【サンチアゴIPS=グスタボ・ゴンザレス】
リカルド・ラゴス大統領を始め、政治家がどんなに過去の人として葬り去ろうとしても、かつての独裁者ピノチェト氏は引き続きチリ国民の耳目を集めるだろう。
抑留・行方不明者の近親者協会(Association of Relatives of the Detained-Disappeared:AFDD)のロレナ・ピツアロ代表はIPSの取材に応え「1月15日の大統領選を控え、右派、とりわけラビン氏と独立民主連盟(UDI)はピノチェト氏の影を恐れ、遂に関係を断つに至った」と語った。
大統領候補は中道左派連立の社会党ミシェル・バシェレット氏とネオリベラルのビジネスマンであるセバスチアン・ピネラ氏。ピネラ氏の支持基盤はホアヒン・ラビン氏が率いるもっともピノチェト氏寄りの独立民主連盟(UDI)。
ピノチェト氏は自宅軟禁にあったロンドンから2000年4月に帰国、幾つかの法廷で人道問題、汚職の罪を問われている。しかし、90歳という年齢から老齢性認知症を盾に2002年7月「死のキャラバン」裁判を皮切りに無罪放免が続いた。
流れを変えたのは米上院調査委員会の2004年8月の発表である。ピノチェト一族が米金融機関リグス銀行に数百万ドルに及ぶ不正蓄財があるというもの。8月10日にはピノチェト氏の妻子が逮捕され、ピノチェト氏自身も11月23日に自宅軟禁に置かれた。
これを受けてラビン氏は不正蓄財との関与を否定、ピノチェト氏が裁判を受けなくてはならないという点でラゴス大統領に同意すると声明を発表した。
ピノチェト氏は1975年の左派119人の拉致、殺害をメディアで封じ込めようとしたコロンボ作戦の罪を問われることとなり、最高裁は12月26日にピノチェト氏側の老齢認知症の訴えを却下、裁判の続行を命じた。
ピツアロ代表は裁判の続行を歓迎しながらも「人道問題よりも、汚職の方を重視する右派の姿勢は遺憾」とする。チリ政界に依然として大きな影を落とすピノチェト氏を巡る動きについて報告する。(原文へ)
翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