ニュース|アルゼンチン|拉致政治犯の子ども、自らの経験を語る

|アルゼンチン|拉致政治犯の子ども、自らの経験を語る

【ブエノスアイレスIPS=マルセラ・ヴァレンテ】

軍事独裁政権時代(1976-1983)に拉致され行方知れずとなった人々の子どもたちのその後の人生を綴った本De vuelta a casa: Historias de hijos y niertos restituidos(帰宅:発見された子どもおよび孫の話)が11月、アルゼンチンで出版された。 

政治犯収容所で生まれたあるいは幼くして両親と共に拉致された後、子どものいない軍人や警察官夫婦に育てられた10人の心境告白を読めば、何故過去を捨て育ての親に背を向ける者がいる一方で、真実を知り肉親に会ってもなお育ての親の苗字を維持し、依然彼らを父さん、母さんと呼ぶ者がいるのか理解できるだろう。

 同本の著者アナリア・アルジェントは、「行方不明になった子どもたちの捜索を行ってきた人権擁護団体“マヨ広場のお婆さん”の活動は知られているが、我々は今では30歳を超えたこれらの子どもたちの本当の苦しみを理解できなかった。彼らの多くは心に葛藤を抱えており、自らの経験を話すことで解放された」と語る。また、同本により、身元に不安を感じている者も真実究明に乗り出すのではないかと話している。 

「マヨ広場のお婆さん」は、これまでに行方不明の子ども93人を探し出したが、真実を知らずに暮らしている者がなお400人いると予測している。 

両親と共に拉致され、その後軍将校夫婦に育てられたククラディア・ポブレーテは、「亡くなった両親の知り合いから話しを聞いて心の扉が開いた」と語った。しかし、彼女は、自宅軟禁の判決が下った育ての親と今も暮らしている。 

「マヨ広場のお婆さん」は、収容所で生まれ、警察官夫婦に育てられていたレッジャルド・トルサ兄弟の居所を突き止めた。当時10歳であった兄弟は、DNAや精神鑑定、長引く裁判を経験。兄弟の1人マシアスは、当時を振り返り「モルモットのようだった」と言う。彼は今でも育ててくれた女性を母と呼び、彼女のことを幸せな子供時代を過ごさせてくれた「人生の支え」と語っている。 

拉致されたウルグアイの労働組合のリーダー、ホセ・デリアの息子カルロスは、アルゼンチンの海軍大尉に引き取られた。カルロスは、同夫妻にとても可愛がってもらったと話す。今は亡き実父と同じ経済学者となったカルロスは、本当の親族と共に育ての親とも良い関係を維持している。「彼らのしたことは間違っていた。しかし、彼らが私を本当の子どもの様に愛してくれたのも事実だ。私の彼らに対する気持ちは変わらないし、背を向けることはできない」と語っている。 

軍事政権の犠牲となった子供たちの心の葛藤について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan 浅霧勝浩 


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