ニュース核実験禁止に重要な市民社会の役割

核実験禁止に重要な市民社会の役割

【トロントIDN=J・C・スレシュ】

160ヶ国の外務大臣と高官が、すべての核実験を禁止する「包括的核実験禁止条約」(CTBT)へのコミットメントを確認し、「国際組織、非政府組織、市民社会との連携を図っていく」ことに合意した。

彼らは、国連でのCTBT発効促進会議に集った。こうした協力は、「条約とその目的、さらに早期発効の必要性への意識と支持を喚起する」ことに目的がある、と9月23日にニューヨークで採択された最終宣言は述べている。

最終宣言は、CTBT未加盟諸国に対して、最も高いレベルでのCTBTへのコミットメント、すなわちCTBT加盟を促し、「とりわけ、その署名と批准が条約発効の要件とされている国に対して、条約を早期に発効させるために、遅滞なく署名・批准をする努力を各自で行うよう」求めた。要件になっている国とは、中国、エジプト、インド、インドネシア、イラン、イスラエル、北朝鮮、パキスタン、米国の9ヶ国である。

 
CTBTは、1996年9月24日に署名開放された。それ以来、182ヶ国が署名、155ヶ国が批准した。うち、発効要件国は35ヶ国である。

署名開放から15年、条約批准国は、署名国とともに、「世界からすべての核爆発実験をなくすため、可能な限り早く条約を発効させるような具体的な措置」について議論した。

最終宣言は、「CTBTの発効は、国際的な核軍縮・不拡散体制の中核的な要素としてきわめて重要な意味を持っている。普遍的で、実効的な検証体制を持った本条約は、核軍縮・核不拡散分野での基本的な枠組みを成すものであることをここで繰り返しておきたい。」と述べている。

しかし、条約が正式に履行される前に批准が必要とされる国々、すなわち、中国、エジプト、インドネシア、イラン、イスラエル、米国が、予見しうる将来において批准する可能性はほとんどない、と「グローバル・セキュリティ・ニューズワイア」のエレーン・M・グロスマン氏は記している。インド、北朝鮮、パキスタンの3ヶ国もまた、条約発効のために署名・批准が必要とされている。

ヘンリー・L・スチムソン・センター」の共同創設者マイケル・クレポン氏は、9月22日にワシントンDCで行われたイベントで、この9ヶ国について、「なかなか難しいリストだ」と語った。またクレポン氏は、「これらすべての国家が条約を批准するまでには、まだ相当の時間がかかるだろう。」とブログに記している。

1992年以来核爆発実験の非公式モラトリアムを続けている米国政府においてすら、とりわけ2012年の次の大統領選挙までにバラク・オバマ大統領が上院の共和党議員を説得して3分の2の多数を取る見通しは暗いとみられている。

オバマ大統領はCTBTを推奨してきたが、グロスマン氏によると、「いつ上院に条約案を提出することになるのかわからない。」という。
 
 軍備管理協会のダリル・キンボール事務局長は、「もし中国と米国が条約を批准するようであれば、批准を検討する主要国が出てくるだろう。」と語った。しかし一方で、米中両国がすぐにそうする動きはないという。

クレポン氏はブログの中で、「さんざん批判されてきたこの発効条項は、中国とロシア、フランスによる産物である。これらの国々は、条約に署名しなくてはならないと感じてはいたが、核実験を永久に禁止することには及び腰だった。そこで、この難題を頑強な姿勢をとっている他の国家に条約発効への拒否権を与えることによって解決しようとしたのである。」と記している。

クレポン、キンボール両氏は、「条約は将来にわたっても制約されたものでありつづけるが、CTBT機構準備委員会と暫定技術事務局を恒久的なものにすることによって、核爆発実験を禁止する国際体制に象徴的な意味づけを与えることができるだろう。」と語った。

CTBT準備委員会(正式名称では「包括的核実験禁止条約機関準備委員会」)は、70ヶ国以上で施設を運用し、260人以上のスタッフを抱えている。委員会の役割は、条約を推進し、条約発効の際に機能する検証体制を整えることにある。

暫定技術事務局は、「国際監視システム」(IMS)や、入ってくるデータを分析する「国際データセンター」の運営などを通じて、準備委員会を支援している。

「CTBT本部は、おおよそ1.2億ドルの年間予算を擁しており、250のモニタリング局、10の実験室を含めた世界的な監視システムの建設は8割完了しました。また、クレポン氏など核専門家によれば、国際的な監視システムなしには見逃していたであろう、例えば2006年10月に北朝鮮が行ったきわめて小さい出力の核実験時のものを含む、地震動の観測にも成功しています。」とグロスマン氏は語った。

CTBTは、軍事目的であろうと平和目的であろうと、すべての核爆発実験を禁じている。まだ条約は発効していないため、条約推進と検証体制構築のために新設された組織は、はじめから、暫定的なものであるとされた。

「私たちは、『暫定的』とか『準備』という言葉を、CTBT関連組織のレターヘッドと、国際的な用語から取り除くべきだと提案しています。なぜなら、そうすることで、ウィーンを本拠とするCTBT機関の国際的な地震動監視、放射性物質探知業務の利点が保たれることになるからです。」とクレポン氏は語った。条約機構はまた、津波の探知と警戒情報の発出でも役割を果たしている。

9月23日の最終宣言は、条約批准国と署名国がともに、条約の早期批准と普遍化に向けた具体的な措置をとる決意を確認し、この目的のために、国際組織、非政府組織、その他の市民社会の代表と連携することを含め、次のような措置を採択した。

・条約が果たしている重要な役割への意識を喚起するため、地域セミナーや地域会合を奨励する。

・CTBT機関準備委員会に対して、国際協力活動と、法的・技術的分野におけるワークショップやセミナー、訓練プログラムを継続するよう求める。

・「たとえば、教育・訓練の機会を通じて条約への理解促進を図ること、なかんずく、環境、地球科学技術、津波警報システム、放射性粒子・ガスの偶発的放出の検地、その他の災害警報システムなどの分野における検証技術に関して、暫定的に、そして条約で予定されている目的と特定の任務に鑑みて、その民生的、科学的応用の利益を示すこと」を準備委員会に対して要請する。

・暫定技術事務局に対し、批准プロセスや履行措置に関する加盟国への法的支援を引き続き提供するよう要請する。また、これらの活動を強化し、それが目に見えるものになるように、関連情報や資料の交換・普及のための連絡拠点の機能を維持するよう要請する。

・暫定技術事務局に対し、批准国・署名国による対外活動で収集された情報を集約し、この目的でこれらの国々から提供されたデータに基づく最新情報の概要を公開ウェブサイト上に管理し、よって条約の早期発効を支援する「フォーカル・ポイント」としての役割を引き続き要請する。

今回のCTBT発効促進会議について特筆すべきは、この国連会議が市民団体に対して開かれていたことである。全部で次の12の団体が参加した:軍備管理協会(ACA)、カーネギー国際平和財団、キリスト教核軍縮キャンペーンケニア支部、グローバル安全保障研究所(GSI)、国際反核法律家協会、国際人権監視団(IHRO)、マサチューセッツ工科大学(MIT)、グローバル正義のためのパートナーシップ、パックスクリスティ・インターナショナル、元国連インターン・研究員世界協会、ニューヨーク国連協会、婦人国際平和自由連盟。(原文へ

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩

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