本稿はThe Astana Timesの許可を得て、日本語翻訳を掲載している。カザフスタンのレアアース開発は看過できない動きである。半導体や電池、電気自動車、再生可能エネルギー機器に不可欠な重要鉱物の安定確保は、日本の経済安全保障に直結しているためだ。供給の中国集中が続くなか、カザフスタンが採掘のみならず加工能力の拡充にも力を入れ始めたことは、日本にとって新たな協力の可能性を示している。(INPS Japan 浅霧勝浩)
【アスタナThe Astana Times=ナジマ・アブオワ】
世界のレアアース生産量は、デジタル技術とクリーンエネルギー需要の高まりを背景に、この20年でほぼ4倍の37万9900トンに達した。カザフスタンでは、この分野は依然として工業生産全体の中では小規模だが、急速に拡大する世界市場の中で、発展の初期段階にある新興部門として浮上しつつある。

レアアース元素は、マイクロチップから風力タービンに至るまで幅広い技術に不可欠な17種の金属群であり、世界経済における重要性を一段と高めている。その独特の物理・化学的性質により、高性能磁石、電池、電子機器に欠かせない材料となっている。
一方、世界の供給網は依然として中国への集中が著しく、採掘の70%超、加工の約90%を中国が占めている。こうした偏在はサプライチェーンのあり方を大きく左右しており、供給源の多角化を戦略課題として浮上させている。
こうした中、レアアースは地政学ならぬ「地経学」上の影響力を左右する手段としても認識されつつある。生産と加工を誰が握るかによって、重要技術へのアクセスや産業発展そのものが左右され得るからである。
「レアアースの世界的な需要は非常に大きく、今後も着実な拡大が見込まれる。主な需要分野は、電気自動車、再生可能エネルギー、電子機器、コンピューター、スマートフォンである。デジタル経済への移行は、レアアース市場の拡大と密接に結びついている。」こう語るのは、Solidcore Resourcesで操業地質部門を統括する工学地質学者、セリク・コナクバエフ氏である。
同氏によれば、中国の優位性は、比較的低い労働コスト、発達した産業基盤、そして技術の蓄積が組み合わさっていることによる。このことが同国に、この分野の発展で大きな優位を与えている。その一方で、世界市場では供給先の多角化を求める動きが強まりつつあり、カザフスタンを含む新たな生産国にとっては好機となっている。
資源基盤と産業面での下地
カザフスタンは、世界有数の鉱物資源基盤を有する。産業・建設省によると、国家バランスシートには9000を超える鉱床が登録されており、そのうち100超が希少金属およびレアアース元素を含んでいる。
同国では、タングステン、モリブデン、チタン、ジルコニウム、レニウムといった主要金属の生産・加工が行われている。さらに、セレン、テルル、ゲルマニウム、ガリウム、インジウム、スカンジウムといった副産元素も回収されている。これらの多くは、ウラン、非鉄金属、貴金属の採掘に伴う副産物として得られるものであり、効率的な回収には高度で複雑な処理技術が求められる。
現時点で、希少金属部門が工業生産に占める割合は約0.3%にとどまる。ただ、その小さな基盤とは対照的に、希少金属・レアアースに対する世界需要は拡大を続けている。
地域的な生産能力と技術的なギャップ
産業能力は、既存の冶金拠点に集中している。ウスチ・カメノゴルスクのチタン・マグネシウム工場は、航空宇宙産業や冶金向けにチタンとマグネシウムを供給している。ウルバ冶金工場は、原子力や電子機器に用いられるベリリウム、ニオブ、タンタルを処理している。ジェズカズガンでは、Zhezkazganredmetが高温合金や化学用途向けにレニウムとオスミウムを生産している。
このほか、クズロルダ州でのバナジウム精鉱生産や、アルマトイ州で進むタングステン関連事業も、この分野を支えている。
もっとも、こうした個別の加工施設が存在する一方で、カザフスタンにおける希少金属・レアアースの高度加工の水準は依然として限定的である。コナクバエフ氏は、技術不足と相対的に弱い技術基盤のため、同国はなお主として原料の採掘と輸出に依存していると指摘する。同氏は、国内技術の育成、加工能力の拡充、そして国内で完結するフル生産体制の構築が優先課題だと述べた。
「実際、わが国には相当な埋蔵資源があり、その多くはソ連時代に探査されたものである。だが、資源を最大限に活用し、国内で完結する生産体制を築くには、加工インフラを積極的に整備し、投資を呼び込み、最新技術を導入する必要がある。」と、コナクバエフ氏は語った。
