を上げているが、この慣行が他国の廃棄物削減努力を妨げているとの批判もある。加えて、WTEによるCO₂排出や、依然として低いプラスチックリサイクル率(多くが焼却または輸出)も課題だ。2024年には使い捨てプラスチック袋への課税緩和が実施され、環境政策の後退とする声も上がっている。
循環度を現在の2倍にあたる7.6%まで引き上げることができれば、スウェーデンは資源消費を大幅に削減できる可能性がある。その実現には、野心的な立法、インフラへの投資、社会的合意、そして経済的インセンティブを組み合わせた包括的な戦略が必要とされる。世界の廃棄物量が2050年までに70%増加すると予測されるなか、スウェーデンが1970年代の埋立依存から、ほぼゼロ・ウェイスト社会へと移行した実績は、廃棄物を経済成長の原動力へと転換できることを示している。政策立案者、企業、市民にとって、スウェーデンが築いてきた規制、技術、社会的関与を統合したモデルは、持続可能な未来に向けたスケーラブルな道筋となる。(原文へ)
INPS Japan
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