脆弱国を代表する気候リーダーシップを示すために、ネパールの気候アプローチを再構築する
【カトマンズNepali Times=ゾーイ・ウィトコウスキー】
今年ブラジルで開催された気候サミットは、アントニオ・グテーレス国連事務総長が地球温暖化を1.5℃以内に抑制できていない「道義的失敗」を率直に認めるところから始まった。しかし、COP30の閉幕は、より効果的で持続的な成果を生み出すために、私たちが立ち止まり、再び取り組みを強化する好機でもある。パリ協定から10年を経て、気候危機と生物多様性危機が悪化する中、行動の遅れに対する不満は高まるばかりだ。
COPは気候問題を世界に可視化するうえで重要な場であるものの、その議論は依然として不十分な短期的・非拘束的な解決策にとどまり、これが大きな制約となっている。こうしたアプローチは、脆弱国を気候ガバナンスの主体ではなく、あくまで“受け手”として扱ってしまう。

さらに、COPには正統性と規制の不足という構造的な弱点があり、実効性ある行動を損なっている。近年の開催国には石油依存国家が続いており、今年の開催地もまたアマゾンの玄関口でありながら、同様の性格を強めている。
COP30には記録的な1,600人の化石燃料ロビイストが参加し、農業企業からのロビーも加わったことで、企業による「取り込み」という衝撃的な現実が示された。また、米国など主要国の不参加は、気候問題が国際議題から後退しているのではないかとの懸念を強めている。ネパールのCOPでの経験はこうした課題を映し出しつつ、気候行動とガバナンス能力を強化する機会も示している。
ネパール:出席中心から「結果重視」へ
ネパールはCOP創設以来、すべてのサミットに参加してきたが、その関与は依然として「出席」に重きが置かれ、「成果」に結びついてこなかった。

今年の代表団は関連分野の閣僚経験者を中心とする少数精鋭に絞られたが、依然として明確な戦略を欠き、全体として受動的な姿勢に終始した。
ネパールの気候アジェンダは、依然として外部影響に左右され続けており、国家としての主体性を取り戻す必要がある。COP30では、若者や途上国との協議を行い、ブータン・バングラデシュと連名で、氷河融解と下流域への影響で結びついた3カ国として共同声明を出した。
しかしこの声明も、最終的には予測可能な「資金要請」へと収斂した。
ネパールは毎年、気候資金の確保と不公正の訴えを中心課題としてきた。これは、温室効果ガス排出への貢献度が極めて低い一方で、甚大な影響を受けているという事情を踏まえたものである。
しかし、政府の頻繁な交代や経験不足の担当者の参加は、メッセージの一貫性を欠く結果を招いてきた。特に、資金配分の執行率が低いにもかかわらず、毎年同じく資金を強調する点は矛盾を際立たせている。
「資金があれば十分」という発想が行動を制限する
昨年、ラム・チャンドラ・パウデル大統領は「汚染者負担(polluter pays)」原則に言及したが、「汚染者行動(polluter acts)」はどこへ消えたのか。資金は補償メカニズムであり、いくら多額であっても排出増加という根本原因に対処することはできない。その結果、気候資金は脆弱国にとってしばしば「必要だが十分でない」、時に債務を悪化させる手段にさえなっている。
さらに、ガバナンスの脆弱さがネパールの気候行動を決定的に制約している。機能不全の政府、実施されない政策、非国家アクターの過小評価――これらは、COPで実効的な成果を得る力を大きく損なっている。
COP30を越えて
政治的変化が進む今、ネパールには外交アプローチを再定義し、「受益者」ではなく「主体」として、ヒマラヤ地域の気候アジェンダを形作る立場へ回帰する機会が訪れている。COP30に向けた準備や地域協力には前進が見られたものの、目的の精緻化が必要だ。
気候正義の議論は、単なる資金要請を超え、「汚染者の責任」を追及する方向へと広がるべきである。山岳地域の脆弱性を訴える声は強まっており、ネパールにはそれを主導する潜在力と責務がある。COP30では、ネパール・ブータン・キルギスが主導し、山岳地域の声を反映する年次対話枠組みが新設されるという大きな前進があった。
11回のCOPに参加したバトゥ・クリシュナ・ウプレティ氏は、資金戦略の必要性を次のように強調する。
「新たな資金を求める前に、国内で詳細な計画を策定し、どこに投資し、どのように活用するのかを明確にする必要があります。」
今後、援助の減少、後発開発途上国(LDC)卒業、資金需要の高まり、債務問題といった課題を見通した戦略を持つことで、ネパールは交渉でより大きな主導性を発揮できるだろう。
COP自体の改革も必要
30回のサミットを経て、COPは政策づくりの段階から実施段階へと移行しなければならない。
自己利益を優先する勢力がプロセスを損ねる現状への対処も急務だ。気候変動は「多中心的ガバナンス」を要する問題だが、COPは依然として中央集権的な解決策に偏り、非国家主体の貢献を十分に生かせていない。
ネパールのように資源や行政能力が限られる国ほど、地域社会や多様な主体の潜在力を活かすハイブリッド型のアプローチが有効となる。
ネパールの行動は経済・安全保障にも直結する
ネパールは排出量こそ少ないが、脱炭素化の遅れは国内経済そのものを危うくする。
電気自動車の普及にしても、その恩恵が不平等を拡大しない形で実施されなければ成功しない。
COPでの議論は、開催国の特徴により「陸か海か」という焦点の振れ幅が大きい。だが、アジア太平洋地域は、ヒンドゥークシュ・ヒマラヤ(HKH:2億7000万人が居住し、20億人の下流域住民を支える)を含め、気候と生計の双方に巨大な影響力を持っている。
ヒマラヤの環境変化は世界中に影響をもたらしており、「世界の屋根」での気候課題は一国の問題ではなく地球規模の責務である。近年、ネパールは山岳アジェンダを国際的に押し上げるために一定の貢献を続けており、さらなる地域連携・国際連携の基盤も築きつつある。
COP31:連帯の新しい地平を開く機会

次回COP31はトルコで開催されるが、事前会議を太平洋で行い、オーストラリアが主導する初の「アジア太平洋フォーカス」となる。これは、山岳から島嶼まで、脆弱性をつなぐ視点を強化する大きな機会である。
脆弱な国々やコミュニティは、資金や支援の「受け手」として語られがちだが、本来は重要な主体である。住民の経験に根ざした声を信頼できる仲介者を通じて国際プロセスに届けることは、COPの議題設定と成果の双方を強化するだろう。
COPの失望をただ嘆くだけではなく、その欠点を明確に指摘することこそが、プロセスを再構想し、世界が切実に求める野心的な成果への道を開く第一歩である。外交議論をグローバルノースが独占してきた時代は、変わらなければならない。
主要排出国が内向きになりつつある今こそ、グローバルサウスが連帯し、気候外交を再構築する声を上げる時だ。ネパールはその変化に貢献しうる位置にある。山岳アジェンダの推進、国内ガバナンスの強化、地域・地理を越えた協力を進めることで、ネパールは脆弱国家による「新しい気候リーダーシップ」を示すことができる。(原文へ)
ゾーイ・ウィトコウスキーは、ニティ財団で気候ガバナンスのインターンシップを最近修了した。
INPS Japan/IPS UN Bureau Report
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|視点|未来の岐路に立つ今、希望の選択を(大串博子未来アクションフェス実行委員会創価学会インタナショナルユース 共同代表)













