地域アジア・太平洋|インド・パキスタン|メディア報道が招く一触即発の危機

|インド・パキスタン|メディア報道が招く一触即発の危機

【カラチIPS=ビーナ・サルワール】

ムンバイでテロが発生してから3日目の11月28日の深夜、パキスタンのザルダリ大統領にインドのムカジー外相を名乗る電話がかかった。緊急事態のため正式の手続きを経ずに直接大統領につながれた電話の相手は、「ムンバイの事件の犯人捜索に即座に応じなければ軍事行動を起こすと脅した」とパキスタンの日刊紙「ドーン」が伝えた。 

同紙は、実はその電話はいたずらで、その電話のせいで先週末にパキスタンが厳戒態勢となったことも明らかにした。この電話のニュースがパキスタンの人々を怒らせ、当初パキスタン政府が合意していた三軍統合情報部(ISI)長官のインド派遣に反対する世論が高まり、軍部と文民政府の激しいやり取りの末、結局ISIの代表の派遣に落ち着いている。

 パキスタンを非難するインドメディアによって敵対意識はすでに高まっていた。パキスタンメディアはインドの報道に憤慨してその主張の不備を暴いていた。インドの一流の日刊紙「ザ・ヒンズー」のイスラマバード特派員であるN.スブラマニアム氏は、テレビ番組でインドの過激な報道を取り上げるパキスタン側の姿勢も賢明ではないとコメントしている。 

専門家は「ジャーナリストの倫理を切り札にする『国家主義』は、印パメディアの常とう手段で、規制もない」という。米国メディアもアルカイダに関して同じ過ちを犯している。 

ムンバイ後には、欧米のBBCやCNNといった権威あるメディアも、パキスタンを非難して戦争の可能性を取りざたすなど敵意を煽っていると非難されている。また、事件を実況中継したインドの24時間ニュースの各局は視聴率を180%上げたが、この実況により犯人が情報を得て犠牲者が増えたという批判もある。 

インド政府もこれについて憂慮し、情報省はテロ事件の報道に関してテレビ各局にテロが成功したような印象を与えないよう勧告するガイドラインを送った。選挙年の今年、政治的圧力の中で、インド政府は国民の怒りを抑えられるだろうか。 

「ザ・ヒンズー」紙のS.バラダラジャン副編集長は「両国の関係が急激に悪化することはないだろう」といい、この5年間のかつてない印パ関係の進展の結果、インド当局はパキスタン政府に対して慎重な姿勢を取ると考えている。「国民も悲劇を政治に利用することには反対するだろう。国際的な圧力もパキスタンの協力的な姿勢を促すだろう」 

メディアの影響を受ける、ムンバイのテロ事件後の印パ関係について報告する。 (原文へ



翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 

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