SDGsGoal16(平和と公正を全ての人に)国際協力と外交が絶えず疑問視される中、トラテロルコ条約署名から58周年を迎える

国際協力と外交が絶えず疑問視される中、トラテロルコ条約署名から58周年を迎える

世界初の非核兵器地帯の創設から58年が経過し、ラテンアメリカおよびカリブ海の33か国は、核兵器という大量破壊兵器を世界から廃絶するための国際的な取り組みに貢献するという誓約を改めて表明した。

【メキシコシティーINPS Japan=ギイレルモ・アヤラ・アラニス】

Image: Alfonso García Robles, Treaty of Tlatelolco.
Source: OPANAL

58年前、ラテンアメリカとカリブ海地域で世界初の非核兵器地帯が創設された。これは冷戦時代の最も恐ろしい出来事の一つである1962年の「キューバミサイル危機」に対する反応としての出来事だった。米国とソ連が核戦争を引き起こす寸前までいったこの危機を受け、メキシコの提案で、ボリビア、ブラジル、チリ、エクアドルの外交官が協力し、世界初の非核兵器地帯(NWFZ)の創設に向けた交渉を行った。数年にわたる交渉の末、1967年2月14日に「ラテンアメリカ(及びカリブ)における核兵器の禁止に関する条約」(通称トラテロルコ条約)が署名され、地域内での核兵器の開発、製造、備蓄、保有、使用が禁止されることが確定した(1990年にカリブ諸国が加盟し現在の呼称に変更された)。

この時の外交的および多国間の努力は、現在、ラテンアメリカとカリブ海地域の6億5700万人(世界銀行データ)の人々に地域の安全という遺産をもたらした。

Image: Flávio Roberto Bonzanini, Secretary General OPANAL. Source: OPANAL

トラテロルコ条約58周年を記念するイベントではラテンアメリカ及びカリブ核兵器禁止機関(OPANAL)の事務総長であるフラヴィオ・ロベルト・ボンサニーニ大使が、国際協力や多国間の枠組み、外交が絶えず疑問視されている現状において、今年の記念式典が重要であることを強調した。メキシコシティーのOPANAL本部で開催された式典でボンサニーニ大使は、「我々の条約、及びラテンアメリカとカリブ海の非核兵器地帯は、非常に緊張した状況の中で生まれたものであることを忘れてはならない」と述べ、地域を核兵器から守り続け、さらに世界全体でこの大量破壊兵器の廃絶に貢献するというコミットメントを再確認した。

現在OPANAL理事会の議長を務めるエドゥアルド・ハラミージョ氏は、ラテンアメリカとカリブ海の非核兵器地帯が、モンゴルの一国非核兵器地帯創設というコミットメントをはじめ、世界の他の四つの地域で類似の非核兵器地帯が創設されるインスピレーションとなり、模範となったことの重要性を強調した。

Image: Eduardo Jaramillo X: @ejaramillon

OPANAL加盟33カ国を代表して、ハラミージョ氏はまた、「核兵器の使用が明示的または暗黙のうちに脅かされる状況が増す中、国際情勢への懸念を改めて」表明した。彼は、非核兵器地帯が地域および国際的な平和と安全を促進し、これらの非核地帯が「効果的な国際的管理の下での一般的かつ完全な軍縮に向けた一歩を示している」と述べ、「したがって新たな非核兵器地帯の設立を奨励している。」と強調した。

OPANALの創立54周年記念式典では、初めての「アントニオ・アウグスト・カンサード・トリンダード核軍縮・非拡散賞」の受賞者が発表された。受賞者はエリザベス・メンデンホール氏とホセ・ルイス・ロドリゲス氏で、彼らの研究「ラテンアメリカにおける核兵器不拡散ゾーンと海上輸送の問題」に対する貢献が評価された。この研究は、トラテロルコ条約が海上輸送に与える影響を調査したものだ。

Source: UN
Image: Alfonso García Robles bookshop.
Source: FCE

ホセ・ルイス・ロドリゲス氏は、研究に関心を持ったきっかけとして、トラテロルコ条約の盲点とも言える、ラテンアメリカとカリブ海の非核兵器地帯が核兵器の海上輸送まで制限していないことを発見した点を挙げ、また「発展途上国が世界の核秩序にどのように貢献しているかを分析する文献が増えてきている」と述べ、「この論文は、発展途上国の核秩序への貢献を理解するための説明を深めるものだと考えている」と語った。 一方、エリザベス・メンデンホール氏は、二人が現在も研究を続けており、「非核兵器国家が非核兵器地帯を海域に拡大する方法を示すことができ、同時に、これらを制御する条約を作成する際の非核兵器国家の主体性とリーダーシップについて調査している。」と語った。

トラテロルコ条約の署名は、メキシコとラテンアメリカの人々にとって記憶に残るべき重要な出来事であり、その58周年を記念して行われた「トラテロルコ条約:核兵器使用の歴史と展望」という講演が、1967年にこの文書が署名されたメキシコ外務省の旧本部で開催された。

Image: Alfonso García Robles bust at La Salle University.
Photo: Guillermo Ayala Alanis.

トラテロルコは、メキシコシティー北部に位置する地区で、先コロンブス時代(アステカ帝国時代)から商業の中心地として機能してきた。19世紀後半にはモデル住宅地として発展し、メキシコ外交の拠点となり、外務省の建物が置かれた。現在、この建物はメキシコ国立自治大学(UNAM)によって管理され、トラテロルコ大学文化センター(CCUT)として、地域の文化的および歴史的な遺産を保存することを目的とした施設となっている。

トラテロルコ条約は、ラテンアメリカとカリブ海を構成する33の国々で有効であり、その創設とコミットメントは、核兵器拡散を拒否する政策が、広大な地域の平和を保障する効力を持つことを示す明確な事例となっている。

その主要な推進者であり、1982年にノーベル平和賞を受賞したメキシコの大使アルフォンソ・ガルシア・ロブレスは、メキシコの人々の記憶の中で今も生き続けている。彼の名前は公共の学校に付けられ、また歴史的なトラテロルコの建物にある書店にもその名が冠されている。さらに、UNAMやラ・サール大学などの大学でも彼を讃える像が立てられており、いくつかの例がある。(原文へスペイン語版

This article is brought to you by INPS Japan in partnership with Soka Gakkai International, in consultative status with UN ECOSOC.

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