【国連IPS=タリフ・ディーン】
米国が、国連の条約や国際協定を含む66の国連関連組織から一斉に離脱したことを踏まえると、予測不能なトランプ政権が、将来、国連そのものからも脱退し、1947年の国連・米国本部協定にもかかわらず、国連事務局をニューヨークから追い出す決断に踏み切る可能性はあるのだろうか。

66組織からの離脱に加え、米国は国連人権理事会、WHO(世界保健機関)、UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)、UNESCO(国連教育科学文化機関)からも離脱した。さらに、正式には脱退していない国連機関に対しても、資金拠出の大幅削減を課している。
では、厳しい批判にさらされている国連は、そう遠くない将来、同じ運命をたどるのだろうか。そうした見方を強めているのが、トランプ大統領と米政府高官による国連への強硬な姿勢である。
国連問題の研究と執筆で知られるスティーブン・ズーンズ博士(サンフランシスコ大学政治学教授)はIPSの取材に対し、国連に最も敵対的だった米大統領でさえ、ロナルド・レーガンやジョージ・W・ブッシュの時代を含め、米国の利益を前進させるうえで国連が果たす重要性を認識していたと語った。特定の事例で法原則に反する行動を取ることがあっても、国連システム全体を維持する意義は理解されていた、という。
同様に米国は、いくつかの政策や、場合によっては組織の使命そのものに同意できない場合であっても、影響力を行使するために、さまざまな国連機関に参加してきたと、ズーンズ氏は指摘する。
しかし同氏は、「トランプ政権は、第二次世界大戦後に築かれた国際法秩序そのものを拒否しているように見える。とりわけベネズエラ攻撃以降の発言は、19世紀の帝国的特権への回帰であり、現代国際法の否定に映る。」と語った。

その結果として、「トランプ氏が実際に米国を国連から脱退させ、国連をニューヨークから追い出す可能性はあり得る。」とズーンズ氏は語った。
トランプ氏は昨年9月の国連総会演説で、「国連の目的は何なのか。潜在力にまったく見合っていない」と発言した。さらに、国連を時代遅れで非効率な組織だと切り捨て、「私は7つの戦争を終わらせ、各国の指導者と直接対処してきた。合意の最終化を手伝うと、国連から電話がかかってきたことは一度もない。」と誇示した。
シートン・ホール大学外交・国際関係大学院のマーティン・S・エドワーズ准学部長(学務・学生担当)はIPSの取材に対し、こうした発言は「非効率の削減」や「多様性との闘い」を掲げながら、トランプ支持層に訴える刺激的な言葉で包まれた「疑わしい言説」だと述べた。
またエドワーズ氏は、外交問題を利用して、なお成果を示せていない国内政策から有権者の関心をそらす狙いもあると指摘した。実際、具体的なフォローアップ文書が国連事務総長のもとに届いていないことが、それを裏づけているという。大統領が最大限の要求を掲げる一方、最終的に得られる成果は限られる――そうしたパターンの繰り返しに当てはまる、と述べた。
ただし問題はそれにとどまらない。エドワーズ氏は、次の二点で深刻だと語る。
① この方針は、米国の国連における影響力を高めるどころか、むしろ削り続ける。安定した外交関係は信頼性に基づくが、米国はその蓄えを浪費しており、空白には他国が入り込む。
② これは有権者向けのSNS投稿としては響くかもしれないが、実務上は理にかなわない。ホワイトハウスが求めているのは、国連運営のあらゆる項目に対する「項目別拒否権(line-item veto:予算の個別項目ごとに拒否できる権限)」だ。しかし分担金はアラカルト・メニューではない、と同氏は述べた。
さらに、市民社会組織の世界連合CIVICUSの事務局長マンディープ・S・ティワナ氏はIPSの取材に対し、トランプ政権による国際機関からの離脱・後退は、第二次世界大戦の惨禍を乗り越えるため国連創設の枠組みを構想し、米国にニューディール政策をもたらしたフランクリン・D・ルーズベルト大統領の遺産への攻撃だと語った。
「影響を受けた国際機関の多くは、米国人の血と汗と涙によって築かれてきた。そこからの撤退は、彼らの犠牲への侮辱であり、平和、人権、気候変動、持続可能な開発をめぐる数十年の多国間協力を後退させる。」とティワナ氏は述べた。
一方、国連への攻撃は止む気配がない。
米国の国連大使マイク・ウォルツ氏は、ブライトバート・ニュースのインタビューで「国連の支出の約4分の1は米国が負担している。」と述べた。「資金は有効に使われているのか。いまはノーだ。本来の目的ではなく、いわゆる“woke”(進歩派的と批判される多様性・社会正義の政策を指す俗語)的なプロジェクトに使われている。国連が本来やるべきこと、トランプ大統領が求めること、私が求めること――平和に焦点を当てることだ」
歴史的に米国は国連最大の資金拠出国であり、通常予算の約22%、PKO(国連平和維持活動)予算では最大約28%を負担してきた。
それでも皮肉なことに、米国は最大の滞納国でもある。国連総会の第5委員会(行政・予算)によれば、加盟国が未払いとしている義務的分担金は、現行予算期間の総額35億ドルのうち18億7000万ドルに上る。

ニューヨーク選出で、かつて国連大使候補にも挙がったエリーズ・ステファニク前下院共和党会議議長は、「国連について米国人が見ているのは、腐敗し、機能不全で、麻痺した組織であり、憲章にうたわれた平和・安全保障・国際協力という創設原則よりも、官僚主義、手続き、外交上の体裁に縛られている」と述べた。
また国連への間接的な批判として、マルコ・ルビオ国務長官はこう述べた。
「私たちが『国際システム』と呼ぶものは、透明性に欠ける国際機関が数百も乱立し、権限が重複し、活動も重複している。成果は乏しく、財務と倫理のガバナンスも不十分だ」
同長官は、かつて有用な機能を果たした機関でさえ、非効率な官僚機構となり、政治化した活動の舞台となり、あるいは米国の国益に反する道具になってきたと述べた。さらに、「これらの機関は結果を出さないだけではない。問題に対処しようとする者の行動を妨げている。国際官僚機構に白紙小切手を切り続ける時代は終わった。」と宣言した。(原文へ)
INPS Japan/IPS UN Bureau Report
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