SDGsGoal13(気候変動に具体的な対策を)トランプ政権の気候変動対策からの撤退とSDGsとの統合の必要性

トランプ政権の気候変動対策からの撤退とSDGsとの統合の必要性

【カトマンズNepali Times=編集部】

ドナルド・トランプ政権は、気候変動の加速による影響が世界中に広がる中、開発・保健・環境問題に対処するための多国間メカニズムから撤退している。

トランプ政権によるパリ協定からの離脱(2015年に大多数の国が署名し、排出削減を目指す協定)、化石燃料生産拡大の計画、地球規模の自然保護や気候変動適応策への資金削減は、ここ10年の進展を逆行させる恐れがある。

こうした中、アメリカは今週、中国・杭州で開催される「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の重要会議への科学者の参加を取りやめる決定を下した。この会議では、第7次評価報告書(AR7)のスケジュールと予算を決定する予定である。

また、今回の会議では、大気中に蓄積された二酸化炭素(CO₂)を除去し、回収・貯蔵するための地球工学(ジオエンジニアリング)技術の選択肢についても議論される。一部の科学者は、「世界的な排出量の急増により、化石燃料の使用削減だけでは地球の平均気温を抑えるのに不十分だ」と警鐘を鳴らしている。

現在排出されるCO₂の一部は海洋や植物に吸収されるが、大部分は最大1,000年間大気中に残留する。二酸化炭素の回収・貯蔵(カーボン・シーケストレーション)は依然として議論が分かれる技術であり、環境保護活動家らは「最も効果的なCO₂除去方法は世界的な森林の拡大だ」と主張している。

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、195か国の科学者が参加する国際組織であり、約20年前に設立された。政府に対し、地球環境の現状を定期的に報告し、気候危機への適応策や排出削減策を提案する役割を担う。

過去のIPCC評価報告書は、温室効果ガス排出量の増加に関する警告を強めており、世界はすでに2050年の目標とされた1.5℃の気温上昇に迫りつつある。

杭州でのIPCC第62回総会(2月24日~28日)では、現在入手可能な科学データを統合・分析し、各国政府への勧告をまとめる予定だ。ただし、第7次評価報告書(AR7)の概要が公表されるのは2028年であり、現在の大気・海洋の温暖化ペースを考慮すると「行動を起こすには遅すぎるのではないか」と懸念する科学者も多い。

そんな中、IPCCの過去の報告書は、もう一つの国際的な時間制約のある計画、「持続可能な開発目標(SDGs)」と十分に整合していないことが、新たな研究で明らかになった。

オランダ・フローニンゲン大学のプラジャル・プラダン博士(エネルギー・環境・社会統合研究所)によると、「杭州会議は、IPCCの次の報告書において気候変動と持続可能性の課題を包括的に結びつける絶好の機会だ」という。

SDGsは2015年、パリ協定と同年に国連で採択されたもので、2030年までに貧困や飢餓の撲滅、健康と教育の確保、排出削減による気候変動の緩和など、17の目標を達成することを目的としている。これは、2000年に採択されたミレニアム開発目標(MDGs)を発展させたものであり、格差・移民・食糧生産・貧困・気候危機といったグローバルな課題の相互関係を重視している。

プラダン博士と研究チームは、IPCCの第5次・第6次評価報告書の150章を分析し、SDGsの目標がどれほど反映されているかを調査した。その結果、「IPCC報告書にはSDGsに関するギャップが存在する」ことが判明した。

プラダン博士は次のように指摘する。

「気候変動と持続可能性は切り離して考えることはできません。しかし、ジェンダー平等、教育、格差、健康など、多くのSDGs目標は、これまでのIPCC報告書に十分に反映されていません。」

SDGsには17の大目標のほかに169の詳細なターゲットが設定されており、これらを次回のIPCC評価報告に統合することで、気候変動問題の構造的な要因(国家開発の課題など)に取り組むことができる。

「気候変動対策を成功させるには、開発課題と結びつけることが不可欠です。気候変動は多くのSDGsに悪影響を及ぼしますが、同時にSDGsは気候対策を推進する役割も果たします。両者の間には相乗効果(シナジー)とトレードオフ(利害の衝突)があるのです。」と、プラダン博士は語った。

この研究は、第6次評価報告書(AR6)ではSDGsの重要性が前回(AR5)より強調されたものの、より包括的なカバーが必要であることを示している。特に、気候変動の根本原因と解決策をSDGsと統合することが求められる。

同研究の共著者であるクラウス・フバチェク(フローニンゲン大学)は、「気候変動は単に気温の上昇の問題ではなく、人々の生活や福祉にも直接関係する」と述べている。SDGsはまさにこの点を強調しており、各国政府にとってより響くアプローチとなる可能性がある。

この研究は、世界15の研究機関の科学者が共同で執筆し、ネパール出身のショバカル・ダカル(タイ・アジア工科大学)、マヘシュワル・ルパケティ、IPCCの元・現ワーキンググループメンバーであるバート・ファン・デン・ハーク、デブラ・C・ロバーツらも参加している。

研究者らは、この論文がIPCC杭州会議の参加者を説得し、SDGsと排出削減目標の統合を進めることで、気候変動対策を加速させることを期待している。

フバチェクは、「タイミングが重要です。SDGsは2030年までの目標ですが、IPCC報告書に組み込めば、その先の持続可能性の議論をも主導できるでしょう。」と語った。(原文へ

This article is brought to you by Nepali Times, in collaboration with INPS Japan and Soka Gakkai International, in consultative status with UN ECOSOC.

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