【ニューヨークIDN=リサ・ヴィヴェス】
2019年に軌道に乗っていれば、世界で3番目に大きなマングローブの生態系を持つナイジェリアのニジェール・デルタ地域のオゴニランドという、同国で最も汚染された地域の10億ドル規模の浄化に大きな期待が寄せられていた。386マイルに及ぶ湿地帯を覆う虹色の油膜、休止中の坑口や稼働中のパイプラインからの絶え間ない流出、かつて青々としていたマングローブが原油で覆われ、農地が焼け焦げて不毛になる一方でベンゼンの臭いが充満する、そんな状況に対処することが期待されていた。
国連環境計画(UNEP)の支援と、石油会社シェル社の資金提供の約束により、この最も野心的なプロジェクトから何らかの成功が得られると期待されていた。
しかし、ブルームバーグ・ニュースの暴露記事は、このプロジェクトを「模範的なものとは程遠い」と評している。それどころか、「地球上で最も汚染された地域の一つをさらに汚している」と言うのだ。
「オゴニランドの浄化が、ニジェール・デルタ全体の浄化の標準となることを期待していました。しかし、何の影響も見られません。本来なら、(プロジェクトの実施により)土地や川が原油の影響を受けた人々の生活や人生に何らかの影響を与えるはずです。」と、Friends of the Earthグループのオゴニ族の弁護士、マイク・カリクポ氏は語った。
国連機関は、オゴニランドの浄化作業について厳しい評価を行い、管理不行き届き、無能、無駄、透明性の欠如が横行していること、具体的には、油にまみれた土の無計画な保管が、汚染されていない土地や小川に化学物質を浸透させていること、環境浄化の経験がほとんどない企業に契約が結ばれていること、何百万ドルもの不要な作業の提案があることなどが指摘された。
「石油会社は環境浄化に責任を持つべきです。石油会社は本来、環境浄化に責任を持つべきなのです。」と、シェル社に対する現在進行中の訴訟でオゴニ族のコミュニティを代表する英国の法律事務所リー・デイのパートナー、ダニエル・リーダー氏は語った。
2015年にはボド族のコミュニティに6646万ドル、昨年はエジャマ・エブブ族のコミュニティに1億900万ドルを支払い、ニジェール・デルタにおけるシェルの債務は膨らんでいる。同社は、ナイジェリアの裁判所が2020年に88人の原告に対して支払うよう命じた19億ドルの賠償金に関する決定を待つ間、同国の陸上資産を売却する取り組みを停止している。
シェルは、アフリカ最大の産油地域における最大の石油事業者であり、住民は高い貧困率と、毎年数百件の流出事故による環境の悪化に直面している。
ニジェール・デルタにおける活動家サータ・ヌバリ氏はCNNに、「地下水は世界保健機関(WHO)の基準値の900倍のベンゼンで汚染され、収穫量の少ない農地、ほとんど釣りができない川、毎年数千人にのぼる新生児の死亡に苛まれています。」と語った。
一方、少なくともあるナイジェリア人は、当局からの支援がほとんどないにもかかわらず、マングローブの育成と再植林の計画を進めている。
自宅の庭でマングローブを育てていたマーサ・アグバニ氏は、苗床を植える好機を考え行動を開始、2019年の終わり頃には、100人の女性マングローブの植林者が活動を展開している。
ニジェール・デルタにおける世界最大級のマングローブの生態系は、何世紀にもわたって人類と調和して存続してきた。汽水域をろ過し、海岸の浸食を防ぎ、水生生物の避難場所となり、それが人間が暮らす環境を支えてきたのである。
アグバニ氏は母親と同様、多国籍石油企業による生態学的に繊細な地域の環境破壊に対抗して1990年に設立された「オゴニ民族存続運動」に参加してきた。
また、母親と同様、1995年に軍事独裁者サニ・アバチャ政権下のナイジェリア政府によって処刑されたオゴニランド最大の英雄、環境活動家ケン・サロ=ウィワ氏の活動に影響を受けている。
マングローブは、海草やサンゴ礁、漁業に害を及ぼす有害な栄養分や流出水から海洋の生息地を守っている。また、マングローブの根は、汚染物質、重金属、農薬、農業排水など、土地から流れ出る水のろ過を助けることが、アメリカ海洋大気庁(NOAA)の別の報告書で明らかにされている。そのため、マングローブは水質と透明度を維持することができる。また、海草藻場とサンゴ礁への栄養分の分配もコントロールしている。マングローブのような自然のフィルターがなければ、赤潮やサルガッスム藻類の繁殖など、危険な状況が発生する可能性がある。(原文へ)
INPS Japan
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