地域アジア・太平洋グローバル核軍縮に向けた豪州・インドネシアパートナーシップの形成?

グローバル核軍縮に向けた豪州・インドネシアパートナーシップの形成?

【シドニーIDN=ニーナ・バンダリ

原子力潜水艦取得に向けたオーストラリア(豪州)の動きに懸念が高まっているが、豪州とインドネシアは、世界の核不拡散・軍縮体制を強化し、アジア太平洋地域における実用的な核安全保障能力の構築で協力する方針を表明している。

豪州・米国・英国が2021年9月に締結した強化された安全保障協定である「AUKUS」によって、豪州は非核兵器国として初めて原子力潜水艦を取得することになる。

ICAN
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核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)豪州支部のマーガレット・ビービス博士は、「これらの潜水艦はよくない前例となるだろう。兵器級高濃縮ウランの非核兵器国への移転や取得が可能となってしまいます。また、潜水艦のような目に見えないプラットフォームにおいて保障措置を実行することは不可能です。」と語った。

国際戦略研究所の「ミリタリー・バランス」2021年版によると、現在、米・英・仏・ロ・中・印の6カ国が原子力潜水艦を保有している。

潜水艦にはディーゼル推進型と原子力推進型の2種類があるが、いずれにも核兵器を搭載することができる。

インドネシアとマレーシアは、予定される潜水艦には核兵器は搭載されないと豪州が主張しているにも関わらず、原潜取得計画が地域において核拡散のリスクを高めるとの懸念を示している。

ICAN豪州支部が昨年発表した報告書『トラブルの海』は、豪州による原潜取得計画は「不必要かつ時代錯誤的なもの」であり、「他国が同じような論理を取って、核不拡散条約(NPT)保障措置協定の第14条の抜け穴(=海軍用核燃料に用いる相当量の高濃縮ウランを保障措置の対象外とする)を利用して核物質や機微の技術を取得しようとする前例を生むだろう」と指摘した。

NPTには、不拡散、軍縮、(人間の健康や農業、食料・水の安全保障を支援する)原子力技術の平和的利用という三本柱がある。NPT保障措置協定の第14条は、条約締約国に対して、核物質保有の意図や、保有物質の量や構成、保障措置からの脱退の想定期間について通知するように義務付けている。

Photo: An artist rendering of the future U.S. Navy Columbia-class ballistic missile submarines. The 12 submarines of the Columbia-class will replace the Ohio-class submarines which are reaching their maximum extended service life. It is planned that the construction of USS Columbia (SSBN-826) will begin in the fiscal year 2021, with delivery in the fiscal year 2028, and being on patrol in 2031. Source: Wikimedia Commons
Photo: An artist rendering of the future U.S. Navy Columbia-class ballistic missile submarines. The 12 submarines of the Columbia-class will replace the Ohio-class submarines which are reaching their maximum extended service life. It is planned that the construction of USS Columbia (SSBN-826) will begin in the fiscal year 2021, with delivery in the fiscal year 2028, and being on patrol in 2031. Source: Wikimedia Commons

インドネシアのジョグジャカルタ市にあるガジャ・マダ大学国際関係学部のムハディ・スギオーノ上級講師は、IDNの取材に対して、「原子力潜水艦がNPTと両立可能かどうかについては争いがあり、インドネシアは2022年のNPT再検討会議に提出した作業文書で、豪州の原潜取得計画に懸念を示し、原潜をIAEAの保障措置・査察の対象にすべきだと要求しました。同国は、特に海洋国家としての立場から、豪州の原子力潜水艦計画に大きな関心を寄せています。AUKUSは、この地域にとって深刻な課題となっています。」と、語った。

2月9日に豪州のキャンベルで開催された豪州・インドネシア外務・防衛閣僚会合後の共同声明では、IAEAの創設メンバーである両国は「NPTを維持する上で重要な役割と使命を果たすIAEAの確固たる支持者であり続ける」と述べた。

