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地域中東イラン核合意は「すでに死に体」か、それともまだ生きているのか?

イラン核合意は「すでに死に体」か、それともまだ生きているのか?

【国連IDN=タリフ・ディーン】

バイデン大統領がイランとの核合意について「死に体だ」とオフレコ発言をしたことが伝えられ、この画期的な合意の将来や、新たな核保有国の出現の可能性についてさまざまな憶測を呼んでいる。

バイデン大統領は、「核合意は既に死んでいるが、それを発表するつもりはない。」と述べた後、しばらく間をおいて「長い話になるためだ。」と付け加えた。

Photo: US President Joe Biden. Source: The Conversation.
Photo: US President Joe Biden. Source: The Conversation.

この発言は、バイデン大統領が11月初旬に遊説で訪れた西部カリフォルニア州での選挙関連イベントで録画され、12月にSNS上で暴露されたものだ。

ホワイトハウスは、映像が偽物であるとはしていないが、あえてコメントもしていない。国務省も同様の対応であり、包括的共同行動計画(JCPOA)として知られるこのイラン核合意の将来が危ぶまれている。

2015年7月にウィーンで合意されたこの合意は、イランと安保理五大国(米・英・仏・中・ロ)、ドイツ、それに欧州連合(EU)を当事者としている。

5つの付属文書を含む159ページの文書は、イランが核開発について制限を受け入れる代わりに、イランに対する厳しい経済制裁の一部を緩和するものであった。

2018年5月、当時のドナルド・トランプ大統領が「より良い協定を交渉する」としてJCPOAからの脱退を発表したが、その後何も起こらなかった。

イランが核武装することになれば、中東における政治的ライバルであるサウジアラビアが核武装を主張する可能性が高く、おそらくエジプトもそれに続くだろう。

現在のところ、イスラエルが中東における唯一の核保有国であるが、その事実を公然と認めてはいない。

ずっと問題になっていることは、イランは、現在の9カ国、すなわち、国連安保理の5常任理事国である英国・米国・ロシア・中国・フランスと、インド・パキスタン・イスラエル・北朝鮮に続く10カ国目の核保有国になるのかどうか、という点だ。

Antonio Gutierrez, Director General of UN/ Public Domain
Antonio Gutierrez, Director General of UN/ Public Domain

国連のグテーレス事務総長は12月19日、JCPOAの今後について問われ、「私は常にこの合意が素晴らしい外交的成果であったと考えている。」と記者団に語った。

「JCPOAが問題視された際、私は非常に悔しい思いをしました。私たちは、限られた権限内で、この合意が失われないよう最善を尽くすつもりですが、現時点では、合意を失う深刻なリスクに直面していると認識しており、中東地域やさらには別の地域においても平和と安定を妨げる要因になりかねません。」と、グテーレス事務総長は語った。

「平和・軍縮・共通の安全保障を求めるキャンペーン」の代表で「国際平和・地球ネットワーク」の共同呼びかけ人であるジョセフ・ガーソン氏はIDNの取材に対して、「JCPOAの『死』によって、世界は核不拡散条約(NPT)体制が終焉する可能性に直面し、核拡散と核戦争の危険は著しく増大することになります。」と語った。

「バイデン政権がJCPOAプロセスの死を表明したことで、この極めて重要な合意から脱退するというトランプ大統領の傲慢かつ無謀な決定がもたらした危険性や、核兵器国が核軍縮を誠実に交渉するとしたNPTの義務を果たさないことに起因する危険に直面する局面に立たされています。」

ガーソン氏は、「元IAEA事務局長でノーベル平和賞受賞者であるモハメド・エルバラダイ氏が、核兵器国の危険な欺瞞と二重基準について指摘しています。また、ノーベル平和賞受賞者で、マンハッタン・プロジェクトを脱退したジョセフ・ロートブラット博士は、『世界の核兵器をなくすことができなければ、世界的な核拡散につながる。』と警告したうえで、『どの国も権力と恐怖の不当な不均衡を長く容認することはないだろう。』と指摘していました。」と語った。

