【ニューヨークIPS=ナウリーン・ホサイン】
ニューヨーク市長選は、まるで米国大統領選挙のような熱気で世界の注目を集めた。そして火曜日夜、ゾーラン・マムダニ氏が圧勝を収め、米国社会が不安と混迷の時代を経て新たな希望を見出した瞬間となった。彼は今後、世界で最も裕福で注目度の高い都市の一つであるニューヨーク市を率いることになる。
水曜朝から、筆者のSNSには、ニューヨークどころか米国外に住む友人や家族までもがマムダニ氏の勝利を自分の街の出来事のように祝う投稿であふれた。これは、彼がソーシャルメディアを通じて展開した効果的な発信によるもので、その「本物であること」を基盤とするブランドと理念は、ニューヨークの枠を超えて多くの人々に響いた。
マムダニ氏の選挙戦と勝利は、まるで現代の寓話のようであった。州内でも知名度の低かった一地方議員から、わずか1年で世界的に知られる人物となったのである。
草の根運動と、既成政治が避けてきた新たな戦術を駆使しながら、彼の陣営は人口構成の多様性を特徴とする広範な連合を形成していった。彼は現政権への挑戦者として、信念と理念を貫き、同じ政党内の旧勢力からの抵抗にも立ち向かった。
その勝利は「誰もがよりよい人生を追求できる自由と機会を持つ」というアメリカン・ドリームの再確認でもある。マムダニ氏は、団結と共感を基盤とした信念を貫きながら、いくつもの歴史的偉業を成し遂げた。市史上初のイスラム教徒の市長、初の南アジア系市長、そして100年以上ぶりに最年少の市長である。
彼の魅力の中核にあるのは、生活費の負担を軽減する政策、インド系ウガンダ移民を父に持つイスラム教徒としての背景は、「より良い生活」を求めて母国を離れた移民たちに深く響いた。アメリカン・ドリームは、本来「繁栄は受け継ぐものではなく、追求するもの」という理念であり、経済的機会と市民的自由を守る国という理想を掲げてきた。
しかし現実には、移民たちは高騰する生活費の中で基本的な生活を維持するために苦闘している。その点において、マムダニ氏は彼らの苦しみを真に理解していると感じさせた。彼の語る希望のメッセージは、人々が自らの姿を彼の中に見出せるような共感を生んだ。
信仰や経験不足を攻撃する中傷的な言説にも、マムダニ氏は一歩も引かず、自らのアイデンティティを損なうこともなかった。多くの移民が同化を選ぶ中で、彼は「本物であること」こそが今の時代に最も重要だと証明してみせたのである。
次期市長となる彼には、都市の生活をより手頃にするという公約を実現する責任がある。同時に、その信念が単なる選挙戦略ではなかったことを証明しなければならない。国連本部を擁する「世界の首都」ニューヨークにとって、これほど国際的視野を持つ市長はふさわしい存在と言える。
彼は国内政治家でありながら、国際的な視野を持つ人物である。その傾向は彼の家庭にも表れている。妻はシリア系アメリカ人移民であり、両親もそれぞれ文化・学術の分野で著名な人物だ。
父マフムード・マムダニ氏は、ウガンダ出身の政治学者で、ウガンダ、南アフリカ、セネガル、そして米国コロンビア大学などでポストコロニアル研究を教えてきた。
母ミーラー・ナイール氏はインドの映画監督で、『モンスーン・ウェディング』『ミシシッピ・マサラ』などの代表作で知られる一方、北東インドのガロ先住民族を描いたドキュメンタリー『Still, the Children Are Here』など社会派作品も手がけている。同作は国連国際農業開発基金(IFAD)と共同制作された。
このように彼の家系は恵まれた文化的背景を持つが、それゆえにこそ社会正義への意識が高く、変革と誠実さを掲げた彼の政治的スタンスにもその影響が見て取れる。
近年、社会の分断と不確実性が深まり、既存の問題解決をより困難にしている。国連も例外ではない。開発と繁栄のために全てのコミュニティを包摂するという理想を掲げながらも、資金不足や政治的意思の欠如、加盟国間の利害対立のために行動が制約されている。
国連は「原則的中立性」を掲げ、世界の多様な課題を取り上げ、平和で包摂的な対話を促進する。しかし加盟国の利害が絡むため、しばしば強い立場を取ることができないという限界を抱えている。
その意味で、国連とニューヨーク市は共通点を持つ。どちらも構成員によって形づくられ、時に一部の影響力が全体の行方を左右する。
だからこそ、マムダニ市長のような人物から国連が学ぶべき点は多い。彼は「国内課題を国際的視野で捉えることが有益である」ことを実証している。希望を原動力とし、「尊厳ある生活を当然の権利として求める」姿勢を持つことが、変化をもたらす力になるということを、彼の当選は私たちに思い起こさせる。(原文へ)
INPS JAPAN/IPS UN Bureau Report
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