【ベルリンIDN=ラメシュ・ジャウラ】
私が5年前に日本を訪れて、。創価学会インタナショナル(SGI)の首脳らと会った際、同団体による教育活動と、池田大作SGI会長が掲げる理念について学んだ。それは、「倫理的・精神的な裏付けを欠いた教育は、知識に対する態度をゆがめ、科学的な研究を制御不可能な危険な方向に走らせかねない」というものだった。
池田会長はインタビューの中で、「その典型的な例が核兵器の開発です。」と指摘した上で、「私が国境、宗派、イデオロギーの違いを超えて『対話』を重ね、人間と人間とを結ぶ『教育交流』に力を入れてきたのも、そうした理由からです。」と述べている。SGIは、一人ひとりの変革と社会貢献を通して平和や文化、教育を推進する、世界的な仏教徒のネットワークである。
2010年、私は東京都八王子市にある創価大学を訪問する機会を得た。そして、池田会長の核廃絶にかける不屈の意志の重要性、外国人ジャーナリストである私や私の同僚たちによる同氏の平和提言への考え、提言に関して読者から寄せられた報告や分析への反応などについて、約300人の学生を前に話をすることができた。創価大学で学ぶ多くの国からの若い学生が、私の発言に深い関心を寄せてくれたことを嬉しく思った。
2012年9月、私はふたたび創価大学を訪れる機会を得た。この時は、市民社会のリーダーでジャーナリストのロベルト・サビオ博士による講演に同席した。サビオ博士は、グローバル化がどのように誕生し、進化を遂げ、影響を与えているのか、またその課題に我々がどのように立ち向かうのかについて話をした。100人近い学生が熱心に聞き入り、自身の日常生活と関連付けて学ぼうとする姿に、私たちは目を瞠る思いがした。
創価学園
東京都小平市にある創価学園を訪ねた際も、学園生たちから同じように、あふれんばかりの情熱を感じた。著名な国際通信社インタープレスサービスの創立者で名誉会長でもあるサビオ博士は、生徒からの質問に答えて、「創価学園には、社会、人々、そしてそれらの相互の関係について、価値に基づくビジョンがあります。このような価値体系の教育を受けた創価学園の皆さんは、大変有利な立場におられるのです…。新しい社会を創出できるか否かは、まさに皆さんの努力にかかっているのです。」と語りかけた。
世界の主要なメディアはほとんど気づいていないことだが、東京の郊外にある緑豊かな2つの都市で、真の平和をつくるための人間教育を目的とした高校と大学の教育システムが、新たな地球文化の揺籃として生まれているとの印象を、私自身抱かずにはいられなかった。
この教育システムの核にあるのは、価値の創造である。日本語で「創価」と称されている。小学校の校長を務めた創価学会初代会長の牧口常三郎氏(1871~1944)の思想と関心に、その名は由来している。創価教育の父としての牧口会長の極めて重要な役割を象徴しているのは、創価大学の正門の門標に銅製で掲げられている、彼の筆による「創価大学」との文字(右上の写真)である。
牧口初代会長による創価の思想は、第2代会長の戸田城聖氏(1900~58)、そして第3代会長(現SGI会長)の池田大作氏へと引き継がれた。1971年、池田会長は創価教育の理念を実現するために創価大学を創設。次のような建学の精神を発表した。(1)人間教育の最高学府たれ、(2)新しき大文化建設の揺籃たれ、(3)人類の平和を守るフォートレス(要塞)たれ。
これらの建学の精神の重要性は、牧口・戸田両氏が第二次世界大戦中に、軍国主義に敢然と抵抗したために過酷な弾圧を受けたという歴史的背景に裏打ちされている。牧口会長は終戦を見ることなく獄死。戦後、第2代戸田会長は牧口会長の理念を引き継ぎ、平和な社会を創設するという不屈の決意を持って出獄した。
この決意は、核兵器の廃絶を訴えた1957年の歴史的な「原水爆禁止宣言」によく表れている。第3代の池田会長は、先師が掲げた平和構想を実現するために、世界中の数多くの知識人や著名人との対話を重ね、国籍や文化が異なる民衆間の草の根の交流を果敢に開いてきた。平和の探求は、創価教育の魂なのである。
人間主義の、生命を重視する教育哲学は、幼稚園から大学に至るまで実践され、世界的な評価を得ている。創価大学は1971年4月の建学以来、急速に発展し続けているが、池田会長は創価教育を海外に広め、1987年にはロサンゼルスに分校を、さらに2001年にはカリフォルニア州オレンジ郡に、4年制のリベラルアーツ・カレッジ、アメリカ創価大学を開校している。さらに、マレーシア、シンガポール、香港、ブラジル、韓国には創価幼稚園を創立している。
