INPS Japan/ IPS UN Bureau Report爆発性兵器、紛争下の子どもの犠牲の主因に — 世界の衝突地域で深刻化する被害

爆発性兵器、紛争下の子どもの犠牲の主因に — 世界の衝突地域で深刻化する被害

【国連IPS=オリトロ・カリム】

近年、世界各地の紛争は一段と苛烈さを増し、爆発性兵器による死傷者が、これまで主因だった栄養失調や疾病、医療不足を上回るようになっている。紛争が激化するなか、最も大きな犠牲を強いられているのは子どもたちであり、不処罰と資金不足が必要不可欠な保護サービスの欠如に拍車をかけている。

11月20日、セーブ・ザ・チルドレンは『Children and Blast Injuries: The Devastating Impact of Explosive Weapons on Children, 2020–2025(子どもと爆発外傷:爆発性兵器が与える壊滅的影響、2020〜2025年)』を発表した。報告書は、現在進行中の11の紛争で深刻化する爆発性兵器の脅威を、臨床研究と現地調査に基づいて分析し、小児の爆発外傷が医療現場に及ぼす影響を明らかにするとともに、予防と回復支援への国際的投資を優先すべきだと訴えている。

報告書の主任著者で、セーブ・ザ・チルドレン英国の紛争・人道アドボカシー上級顧問ナルミナ・ストリシェネッツ氏は次のように述べた。「今日の戦争で最も高い代償を払っているのは子どもたちです。武装勢力だけでなく、本来彼らを守るべき政府の行為によっても命が奪われています。ミサイルは子どもが眠り、遊び、学ぶ場所を直撃し、最も安全であるべき家庭や学校が死の罠と化しています。かつて国際社会が強く非難した行為が、いまや『戦争のコスト』として片付けられる。この倫理の後退こそ、時代の危険な兆候です。」

報告書は、紛争下で暮らす子どもたちが置かれた極めて不安定な状況を浮き彫りにする。子どもは身体の発達が不十分で回復力も弱く、爆発性兵器がもたらす外傷に特に脆弱である。にもかかわらず、医療、リハビリ、心理社会的支援は慢性的に資金不足で、大半が成人を想定して設計されているため、子ども向けの必要なケアが欠落している。

セーブ・ザ・チルドレンのデータによれば、特に頭部や胴体の損傷、火傷では、子どもは大人より死亡リスクが著しく高い。7歳未満の子どもは「生命を脅かす脳損傷」を負う割合が成人の約2倍に上り、負傷した子どもの65〜70%が体の複数部位に重度の火傷を負っている。

小児救急医で、小児爆発外傷パートナーシップ(セーブ・ザ・チルドレンと医療者の協働枠組み)の共同創設者ポール・リーヴリー医師はこう指摘する。「子どもは解剖学的・生理学的特徴、行動、心理社会的ニーズのすべてにおいて大人より脆弱です。病院に到達する前に命を落とす例も多い。生存しても多数の重傷を負い、生涯にわたる治療とケアを必要とします。しかし紛争下の医療対応の大半は大人を前提としており、子どもの特有のニーズは見落とされています。」

報告書によれば、爆発性兵器は都市中心部へ戦闘が移行するにつれて子どもに前例のない被害を与えており、昨年の紛争下で死亡・負傷した約12,000人の子どものうち、70%が爆発性兵器によるものだった。2024年の子どもの死傷の70%超が爆発性兵器由来で、2020〜2024年の59%から大幅に増加している。

この増加は、現代の紛争において子どもがどのように危険にさらされているかの変化を示すものだ。セーブ・ザ・チルドレンは、被害増大の背景にある5つの要因として、①破壊力を増幅する新技術の拡散、②民間人被害の「常態化」、③説明責任の欠如、④子どもの死傷の深刻化、⑤爆発性暴力の長期的な社会コスト──を挙げている。

2024年に子どもへの被害が最も大きかった地域は、被占領パレスチナで2,917人、次いでスーダン1,739人、ミャンマー1,261人、ウクライナ671人、シリア670人で、いずれも多数が爆発性兵器による犠牲だった。また、地雷や不発弾による犠牲者の約43%を子どもが占め、農地や学校、家屋に何十年も残存する爆発物が深刻な脅威となっている。

この2年間、セーブ・ザ・チルドレンは紛争下の子どもの保護規範が「危険なまでに後退している」と警告してきた。2023年に地雷対策として拠出された10億ドルのうち、除去に充てられたのは半分に満たず、被害者の医療支援は6%、地雷リスク教育はわずか1%にとどまった。

同団体は各国政府に対し、人口密集地での爆発性兵器の使用停止、子ども保護政策の強化、そして被害児童の支援・研究・回復への投資拡大を求めている。

国連児童基金(UNICEF)とパートナー団体は、紛争下の子どもに食糧、避難所、医療、社会支援といった基本サービスを提供し、給水・衛生インフラの復旧や避難民への現金給付、精神的ケアや教育支援にも取り組んでいる。また、爆発性兵器の生存者には医療、義肢装具、心理社会的支援を提供し、障害のある子どもを含む保護サービスの強化に向け、政府や市民社会と協働している。(原文へ

INPS Japan/IPS UN Bureau Report

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