SDGsGoal10(人や国の不平等をなくそう)危険に晒される先住民族の言語に警鐘を鳴らす

危険に晒される先住民族の言語に警鐘を鳴らす

【ニューヨークIDN=J.ナストラニス】

第77回国連総会議長のチャバ・コロシ(元ハンガリー国連大使)氏は、12月16日に「先住民言語の国際の10年」を開始するにあたり、「先住民は、世界に残る生物多様性の約8割の保護者である。」と語った。

Csaba Korosi, President of UN General Assembly/ By Palácio do Planalto, CC BY 2.0

カナダのモントリオールで開催された国連生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)から戻ったばかりのコロシ議長は、「このイベントの目的は、先住民の言語を保護し、促進することにあります。そして、次の10年がその保護をどのように形成していくかを考えることです。」と語った。

「自然保護を成功させるためには、先住民の声に耳を傾け、それを彼らの言語で行わなければなりません。しかし、2週間に1つのペースで先住民の言語が死滅しています。先住民の言語が消滅するたびに、その言語に付随する文化、伝統、知識も消滅してしまうのです。」と、コロシ議長は指摘した。

北極圏のコミュニティが自分たちの言語で公共サービスを受けることを望み、コロンビアのアルワコ族が今もイカ語を話すなど、世界各地の先住民が母国語を守り続けようと決意している。

このような背景から2007年、国連総会は「先住民族の権利に関する宣言」を採択し、「先住民族の歴史、言語、口承、哲学、文字体系および文学を再生し、使用し、発展させ、将来の世代に伝える」権利を認めた。

「国際の10年」の宣言は、国連教育科学文化機関(ユネスコ)が世界的な取り組みを主導する「2019年国際先住民族語年」の重要な成果である。

ユネスコは、国連経済社会局やその他の関連国連機関と協力し、引き続き「国際の10年」の実施に向けた主導的な国連機関としての役割を担う。

国連経済社会局によると、先住民は世界人口の6%未満を占めるが、世界の約6700の言語のうち4000以上を話している。

UNESCO

しかし、控えめに見積もっても、今世紀末には先住民の言語の半分以上が絶滅するといわれている。

コロシ議長は、各国に対し、先住民族コミュニティと協力して、彼らの母語による教育や資源へのアクセスといった権利を保護し、先住民自身や彼らの知識が搾取されないように促した。

「そして、おそらく最も重要なことは、先住民族と有意義な協議を行い、意思決定プロセスのあらゆる段階で彼らと関わることです。」と助言した。

文化的アイデンティティと知恵

UNニュースは、先住民族と各国の国連大使が、先住民族の言語の保護と保全の必要性を訴えたと報じた。

メキシコのフアン・ラモン・デ・ラ・フエンテ大使は、22のメンバーからなる「先住民族フレンズグループ」を代表して、「言語は単なる言葉以上のものです。」と述べた。

「言語は、話者のアイデンティティと、民族の集合的な精神の本質です。言語は、人々の歴史、文化、伝統を体現しており、驚くべき速さで消滅しています。」と警告した。

UN Photo/Eskinder DebebeAmbassador Leonor Zalabata Torres of Colombia addresses UN General Assembly members at the launch of the International Decade of Indigenous Languages.
UN Photo/Eskinder DebebeAmbassador Leonor Zalabata Torres of Colombia addresses UN General Assembly members at the launch of the International Decade of Indigenous Languages.

コロンビアの国連大使であるアルワコ族のレオノール・ザラバタ・トーレス氏は、彼女の故郷で話されている65の先住民言語の一つであるイカ語で演説し、喝采を浴びた。

「言語は知恵と文化的アイデンティティの表現であり、私たちが祖先から受け継いだ日々の現実に意味を与えてくれるツールです。」と、スペイン語に切り替えて語った。

「残念ながら、言語の多様性は危機に瀕しており、その原因は、先住民の言語が劇的に減少し、多数派社会の言語に取って代わられることが加速しているからです。」

トーレス氏は、コロンビア政府が、強化、承認、文書化、活性化を柱とする先住民言語の国際の10年の実施に取り組む姿勢を強調したことを報告した。

言語と自己決定

「北極圏の先住民族コミュニティにとって、言語は政治的、経済的、社会的、文化的、精神的権利に不可欠です。」と、代表のアルキ・コティエク氏は語った。

コティエク氏はまた、「実際、先住民が先住民族の言語で言葉を発するたびに、それは自己決定の行為なのです。」と語った。

「先住民の言語や方言には、様々なレベルの活力がある。」というコティエク氏は、北極圏の先住民が「尊厳を持って自分たちの故郷に堂々と立ち、生活のあらゆる面で、自らの言葉で、健康、司法、教育の分野で不可欠な公共サービスを受ける」時代が到来することを思い描いている。

言語的公正に向けて

アフリカ社会文化圏の先住民代表であるマリアム・ワレット・メド・アブバクリン女史もまた、「先住民言語の国際の10年」の開始にあたり、国連総会で演説を行った。

UN Photo/Eskinder Debebe Ms. Mariam Wallet Med Aboubakrine, Indigenous peoples' representative of the Socio-Cultural Region of Africa, addresses the UN General Assembly at the launch of the International Decade of Indigenous Languages.
UN Photo/Eskinder Debebe Ms. Mariam Wallet Med Aboubakrine, Indigenous peoples’ representative of the Socio-Cultural Region of Africa, addresses the UN General Assembly at the launch of the International Decade of Indigenous Languages.

マリ出身の医師であるアブバクリン女史は、アフリカの先住民族、特にトゥアレグ族を擁護している。彼女は、各国に「先住民に言語文化的な正義をもたらすこと」を促し、それこそが和解と永続的な平和に貢献することになると語った。

アブバクリン女史は、国際の10年が国連条約の採択へと繋がり、「すべての先住民族の女性が、自分の言語で揺りかごの幼児をあやすことができ、すべての先住民族の子供が自分の言語で遊ぶことができ、すべての若者と成人がデジタル空間を含めて自分の言語で自己表現し、安心して働くことができ、すべての高齢者が自分の経験を自分の言語で伝えることができるようになる。」という希望を表明した。(原文へ

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