4人の閣僚は「核兵器なき世界実現の希望と、グローバルな核不拡散・軍縮体制、とくにその礎石であるNPTの強化に向けた我々のコミットメントを強調する」と述べ、「アジア太平洋保障措置ネットワーク(APSN)の文脈において、実践的な保障措置能力の構築に向けた協力を歓迎する。」と述べた。

豪州とインドネシアは2009年、日本・韓国とともにAPSNを創設し、アジア太平洋地域における原子力保障措置能力の地域的ネットワーク構築をめざしている。

ビービス博士はIDNの取材に対して「インドネシアは核兵器禁止(核禁)条約に署名することによって核軍縮への真のコミットメントを証明しました。もし豪州が軍縮に真剣ならば、インドネシア同様に核禁条約に署名するという選挙公約を尊重する必要があるだろう。」と語った。

「豪州は、核兵器の使用を是認する米国の『核の傘』に依存している。米国の同盟国であり続けながらも、大量破壊兵器の中で最悪なこの無差別的で壊滅的な兵器を拒絶することは依然として可能です。ニュージーランド、タイ、フィリピンはすべて核禁条約に署名しているが米国の同盟国でもあります。」とビービス博士は指摘した。

2021年1月22日に発効した核禁条約は、核兵器の開発、配備、保有、使用、使用の威嚇も含め、核兵器を初めて包括的に禁止した条約である。市民社会や多くの非核兵器国が同条約を歓迎したが、核兵器国やその同盟国は、NPTを基盤とした既存の核秩序を同条約が揺るがすとみている。

Photo: Applause after the adoption of the political declaration and action plan as 1MSPTPNW ended on June 23 in Vienna. Credit: United Nations in Vienna
Photo: Applause after the adoption of the political declaration and action plan as 1MSPTPNW ended on June 23 in Vienna. Credit: United Nations in Vienna

豪州は2022年6月にオーストリアで開催された第1回核兵器禁止条約締約国会合にオブザーバー参加した。

豪州のペニー・ウォン外相は豪州のNPT批准50周年を記念して2023年1月23日に発表した論説で、「我が国は、核禁条約が2年前に発効したことを歓迎します。同条約は検証制度を備えるべきであり、NPTの成功を下支えしてきたのと同じ普遍的な支持を獲得すべきであると考えますが、核兵器なき世界という同条約の理念は共有しています。」と述べている。

2022年6月29・30両日、核脅威イニシアチブ(NTI)は、「核不拡散・軍縮を求めるアジア太平洋リーダーシップネットワーク」(APLN)と共催で、ジャカルタでワークショップを開催した。その概要報告書によると、「核戦力が拡大・近代化されており、規制がなくなりつつある国際環境の中で、非核両用兵器のような新たな破壊的技術が拡散している。」「NPTが義務付ける軍縮のペースをめぐり、核兵器国と非核兵器国の間の溝が拡大している。」という懸念を共有した。

インドネシア外務省アジア・太平洋・アフリカ局のアブドゥル・カディール・ジャイラニ局長は、IDNの取材に対して、「インドネシアは核兵器の禁止が重要だと考えています。核禁条約自体で核兵器が廃絶できるわけではないが、核兵器の使用をさらに非正当化し、その使用に反対する国際規範を強化することに貢献するものである。インドネシアは、この目的のためにできるだけ早く条約を批准したいと考えています。」と語った。

ジャイラニ局長はまた、「この条約は、すべての国が平和利用のために原子力技術を使用する権利、特に開発途上国の権利を保護することになります。」と語った。

2022年初めの時点で、米国・ロシア・英国・フランス・中国・インド・パキスタン・イスラエル・北朝鮮の9カ国が合計で1万2705発の核兵器を保有しており、そのうち9440発が軍事的に使用可能な状態で備蓄されていると推定されている。

ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の2021年の年鑑によると、これらの核弾頭のうち約3732個が作戦部隊に配備され、そのうち約2000個が作戦上の厳戒状態に保たれていると推定されている。(原文へ

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This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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