交流協定
創価大学はこうした教育環境の整備とともに、2012年11月時点で世界46カ国・地域の141大学と交流協定を結んでいる。また2006年には創価大学北京事務所が設置され、創価大学が中国との交流に注いできた取り組みの歴史に、新たな1ページが加わることとなった。
また学生中心の教育をモットーとする大学として、教育内容を充実させるために熱意や創意を注いできた。そのため、創価大学の教育モデルの多くが、現代の教育におけるユニークで革新的なアプローチであると日本の文部科学省に評価されていることは、驚くに値しない。また、同大工学部で行われている先進的な研究も、文科省から評価を受けている。
司法試験や公認会計士、教員、その他の公務員試験など、日本の中でも特に難しいとされる多くの試験で高率の合格者を出していることからも、創価大学の学術的な成果の大きさを窺い知ることができる。
創価大学の卒業生は建学以来5万人を超え、今日、母校の建学の理念にのっとりながら、日本社会および国際社会に対する貢献を続けている。
2010年4月1日、創価大学は「グランドデザイン」を発表した。これは、学生が創造力を育み、かつ貢献的な人生を送るための構想や戦略であり、2020年、創立50周年を迎える創価大学の姿を描くために策定されたものである。
「グランドデザイン」によって、2020年までの50年間で達成される同大学の伝統と学術的な実績を検証することができる。また、21世紀にあって国内外に山積する諸問題に挑戦するとともに、多様で進化し続ける学生からのニーズを完全に満たせるよう、広範囲でよりよい枠組みを策定している。
この枠組みは3つのステージから成っている。(1)建学の精神を根本に本学で学んだ人材を社会に輩出する使命、(2)その人材を養成するための具体的な教育・研究システム、(3)その教育・研究をサポートする大学の総合的な環境の整備。
創価大学によると、グランドデザインの下で、既存のカリキュラムを評価し新しいコースとプログラムを作成する「特別分科会」が立ち上げられる。全体としての目標は、学生の個々の学術的な能力を高め、創造的かつ批判的な思考を養うことにある。このプロセスは新しいラーニングセンターによって強化され、大学の各学部及び学科は段階的に再編されることとなる。
創価大学のグランドデザインが他と異なっているのは、学生の人間力を豊かにすることに焦点が当てられている点である。そこには、ディベートを用いてコミュニケーション能力やリーダーシップのスキルを養い、グローバルな問題や視点に対する認識を高め、建学の精神に沿ってグローバル市民として考え行動する学生を育成するプログラムが含まれている。
創価大学では、日本人学生が海外へ留学する機会を一層拡充するとともに、外国人留学生の受入枠や海外の大学との学術的交流プログラムを積極的に推進するなど、今後いっそう学術交流を活性化する予定である。
今後の10年を視野に、教育・研究、国際面、学生支援、生涯教育・通信教育の各分野における戦略と解決策を生み出すための、7つの分科会などの組織が立ち上げられている。これらの分科会には、大学キャンパスの施設や財政、大学事務、広報の計画を策定する任務が与えられている。
2012年11月27日は重要な日であった。この日、創価大学のキャンパスで新総合教育棟(GEC)の定礎式が行われたのである。建物には4つの棟があり、教室、学生カウンセリング、マルチメディア室、保健センター、カフェ、1000人収容のメインホールなど、数多くの施設が入っている。
地下は3階まで、西棟は地上12階建、東棟は9階建、中央棟は7階建となっている。定礎式ではその一環として、これまで創価大学と交流協定を結んだ海外62の機関・大学のバッジが礎石の下に埋められた。新総合教育棟は2013年5月に正式に完成する運びとなっている。(原文へ)
翻訳=INPS Japan浅霧勝浩
This article was produced as a part of the joint media project between Inter Press Service and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.
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