「核兵器製造の瀬戸際までこぎつけた核開発計画と、その計画に潜む脅威に関して、イラン政府は非難を免れるものでは到底ありません。」とガーソン氏は語った。

The official State Department photo for Secretary of State Antony J. Blinken, taken at the U.S. Department of State in Washington, D.C., on February 9, 2021. / Public Domain]By U.S. Department of State, Public Domain
The official State Department photo for Secretary of State Antony J. Blinken, taken at the U.S. Department of State in Washington, D.C., on February 9, 2021. / Public Domain]By U.S. Department of State, Public Domain

米国のアントニー・ブリンケン国務長官は、「イランは状況を不安定化させる危険な行為に訴え、テロ集団を支援し、中東地域全体を不安定化させている。」と12月22日に記者団に語った。

「私たちはこの問題を重視しイランと関与してきました。イランが核兵器を獲得しないことが我が国の利益に深く関わっているという立場は変わりません。バイデン大統領は、イランが核兵器を獲得しないよう尽力しています。そのための最も効果的で持続可能な方法は外交であると引き続き考えています。」

「イラン核合意が履行されていた間は、予定通り機能していました。つまり、イランの核開発は、国際査察官のみならず米国当局による査察もなされ、前政権を含めてイラン側も合意内容を順守しており、事実上核開発を封じ込めていたのです。」

「思うに、(トランプ政権が)合意から脱退し、イランに核開発を進展させる自由を与えてしまったのは重大な過ちでした。しかし、これはバイデン政権が引き継いだ現実であり、私たちはこの問題に対処しなければならなかったのです。」

「したがって、米政府は外交により合意復帰を目指すことが最善の方策だと考えています。しかし、イランの悪質な行為に対抗しつつ取り組んできた我が国や欧州のパートナーによる様々な努力にも関わらず、イランは、核合意の遵守に復帰するために必要な意思も行動も示してきませんでした。」

「そこで、私たちとしては、イランが核兵器を取得することがないように引き続き注視し、必要な行動をとっていくつもりです。」

ガーソン氏は、「核合意に復帰するための共通の基盤を米国とイラン双方が見いだせていないために生じた新たな危機は、より深い文脈の下で理解されねばなりません。すなわち、長年に亘って米国が南西アジア全体に強制的な覇権を行使してきた不公正と、その中でイランが西側諸国の覇権にとって代わろうとする野心を燃やしてきた文脈を理解する必要があるのです。」と語った。

「例えば、英米は1953年にイランで民主的に選ばれたモハンマド・モサデク政権を転覆させ、シャーの野蛮な独裁を支援し、サダム・フセインがイランのイスラム共和制を打倒するための侵攻を支援し、米国の中東覇権を強化するために核戦争を開始するとの威嚇をし、その準備を続けてきました。」

ガーソン氏はまた、「イスラエルが保有する核戦力の存在と、米国などがイスラエルの核兵器に対して欺瞞的に行使してきた二重基準もまた重要な要素です。」と語った。

Joseph Gerson
Joseph Gerson

「イランが核兵器を保有することになれば、核保有を公に認めないが実際にはそれを強制力として利用し、大量虐殺の可能性を秘めたものとして保有するという『イスラエル・モデル』に従うことになるとみられています。」

「その結果、サウジアラビアをはじめとする湾岸諸国が自国の核兵器を開発する可能性が高まるでしょう。」とガーソン氏は予測した。

「イランが核兵器の開発に成功すれば、米国が明確にそれを支援するかどうかは別として、最初の核爆弾が生産される前か直後にイスラエルがイランの核施設を攻撃することとなり、中東地域のあらゆる当事者にとって壊滅的な帰結をもたらす地域戦争へと発展していく事態に直面することになるだろう。」

従って、外交的影響力を発揮できるあらゆる国々が、違いを乗り越えて核合意に復帰するための外交努力をせねばならない。ガーソン氏は、「それが緊急かつ共通の利益の最上位に置かれねばならなりません。」と語った。(原文へ

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