【国連IDN=タリフ・ディーン】
国連の人権理事会(ジュネーブ、構成47カ国)は、193カ国から成る国連総会の選出した構成国の中に「抑圧的体制」や「権威主義国家」を含めているということで長らく批判されてきた。
10月10日に行われた秘密投票では、中国やブルンジ、キューバを含む15カ国が新たに選出された。しかし、ウクライナを侵攻したことで国連憲章違反の非難を受けているロシアは選ばれなかった。
中国とロシアは、英国・米国・フランスと並んで安全保障理事会で拒否権を持つ常任理事国である。
「保護する責任に関するグローバルセンター」は、選挙直後に出した声明で、ブルンジや中国の選出は人権理事会の信頼性を貶めるものだと警告した。
「人権理事会に選出された国は、すべての国連機構への全面的な協力を含め、最高水準の人権へのコミットメントを示すことになっている。」
これらは国連総会決議60/251で提示された条件である。カメルーンやエリトリア、アラブ首長国連邦、スーダンをを含むいくつかの人権理事会構成国によって、国内外で潜在的な集団残虐犯罪が行われているという事実も深く憂慮される、とグローバル・センターは述べた。
「普遍的・定期的レビュー」など、人権理事会が義務づける調査メカニズム、特別手続、条約機関、人権高等弁務官事務所(OHCHR)が提供する事務的支援はすべて、人道に対する罪、民族浄化、戦争犯罪、ジェノサイドにつながる危険要因を早期に警告し、その再発を防止するための勧告を提供する上で不可欠な役割を果たしている。
「グローバル・センター」はまた、新たに選出された核人権理事国のプロフィールをまとめたと発表した。これによって、人権の擁護・促進によって大規模な加害の予防にこれらの国々がどれだけコミットしているのかが概観できるようになる。
『国連人権理事会構成国選挙(2024~26)と「保護する責任」』へのリンク
国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチの国連ディレクター、ルイ・シャルボノーは、「ロシアと中国は大規模な虐待を連日繰り返し、国連人権理事会の構成国としては不適格であることを見せつけてしまった。」と選挙の直前に語った。
「人権理事会に参加する国の中で、人権に関して問題のない国はないが、人権理事会の一員になるには基準があり、ロシアと中国はそれを無視している。」と指摘した。
人権侵害国に居場所はない
国連加盟国は、最悪の人権侵害国は人権擁護機関にふさわしくないことを世界に示すべきだ、と彼は主張した。
国連のファルハン・ハク副報道官は、中国の人権理事会理事国選出を巡る論争について問われ、「人権理事会に参加しているすべての国々は、自国の人権を評価するために自国の記録を公開する義務を負っている。完璧な人権状況の国など存在しないのは確かだが、それぞれの国で人権状況を向上させることができるこうした評価を経ることに前向きになってもらう必要がある。したがって、加盟国によって人権理事会に選出されたすべての国はそこにいる権利を得たということだ。人権理事会にいる間は人権を尊重する姿勢を示し、実証する必要がある。」と語った
「国際人権サービス」(ISHR)は10月10日の声明で「ロシアは、どのように努力をしたとしても、人権理事会での地位を停止されてから1年となる来年1月に理事会に戻ることはないだろう。国連総会の加盟国が、2024年から26年までの間に理事となる15カ国のうちのひとつにロシアを選ばなかったことを喜ばしく思う。」と述べた。
この投票によって、各国は総会決議60/251に沿った投票を行い、国際人権システムを弱体化させようとするロシアの大胆な試みを阻止した。」と、ISHRニューヨーク事務所の共同責任者であるマデリーン・シンクレアは語った。
「ロシアは、ウクライナにおける数々の犯罪と、国内での市民社会や個人の自由に対する冷酷で長期にわたる弾圧について説明する責任がある。国連の最高人権機関においてロシアに場所を与えないと国連加盟国が合意したことに安堵している。」とシンクレアは語った。
10月10日、国連総会は人権理事会の15の構成国を選出した。票数は以下のとおり。
4席あったアフリカでは、ブルンジ(168票)、コートジボワール(181票)、ガーナ(179票)、マラウィ(182票)が選出された。
アジア太平洋諸国では、中国が154票、他にインドネシア(186票)、日本(175票)、クウェート(183票)。
東欧諸国ではアルバニアが123票、ブルガリアが160票を獲得した。ロシア連邦は83票で、選出されなかった。
ラテンアメリカ・カリブ地域では、144票を得たブラジル、キューバ(146票)、ドミニカ共和国(137票)で3席が埋まった。ペルーは108票で選外となった。
西欧・その他の2席は、153票を集めたフランスと、169票を得たオランダとなった。
今回選出された15カ国は、2024年1月1日から26年12月までの3年間が任期となる。
「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」のシャルボノーは、アジア地域では中国が最も少ない票数で選出された事実を指摘した。
「もしアジアでのみ競争が行われていたら、中国は勝てなかっただろう。それこそが起こるべきことだった。国連の選挙で競争が行われることの重要性を示している。」
一方、総会決議60/251の第7項に従い、理事会は47の加盟国で構成され、国連加盟国の過半数による無記名投票で直接かつ個別に選出される。
47の構成国は「平等な地理的配分」を基礎とし、議席は各地域に次のように配分されている。
アフリカ:13
ラテンアメリカ・カリブ地域:(8)
東欧:6
西欧・その他:7
任期は3年で、二期連続務めたら次期には立候補できない。
国連総会決議60/251及び65/281と決定75/402に従って、人権理事会構成国の任期は1月1日に始まることになっている。(原文へ)
INPS Japan
関連記事: