ニュース危機に瀕する持続可能な開発目標

危機に瀕する持続可能な開発目標

【ニューヨークIDN=J・ナストラニス】

持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた世界的な努力を倍加させなければ、政治的不安定を助長し、経済を根底から覆し、自然環境に取り返しのつかないダメージを与えることになりかねないと、「持続可能な開発目標レポート2023(特別版)」は指摘している。

世界の指導者たちは、2015年に「持続可能な開発のための2030アジェンダ」とその17のSDGsに合意した際、健康で繁栄する地球上ですべての人の権利と幸福を確保するという歴史的な約束をした。しかし、気候危機、ウクライナ戦争、暗い世界経済の見通し、新型コロナウィルス感染症パンデミックの長引く影響などが複合的に影響し、制度的な弱点が明らかになり、開発目標に向けた進展が著しく妨げられている。

The Sustainable Development Goals Report 2023: Special Edition

目標達成期限まであと7年しかない。各国がSDGs達成のためにとっている具体的な行動をレビューする「持続可能な開発に関するハイレベル政治フォーラム (HLPF 2023)」(7月10日~19日)が開幕する中、報告書はSDGsの悲痛な姿を提示している。このフォーラムは、SDGsサミット(9月18日から19日)に先立ち開催されるもので、世界の指導者たちにとって、SDGsを緊急に軌道修正し、さらに加速させる決定的な機会となる。

評価された約140のターゲットの半数が、望ましい軌道から中程度または著しく逸脱している。さらに、これらのターゲットの30%以上は、まだ進展が見られないか、さらに悪いことに、2015年のベースラインよりも後退している。

報告書によると、新型コロナのパンデミックの影響により、極度の貧困を削減するための30年にわたる着実な進歩が停滞し、極度の貧困に苦しむ人々の数は、この世代で初めて増加した。

現在の傾向が続けば、2030年までに、5億7500万人という途方もない数の人々が極度の貧困に陥ったままとなり、8400万人の子どもたちや若者が学校に通えなくなると推定される。2022年に119カ国で収集されたデータによると、女性に対する直接的・間接的な差別を禁止する法律がない国が全体の56%を占めている。

世界の気温上昇は、産業革命以前のレベルをすでに1.1℃上回っており、2035年までに1.5℃の転換点に達するか、それを超える可能性がある。報告書はまた、進展のなさは世界共通であるが、世界で最も貧しく脆弱な人々が、こうした前例のないグローバルな課題による最悪の影響を経験していると警告している。

Air and chemical pollution are growing rapidly in the developing world with dire consequences for health, says Richard Fuller, president of the Pure Earth/Blacksmith Institute. Credit: Bigstock
Air and chemical pollution are growing rapidly in the developing world with dire consequences for health, says Richard Fuller, president of the Pure Earth/Blacksmith Institute. Credit: Bigstock

突破口の可能性

しかし、2015年以降のいくつかの分野での進展は、さらなる進歩の可能性を示している。世界人口のうち、電力にアクセスできる人の割合は、2015年の87%から21年には91%に増加した。

報告書はまた、2021年までに133カ国が5歳未満児死亡率に関するSDGs目標をすでに達成しており、2030年までにさらに13カ国が達成する見込みであることを示している。世界的な製造業の成長鈍化にもかかわらず、中・高・ハイテク産業は堅調な成長率を示した。発展途上国は2021年に、一人当たり268ワットという記録的な再生可能エネルギー発電能力を導入した。

さらに、インターネットを利用する人の数は2015年以降65%増加し、2022年には世界で53億人に達した。

これらの重要な開発成果は、集団行動、強力な政治的意志、そして利用可能な技術、資源、知識の効果的な活用の組み合わせによって、すべての人にとってより良い未来への突破口が開けることを示している。

この進歩により、何億人もの人々を貧困から救い、男女平等を改善し、2030年までに世界を低排出軌道に乗せることができる。また、データのエコシステムを強化することは、世界がどのような状況にあり、SDGsを達成するために何をなすべきかを理解するための鍵となる。

その他の重要な事実と数字

過去の傾向を踏まえると、2030年までに貧困率が2015年比で半減する国は3分の1に過ぎない。

2021年には、ほぼ3人に1人(23億人)が、中程度または深刻な食糧不安に陥っていた。

2015年から22年にかけて、安全に管理された飲料水安全に管理された衛生設備(トイレ)、基本的衛生(=石けんと水で手洗いができる施設など)へのアクセスが増加した結果、これらの必要不可欠なサービスを利用できるようになった人は、それぞれ6億8700万人、9億1100万人、6億3700万人に増加した。

効果的なHIV治療により、2010年以降、世界のエイズ関連死は52%に減少し、47カ国で少なくとも1つの顧みられない熱帯病がなくなった。

2020年の時点で、約11億人が都市部のスラムやスラムに類似した環境で暮らしている。

国や地域の災害リスク削減戦略を持つ国の数は、2015年以降倍増しており、災害を管理し、その影響を軽減するための意識と備えが高まっていることを示している。(原文へ

INPS Japan

UNStats

関連記事:

|国連防災世界会議|災害対処からリスク予防へ

世界は大きな問題に直面―危ぶまれる持続可能な開発目標の実現

世界市民教育に余地を与える持続可能な開発目標(SDGs)

最新情報

中央アジア地域会議(カザフスタン)

アジア太平洋女性連盟(FAWA)日本大会

2026年NPT運用検討会議第1回準備委員会 

「G7広島サミットにおける安全保障と持続可能性の推進」国際会議

パートナー

client-image
client-image
client-image
client-image
Toda Peace Institute
IPS Logo
The Nepali Times
London Post News
ATN
IDN Logo

書籍紹介

client-image
client-image
seijikanojoken