さらに同氏は、モリブデンやタングステンの鉱床について、2000年代以前には開発が進められていたものの、需要構造の変化に伴い、現在では開発があまり進んでいないと指摘した。リチウム、タンタル、ベリリウムについても状況は同様で、埋蔵資源はあるものの、国内需要はなお限られているという。
投資と加工重視への転換
国家政策は近年、産業能力の拡大と、より高度な加工の発展に重点を移しつつある。政府が承認した2024~2028年の包括計画では、少なくとも5つの新規生産施設の立ち上げ、既存企業の近代化、高度抽出技術の導入が盛り込まれている。
すでにいくつかの事業が始動している。アルマトイ州のボグティ鉱床ではタングステン生産施設が稼働を開始し、硫酸マンガン一水和物の生産も確立された。さらに今後の事業は、新たな技術連鎖の構築を目指している。2026年には、ルクセンブルクに本拠を置き、カザフスタンで大規模事業を展開する鉱業・金属企業ユーラシアン・リソーシズ・グループ(ERG)の参加を得て、年産15トン規模のガリウム生産ラインが計画されている。このほか、リチウムイオン電池のリサイクル、金属レニウムの生産、電池材料の開発といった取り組みも進んでいる。
事業はバリューチェーンの新たな領域にも広がっている。カザフスタン中部では、電池材料の生産を支える黒鉛プロジェクトが前進している。同時に、パブロダール州では、蓄電技術に用いられる電解マンガンと二酸化マンガンを生産するマンガン加工クラスターの整備が進められている。
特にカラガンダ州を中心とするカザフスタン中部は、有望な探査地域として浮上している。2025年には、同地域で新たなレアアース鉱区が確認され、現在、その資源ポテンシャルを確定するための地質調査と試験分析が続けられている。
「クイレクティコル鉱区のレアアース資源の推定埋蔵量は、約93万5400トンに上る。現在、Tau-Ken Samrukが固体鉱物の探査ライセンスを取得しており、埋蔵量の確認に向けて詳細な地質調査と室内分析が進められている」と、産業・建設省のイラン・シャルハン副大臣は語った。
政府はまた、この分野を支える投資枠組みの拡充も進めている。具体的には、16の特別経済区、アスタナ国際金融センター(AIFC)、デジタル・プラットフォーム「Minerals.e-Qazyna.kz」、そしてカザフスタン開発銀行を通じた10億ドルの資金供給などが含まれる。最大の目的は、国内で完結するフル生産サイクルを確立することにある。
「新たな投資サイクルを形成するため、2029年までの投資政策構想が実施されている。投資契約の締結により、優先分野の企業は税制・関税上の優遇措置に加え、現物による支援も受けられるようになる」と、シャルハン副大臣は語った。
2月に開かれた政府拡大会合では、カシムジョマルト・トカエフ大統領も、重要鉱物に対する世界的需要の高まりと、カザフスタンの資源基盤に対する投資家の関心の強まりを強調した。
「西側諸国をはじめとする先進国の投資家は、カザフスタンでこうした事業に強い関心を示している。これはわが国の国際競争上の強みであり、国益のために有効に活用しなければならない」と、トカエフ大統領は語った。
探査・開発事業にはすでに、米国、ドイツ、オーストラリア、中国の海外パートナーが関与している。産業・建設省によれば、米国のCove Capitalはタングステン、リチウム、レアアース関連事業に参画しており、オーストラリアのSarytogan Graphite Limitedは黒鉛開発を進めている。また、ドイツのBergbau AGとの共同事業はリチウム鉱床に焦点を当てており、探査への投資額は約800万ドル、埋蔵量が確認されれば総投資額は5億ドルに達する可能性がある。
市場との接続拡大
カザフスタンの現在の輸出構造は、主として中国とロシアに結びついている。だが将来的には、欧州連合やアジア市場を含む、より広範なサプライチェーンへの統合を目指している。重要鉱物に対する世界需要が拡大を続ける中、カザフスタンは希少金属・レアアース市場における自国の地位を強化するため、産業基盤と投資基盤の整備を着実に進めている。
この記事はもともとKazinformに掲載されたものである。
INPS Japan
Origtinal URL:https://astanatimes.com/2026/04/from-minerals-to-manufacturing-kazakhstans-rare-earth-push/
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